患者が医者を替える時

今回は、患者さんが医者を替える場合どのようなケースが考えられ、替えるのが正解と考えられるのは、あるいは失敗と思われるのはどのような時なのか、についてお話ししたいと思います。

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ある病院で診断や治療を受けているのに、それだけでは満足せず、あちこちの病院を渡り歩く人がいます。渡り歩く動機としては、以下のようなことが、考えられます。

1.自分が考えていた診断と違った。あるいは、診断に疑問を持った。
2.十分に診てもらえなかった、あるいは検査してもらえなかった。
3.満足な説明が得られなかった。
4.治療を受けたが、良くならなかった。
5.手術や入院を勧められたが、出来れば入院も手術しないで治してもらいたい。
6.医者や医療スタッフとのそりが合わなかった。
7.そこそこ満足できる、通院中の病院はあったが、知人や家族に勧められ、別の所も試してみたくなった。

それで、これらのパターンのうち1と2については、患者さんの誤解であることもあり、問題になるのが、十分な診察、検査を受け、治療方針も決まっているのに、それが意にそぐわないため、他の医者にかかってしまうケースです。例えば、自分はガンだと信じ込んでいて、医者に「何でもない」と言われても納得できず、あちこちの病院を転々とするような例です。いわゆるドクターショッピングというものなのですが、これの何が問題かというと、同じ検査を何度も受けてしまうことです。非常に不経済ですし、X線を使う検査(特にCTなど)を必要以上に繰り返し受けると、被爆量も結構なものとなってきます。

3の説明不足については、医者の側がもう少し努力しなければならないかも知れません。同じ病気で、同じ様な説明をしても正しく理解してくれる人、そうじゃない人、様々です。一人あたりに割ける診療時間の制約もありますし、なかなか難しいです。医者に説明をうけて、患者さんも一旦は分かったつもりになっていても、帰ってから一体なんて言われたか、覚えていないなんてケースも多いかと思います。
そこで、病気に関する最大公約数的な説明の載ったパンフレットを作っておき、患者さん個人の状態を必要に応じて書き込んだものをなどを渡し、後で読み返してもらったり、家族への説明に使ってもらうのが、解決策の一つかも知れません。(といいつつ、うちでもあまり充実したパンフレットは作ってませんが、、、。)

4については医者の腕が悪い場合、医者を替えるのは有効な策でしょうが、もしかしたら医者の指示通りに生活習慣を改善するとか、きちんと薬を飲むとかしていないことも考えられます。その場合、医者を替えるより、一度主治医を信じて指示通りにしてみた方がいいでしょう。また、時間をかけないと治らない病気というのもありますので、その場合も医者を替えるのはあまり効果がないかも知れません。

5の手術や入院を勧められたが、出来れば拒否したいという場合。これについては、ケースバイケースです。確かに、自分が受けている治療が世の中のスタンダードに合っているのかどうかも、一カ所で診てもらっているだけでは分からないこともあります。 手術を勧められた場合など、重要な選択を迫られた時に、主治医以外の医者の意見を聞くことを、「セカンドオピニオンを聞く」といい、これは決して悪い意味ではないのです。納得できる治療を受けるには、選択枝は多い方がいいということです。ただ、その場合、前医よりも見識の深い医者でなければ、あまり意味がありませんので、そういった所を探せるかどうかが問題になります。

6の医者やスタッフとの相性の問題。これで、医者を替える人も少なくないでしょう。替えてみて、替えた先が良ければそこに定住することになるでしょうし、そこもダメなら、また違う所と替えざる終えないですね。それでもまたダメなら????それは、もしかしたら自分自身の問題かも知れません。

7の「人に勧められて」医者を替えてみる。これはあまり勧められません。新患として別の所にかかると、また新たに検査し直しです。今までの経過だって、新しいところへ引き継がれるわけではないので、それでも、替えるメリットがあれば別ですが、人に勧められたからといって、ホイホイと医者を替えるのは止めといた方がいいのではないでしょうか。
今回は医者を替える場合、想定される理由と、それが得か損かということについてお話ししました。

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Commented by pitanpi at 2006-06-30 06:17 x
う~ん (-_-;) コメントしずらいなぁ~。

医者と患者じゃ立場がぜんぜん違うからなぁ~。

患者からすると自分の命がかかっているから、しかも高い医療費払って。 だから自分で納得できる治療を受けたい!家族のようにいたわり・心配し・時には叱り・症状が改善してきた時には、一緒に喜んでくれるような医者や看護師のいる病院に行きたい。そういう権利はあると思うど・・・

確かに一から検査しなおして、お金も時間も危険もあるけどそれで自分にあった納得の出来る医者を見つけられれば、それでいいと私は思う。

榊原先生やご家族が病院にかかる場合はどうなのですか?治療方針が解らない・納得できないとか、あの先生どうもなぁ~と相性が合わなかったらどうするのですか?
Commented by jibikai at 2006-06-30 11:59
>pitanpiさん、今回の記事の趣旨は、必ずしも医者を替えるなといっているのではありません。感情がすれ違ったり、治療方針に納得できなかったりするのは結構、医者・患者間の双方の誤解も多いのではないでしょうか。病状などについても医者は説明したつもりになっていて、患者さんの側では聞いていないということもありえ、その場合もういちど確認してから、医者を替えることを考えてもいいのかなと思います。もちろん、医者の人格にせよ治療法にせよよほどひどければ、すぐ通院先を替えるのは当然ですが。
Commented by osha-p at 2006-07-01 01:07
めまい、メニエルの事は非常にむつかしいです。1~4(特に3.4)は必ずあると言っていいほどかもしれません。私は紹介状を書かれて病院を変わらざるを得ませんでした。それで納得がいかなくても、相性が悪くても前の総合病院にもどるわけにも個人の耳鼻科医さんにもかわるわけにもいかず(失礼でしたらごめんなさい)、めまい専門医のいる病院も地元ではとても少なく、病院を変わる=新幹線で通院なので、患者側もある程度の努力をしなければいけないと思ったのでした。がんの治療の法律が成立したとニュースでやっていましたね。治療の地域差、これは絶対あります。東京だと病院はすごく多いです。でも逆に可能性を求めてドクターショッピングしやすい環境なのかもしれません。
Commented at 2006-07-01 01:27
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jibikai at 2006-07-01 12:20
>osha-pさん、コメントありがとうございます。
たしかに、病気の頻度やそれを専門にしている医者の数、自分の住んでいる環境というもので、医療を受けやすい、受けにくいの格差はかなりありますね。今はインターネットによって、うまく使えば情報だけは得られますが、それが正しい情報なのか見極めが難しいし、良さそうなところが見つかっても、あまり遠ければ実際に受診は出来ないですよね。
医療そのものや医療についての情報が、本当に必要なところに分配されるようになればいいのですが、なかなか難しい問題です。
Commented by miya_sei at 2006-07-03 08:20
難しい問題ですよねぇ・・
病院を替えるのが悪いとはいわないですがあまりにもあちこち回ってると「あそこでは、こういわれた、むこうでは・・」と伝えてくるけどもどこまでそれを信じていいのかわかりません。
「治療法がわるい、ひどい」というのも何を求めているかによって変わってきます。
「すぐに注射してくれるからいい先生」「あまり採血しないからよくない先生」という話を聞くこともあるけどそれが本当に正しいのかは微妙なところです。
後、これを問題といわれればそうなんですがどうしても初診のときと再診のときでは話を聞く時間も変わってくると思います。
数日前に聞いた話をまた1から聞いてもらおうと(もちろんそれだけ困っているのでしょうが・・)繰り返し話をされてもどうしても押さえてしまうところも出てきますしねぇ・・・

Commented by jibikai at 2006-07-03 10:16
>miya_seiさん、お久しぶりです。
病院勤めの時には、患者さんのほとんどは、そこに通うしかないと思って通ってきている人たちでしたが、開業してからは違いますね。よく言えば選択の余地が沢山あります。
患者さんの中には、明らかにこちらを値踏みするような態度の人もいますし、前医をあからさまにけなすことにより、丁重に扱ってもらおうとする人もいます。どちらも、自分の品位を下げこそすれ、いいことは何もないと思うのですけどね。
また、名医とヤブ医者の判断基準も、おっしゃるとおり、我々医者から見ると「え〜ッ」と驚くようなことだったりしますよね。
新患でも再来でも良く話を聞く、ということは間違いなく大事なんでしょうが、混んでいる時に限って患者さんの話が長くなったりした時は、いかに切り上げるかを、私も考えます。
Commented at 2006-07-10 11:12
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jibikai at 2006-07-10 19:49
>osha-pさん、トラックバックの件ですが、osha-pさんの記事中にこちらの記事のURLがあれば、おそらく可能かと思います。お手数おかけして申し訳ございません。
by jibikai | 2006-06-29 17:07 | Comments(9)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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