音響外傷・騒音性難聴
2005年 12月 22日
音響外傷とは大きな音を聞くことにより、内耳がダメージを受けてしまい、聴力が低下する病気です。特に非常に大きい音、例えばジェット機の爆音や爆薬が破裂する音(130デシベル以上)などを聞いた場合は、ほとんどの人が例外なく、しかも一瞬音を聞いただけだとしても、聞こえが悪くなり、時間が経っても回復しません。これが、厳密な意味での音響外傷ということになります。
そこまで行かなくとも比較的大きい音、例えばロック・コンサートやクラブなどの大音響の音楽(110デシベル以上)ではどうでしょうか。この場合は音が大きければ大きいほど聴力が低下しやすいのはもちろんですが、音を聞いた時間もまた、長くなるほど悪くなりやすい傾向があります。この程度の音で起こるものを広い意味での音響外傷といいます。
症状は大音響を聞き始めてから数分から数時間以内に始まる、聴力低下や耳鳴や耳のつまる感じなどです。大抵スピーカーに近い側の耳が悪くなりやすいです。また、聴力が低下するかどうかは個人差もあり、この点が先の厳密な意味での音響外傷とは異なります。また、聴力の低下は一時的なものであることが多いです。
原因によって「ロック・コンサート難聴」とか「ディスコ難聴」というのですが、これは専門書にも載っている正式な用語です。
数年前、私は、医師会の准看護学校の講師をしていました。講義で「今はディスコはほとんど絶滅してしまったので、今だったら”クラブ難聴”という病名になるかも知れませんね。」なんて、ウケを狙って言ったのに誰一人として反応してくれませんでした。今日の気候のように、教室の空気が急激に冷え込んだような気がしました(泣)。
それはさておき、もう少し小さい音ではどうでしょうか。いったい何デシベルぐらいの音まで聴力の低下を引き起こす可能性があるのでしょうか。その限界は85デシベルといわれています。電車の中の音や工事現場の音がだいたいこのくらいです。職業上この程度の音を聞いている人は、一日8時間10年近く続けると、騒音性難聴になる可能性があります。騒音性難聴は音響外傷と異なり、急激ではなく、少しずつ聴力が低下していきます。また、両側が同程度に悪くなります。
今日の昼休み、近くの食堂で読んだ日刊スポーツに、「奈良の騒音おばさん」の裁判が長引いて、来年まで決着しないことなどが書かれてありました。ワイドショーなどで繰り返し報じられ、非常にインパクトのある方なので皆さんご存じと思います。近隣のトラブルが原因で隣人に恨みを持った主婦が、ベランダで布団をたたきながら、リズミカルに「引っ越し、引っ越し。」と連呼したり。ラジカセを使い最大音量で音楽を流し続けたりしたあの事件です。4月に逮捕され、隣人を睡眠障害に陥らせたとして、傷害罪として訴えられているようです。
興味あって医院に戻ってネット検索したところ、おばさんがラジカセや大声で嫌がらせした音の大きさは日中70デシベル以上、夜50デシベル以上だったと報道されていました。”以上”と書いてあるところを多めに見積もっても、日中で80デシベル程度だったと考えられます。嫌がらせは10年も続けられていたとのことですので、もし85デシベル以上であったなら、被害者は騒音性難聴を来した可能性もありましたが、どうも聴力障害を引き起こすほどの騒音ではなかったことが推定されます。
騒音による嫌がらせが有罪となるのかどうか、裁判の行方が気になるところです。
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左の耳鳴りは電車に乗ってても、高速を車で走ってエアコンをガンガンにかけてても聞こえます。耳鳴りの大きさの検査では85dBぐらいだったでしょうか?(はっきり覚えてないのですが…)こういう耳鳴りで騒音性難聴になるのですか?
(ところでosha-pさんのブログ、医者としても参考になります。時々、読ませてもらいますね。)
こちらこそ、またいろいろ教えてください。m(_ _)m