スギ花粉の量はどの程度症状に影響するのか?

今年のスギ花粉の飛散は、昨年の夏が記録的猛暑であったこともあり、かなり多くなると予測されています。地方によっても違いますが、ほとんどの所で昨年の数倍から10倍の数の花粉が飛ぶと予測されています。そこで今回は花粉の量がどの程度症状に影響するのか、あるいは花粉の量が多いと患者さんの数は増えるのかという話です。

スギ花粉症というのは、アレルギー性鼻炎の一つで原因抗原がスギであるものです。アレルギー性鼻炎の原因抗原には他にどんなものがあるかといいますと、多い順からホコリ・ダニ、雑草の花粉、ネコ・犬などの毛、フケなどがあります。
スギ花粉に対する抗体を持っている方というのは、おそらく全人口の半数近くで、さらにその半分ぐらいの方が発症していますので、有病率というのは25%弱ぐらいかと思われます。全国ではおそらく3,000万人ぐらいの方がスギ花粉症と考えられます。
ただし一言でスギ花粉症といっても、スギ花粉に対する敏感さの程度は様々です。ごく微量の花粉で症状を起こす方もあれば、かなり大量の花粉が飛ぶまで自覚症状のない方もあります。ですから、ごく微量でも症状を起こす過敏性の強い方は毎年症状に悩まされますし、それほどでもない方は花粉の多い年にだけ症状が出ます。過敏性の強い方とそれほどでもない方の割合というのは、文献でも読んだことがないので、はっきりしたことは云えないのですが、外来診療で診ている印象からはそれほど多くなく、大多数の方は花粉がある程度多くなってから症状が出るようです。
また、スギ花粉症の患者さん3000万人すべてが耳鼻科を受診するわけではありません。薬局で売っている一般薬やスイッチOTCといわれるもの、民間療法、マスクやゴーグルなどの自己防衛でしのいでる方も多いのではないでしょうか。耳鼻科を受診するのはそれでもどうしようもなくなってから、という方が実は多いのではないのかと推測しています。

実際耳鼻科を受診する方の数というのも毎年一定ではなくて、花粉の多い年と少ない年で結構違いがあるものです。それを調べるために当院(あさひ町榊原耳鼻咽喉科医院)のあります山形市のスギ花粉の総飛散数と、当院の3月と4月の患者数との相関を過去8年間さかのぼって調べてみました。
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上の図の棒グラフが過去8年間の花粉の数、折れ線グラフは3月と4月にかけて受診された患者さんの合計です。花粉の多かった2005年と2009年は患者数も多く、花粉の少なかった2004年、2006年、2010年は患者数もまた少なかったことが分かります。耳鼻科の外来患者さんというのは、もちろんスギ花粉症の方ばかりではありませんが、3月から4月にかけてはスギ花粉症の方の占める割合が非常に大きくなります。そのためスギ花粉症以外の患者さんの数の変動はあるのかも知れませんがほとんど目立たず、スギ花粉の多い少ないによって患者数全体が左右される傾向となってしまっています。
スギ花粉の量はどの程度症状に影響するのか?_e0084756_10411270.jpg

今度は横軸に花粉飛散数、縦軸に3月から4月までの患者数の合計をとり、相関を見てみました。かなりきれいな正の相関があることが分かります。切片が3230で傾きが0.111ですからベースとして2ヶ月間で延べ3230名の受診があって、花粉が1000個増えると111名受診が増えるということになります。例えば、年間の総花粉飛散数が5000個であれば、予想される患者数は3230+0.111×5000という式にとなり3230+555=3785名の受診が予想されるということになります。

当院のデータからはスギ花粉の飛散数の多い年には、明らかに耳鼻科を受診する方が多くなるということが見て取れます。おそらく花粉の少ない年には我慢できるレベルの方達が、花粉の多い年には我慢できなくなって受診するのだと思います。症状の軽い、重いについて直接検討したわけではないのですが、患者数をみることにより、間接的に花粉の量が多ければ多いほどひどくなる人が多いということは言えるかと思います。

本来であれば、何名かのスギ花粉症の患者さんに症状を毎日チェックしてもらい、それを何年か続けて、症状とスギ花粉の飛散数との関連を見るのが一番良いのですが、スギ花粉の時期には耳鼻科はどこも多忙で、なかなかそういった研究にまで手が回らないのが実情です。そこで症状の代わりに、得やすい指標として患者数を用いて検討したところでは、シーズン毎のスギ花粉数と明かな相関があることがわかりました。
スギ花粉は今後も増加が予想されており、患者さんの数も増えていくと思われます。発症を予防する有効な方法もまだ明らかなものはないわけですけれども、動向は見守っていく必要があると思い、こんな検討をしてみました。

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Commented by さいたまの看護師 at 2011-02-10 14:58 x
そうですね・・・花粉日本から無くなって欲しいです。
Commented by jibikai at 2011-02-10 16:08
さいたまの看護師さん、ようこそ。
その通りですね。
by jibikai | 2011-01-29 12:34 | 花粉症・アレルギー | Comments(2)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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