聴神経腫瘍

聴神経腫瘍とは、内耳道(下図参照)に発生して頭蓋内へと進展する神経鞘腫(しんけいしょうしゅ;神経そのものではなく神経を包む膜からできてくる腫瘍)です。良性腫瘍なので、命に関わることはほとんどありませんが、初期の症状としては片側の感音難聴、耳鳴、めまいなどを起こします。発生の頻度としては人口10万あたり年間2,3人でそれほど多いものではありません。
特に問題になるのは、一側性の感音難聴、耳鳴、めまいを起こす疾患は他にもいろいろありますので、その中から聴神経腫瘍をいかに見つけるかということになります。
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今回は片側の難聴で発症した聴神経腫瘍の例を紹介します。(ネットでデータを紹介することについては本人の了解を得ています。)
患者さん中年の男性、職業は建設業です。右難聴を健康診断で指摘されており,自覚もあったため来院されました。
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初診時の聴力です。両感音難聴なのですが、左右差があって、右の2,000 Hzが谷型に下がっているのが気になりました。
MRIでわずか3.8 mmの腫瘍が見つかりました。
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しかし腫瘍は非常に小さいので、手術等積極的な治療は行わずに経過観察という方針になりました。

今回3年ぶりに来院。聴力が今年になって急に低下、補聴器を試してみたいとのこと。
聴力検査もしてみますと、両耳で難聴の進行があるのですが、右は高度難聴となっておりました。
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また右耳は語音明瞭度(ことばのきこえ)もやや低下。さらにはリクルートメント現象といいましてちょうど良い聞こえの幅が狭くなる現象もあって、補聴器を付けるとすれば、良い方の左側になろうかと考え、現在試聴して頂いています。

聴神経腫瘍は最近ではMRIの普及によって、この例と同じく小さいうちに腫瘍が見つかるケースが増えていると思われますが、治療法はまたいずれ述べたいと思いますが、それぞれ一長一短あること、良性腫瘍なのでむしろ経過観察だけにとどめた方が良いことなどもあり、その辺が難しい疾患といえると思います。

また聴力に左右差があるからと言って必ずしも聴神経腫瘍が隠れているわけではないのですが、時にこういったケースがありますので、健康診断で難聴を指摘されて、特に左右で違う場合などは特に耳鼻科を早めに受診することをお勧めします。

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Commented by FCC_HIRO at 2010-07-03 01:19 x
聞こえの低下を感じたら耳鼻咽喉科に。
まさしくそれが当てはまる事例ですね。
更にこのようなオージオグラムの場合よく「聞こえが悪いほうに補聴器を」と言われるのですが、語音明瞭度が良いほうに補聴器を装用することが良い結果に繋がったりします。
これから補聴器をという方向けにも役立つ情報をありがとうございました。
Commented by jibikai at 2010-07-04 12:32
FCC_HIROさん,耳鼻科医の立場からすると左右差のある場合と、
2 kHzあたりが皿形に落ちてるのは、まず耳鼻科でも診てもらうよう
勧めていただくとありがたいと思います。
それから語音聴検は、身障の等級にも関係しますし、補聴器を希望して
来院された方には全例やるように心がけていますが、装用耳の決定は
微妙なこともありますよね。その場合「聞き比べて,良い方に。」って
書いてしまうわけですが。
いずれにしても、耳鼻科と販売店が良い協力関係にあるのが、ユーザーの
利益に繋がると思いますね
by jibikai | 2010-06-26 17:30 | 耳のはなし | Comments(2)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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