急性低音障害型感音難聴の疫学〜当院のデータより・その1〜

急性低音障害型感音難聴の診断基準は、まだはっきりと決まったものではないのですが、一応以下のような試案があって、疫学調査などはこれを基にして行うことが多いようです。
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この診断基準によりますと、患側の聴力レベルは低音域の3周波数の合計が70 dB以上、高音域の3周波数の合計が60 dB以下となっています。しかし実際には症状からは急性低音障害型感音難聴が疑われても、低音域の合計が70 dBに満たない例や、元々あったと思われる高音域の難聴のため、高音域3周波数の合計が60 dBを超えてしまう例もあります。

さて、2004年から2008年までの5年間で、急に起こった耳閉感や耳鳴、難聴のために当院を受診した患者さんのうち、鼓膜や外耳道に異常がなくて原因として急性低音障害型感音難聴の疑われた例が136例ありました(下図グラフ中の全症例)。そのうち、この診断基準に示されている聴力レベルの条件を満たすのが85例(下図グラフ中の確実例)でした。

もちろん、診断基準に満たない例にも同じ病態の方が含まれている可能性は充分にあるのですが(実際の治療は、急性低音障害型感音難聴として行うことの方が多いです。)、そういった例については後で検討することにして、まずは「確実例」についてその傾向を見ていきたいと思います。
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まず性別・年齢別の分布ですが、男女供に20代から40代のいわゆる「働き盛り」に多く、特に40代女性に多いようです。(下の棒グラフ)
急性低音障害型感音難聴が、20代から40代の方に多く発症するということは他の論文でも言われておりますので、一致する結果でした。
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男女の割合では、女性が7割以上を占めます。(下の円グラフ)
「女性に特に多い」ということもまた、一般的に言われております。
急性低音障害型感音難聴が働き盛りの世代に多いことや、男性よりも女性に多いことの理由ははっきりとは分かっていません。推測としては「その年代が特にストレスが多いこと」や、「女性の方がストレスの影響を受けやすいこと」、「ホルモンの影響」などが考えられるのではないでしょうか。
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さらに今回は、もう一つ検討してみます。それは月別の発症者数です。それぞれの年と色分けして積み上げ棒グラフとしました。(下図)
年によってばらつきはあるものの、春、秋に多く、冬には少ない傾向があるように思われます。急性低音障害型感音難聴の季節性については、他の論文では見たことがなく、まだまだ検討が必要なのですが、実際診療をしていますと、この疾患は平均すると月に1人から2人ぐらいの頻度なのに、週に何人か続くこともあり、発症には何かしらの季節的な要因が関わっているようにも思えるのです。
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さて、今日の話はここまで。次回以降も、もうしばらく急性低音障害型感音難聴の話を続けていきたいと思いますので、よろしくおつきあい下さい。
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by jibikai | 2009-07-23 17:54 | 耳のはなし | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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