傘がない

昨日からニュースやワイドショーを賑わしている、松岡農相の自殺
<松岡農相自殺>閣議で黙とう 会見では口つぐむ姿目立つ

そして、今日また
<緑資源談合>元森林開発公団理事が飛び降り自殺
というニュースが飛び込んできました。

両人とも緑資源事件に絡んでいるとのことですが、まあ、ここは医療系ブログですのでそこにはあまり触れず、自殺の統計についてお話しします。

自殺者数はここ数年、年間約3万人前後で推移しておりまして、疾病を含めた死亡原因の第7位(平成18年 厚生労働省のデータより)とのことです。死亡率第1位の悪性新生物(すなわち癌)で年間約326,000人ほどですから、その10分の1ぐらいの方が自殺して亡くなっているというのは、思った以上に多いと感じるのではないでしょうか。

 ところで、井上陽水の名曲、『傘がない』 (1972) は、「都会では、自殺する若者が増えている・・・」という歌い出しで始まります。この歌のせいかどうかは知りませんが、どうも自殺するのは精神的に未成熟な若者に多いという風に信じられているところがありますが、本当にそうなのでしょうか。
確かに、厚生労働省の発表する人口動態の統計資料で、年代別の死因を見ますと、15歳以上30歳以下では不慮の事故死と自殺が1,2位を占めています。
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ところが、特集 自殺は防げるデータで見る日本の自殺にもあるように、これはもともと若い人は病気で亡くなる方が少ないので、”割合としては”自殺が多くなるものの、自殺者数となると、中年男性が最も多いのです。そして自殺の動機としては生活苦や仕事がらみが特に増えているとのことです。

今回の緑資源事件に関わる二人の自殺はそれぞれ、62歳と76歳ですから、まさに仕事がらみの中高年者の自殺といえます。特に日本には自殺を、集団を守るための自己犠牲であるかのように美化する傾向がいまだにありますが、どんな理由があっても、自殺は決して許されることではないですよね。

勤務医時代は、救急外来の当直などをしていますと、たまに、自殺を図った人なども運ばれてきましたが、こういう人たちに対する診療は非常に虚しい思いでしていたことを思い出しつつ、自殺について記事にしてみました。

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Commented by peanut-street at 2007-05-29 19:28
松岡農相の自殺は新聞の見出しにも大きく書かれていましたね。
以前見た自殺統計では飲酒の関係もあり、特に
(お酒もおいしく量も飲む)東北に集中していました。
これには出稼ぎ労働などの仕事がらみの苦しみから
飲酒へと繋がっていることを示唆しているのでしょうね。
Commented by jibikai at 2007-05-30 00:18
> peanut-streetさん、こんばんは。
自殺者は世界レベルでいうと旧ソ連圏、東欧、北欧がかつては多くて、最近、北欧は減少傾向にあるそうです。どうも高緯度というか、寒いところは、多いようにも思われます。飲酒との関連は知りませんでしたが、少なくとも土地柄というのはあるのでしょうね。
by jibikai | 2007-05-29 18:50 | Comments(2)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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