長引く咳

今日は、咳の話です。

咳が出たら、大抵の方は、まず風邪だと考えると思います。確かに咳の症状の他に、発熱や鼻水、咽の痛みなどがあって、10日ぐらいで治まれば風邪の咳と考えて良いと思います。
ただし、他に発熱や咽の痛みなどが無くて、咳だけが続いて、”かぜ薬”や咳止めを飲んでも良くならない場合、どんな病気が考えられるか、という話です。

実は、咳というのはもともと、生命を維持していくのに必要な反応です。喉や気管、気管支といった空気の通り道に、痰や異物がつまらないようにする反応なので、不快は不快なのですが、逆に咳が全く出ないのもそれはそれで困った状態なのです。ちなみに、嚥下性肺炎というお年寄りが命を落とす原因となる病気がありますが、これは、気道の感覚が鈍って、咳の反射が起こらないために起こります。食べ物や唾液が、気管に入り放題になって肺炎を起こしてしまうわけです。

話を戻しますが、痰が多い場合は、無理に咳を止めると良くないこともあるというのはこのためで、異物排除として有効に働いている咳には、原則的にあまり咳止めを使わず、原因となっている喉頭炎やら気管・気管支炎などを治療していきます。例外は夜間ずっと咳が続く場合など、咳による体力の消耗が著しい場合、咳止めを使います。

一方、痰のからまない乾いた感じの咳は、異物排除という目的からすると、あまり意味の無い咳ということになり、痰のからむ咳とは分けて考える必要があるわけです。

生命維持に役立っていない、この乾いた咳というのは、いろいろな原因で起こるのですが、
「気管支炎の後、細菌やウイルスがいなくなってしまっても過敏な状態だけ残っている場合」
「喉、気管、気管支のアレルギー反応」
「胃酸が逆流して、食道や気管や、喉の粘膜を刺激している場合」
「鼻汁が喉に流れ落ち、絶えず喉が刺激を受けている場合」
「高血圧に対する薬の副作用」
「精神的なもの」

だいたいこんなところが、長引く乾いた咳の原因です。診断はすぐつくこともありますが、なかなか特定できず、内科と耳鼻科を行ったり来たりする人もいます。いろんな検査、喉のファイバー検査や血液検査、呼吸機能検査や胸のレントゲン検査でも、異常ない場合も多く、そんなときは、抗アレルギー薬、気管支拡張剤、抗生剤、去痰剤、胃酸を抑える薬などを試行錯誤的に使ってみて、初めて、「これが効いたから、この病気だ」と特定できることも、まれではありません。


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by jibikai | 2006-03-20 19:08 | のどのはなし | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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