耳鼻科医の診療日記
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例えコメント欄に個々の診断や治療方針についての質問を書き込まれましても、一切返答いたしませんので、ご了承ください。


【連絡先】
あさひ町
榊原耳鼻咽喉科医院
〒990-0024
山形市あさひ町7−25
院長  榊 原  昭


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カテゴリ:耳のはなし( 116 )
聴神経腫瘍
聴神経腫瘍とは、内耳道(下図参照)に発生して頭蓋内へと進展する神経鞘腫(しんけいしょうしゅ;神経そのものではなく神経を包む膜からできてくる腫瘍)です。良性腫瘍なので、命に関わることはほとんどありませんが、初期の症状としては片側の感音難聴、耳鳴、めまいなどを起こします。発生の頻度としては人口10万あたり年間2,3人でそれほど多いものではありません。
特に問題になるのは、一側性の感音難聴、耳鳴、めまいを起こす疾患は他にもいろいろありますので、その中から聴神経腫瘍をいかに見つけるかということになります。
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今回は片側の難聴で発症した聴神経腫瘍の例を紹介します。(ネットでデータを紹介することについては本人の了解を得ています。)
患者さん中年の男性、職業は建設業です。右難聴を健康診断で指摘されており,自覚もあったため来院されました。
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初診時の聴力です。両感音難聴なのですが、左右差があって、右の2,000 Hzが谷型に下がっているのが気になりました。
MRIでわずか3.8 mmの腫瘍が見つかりました。
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しかし腫瘍は非常に小さいので、手術等積極的な治療は行わずに経過観察という方針になりました。

今回3年ぶりに来院。聴力が今年になって急に低下、補聴器を試してみたいとのこと。
聴力検査もしてみますと、両耳で難聴の進行があるのですが、右は高度難聴となっておりました。
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また右耳は語音明瞭度(ことばのきこえ)もやや低下。さらにはリクルートメント現象といいましてちょうど良い聞こえの幅が狭くなる現象もあって、補聴器を付けるとすれば、良い方の左側になろうかと考え、現在試聴して頂いています。

聴神経腫瘍は最近ではMRIの普及によって、この例と同じく小さいうちに腫瘍が見つかるケースが増えていると思われますが、治療法はまたいずれ述べたいと思いますが、それぞれ一長一短あること、良性腫瘍なのでむしろ経過観察だけにとどめた方が良いことなどもあり、その辺が難しい疾患といえると思います。

また聴力に左右差があるからと言って必ずしも聴神経腫瘍が隠れているわけではないのですが、時にこういったケースがありますので、健康診断で難聴を指摘されて、特に左右で違う場合などは特に耳鼻科を早めに受診することをお勧めします。

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by jibikai | 2010-06-26 17:30 | 耳のはなし | Comments(2)
緊急を要するめまい
今日はめまいについてです。
めまいと一言で言っても、ふらつくような感じから、目の前が暗くなる感じ、まっすぐ歩けずどちらかに転びそうになるとか、あるいは自分がぐるぐる回る感じ、回りがぐるぐる回る感じなど、詳しく見ると実はいろいろな“めまい”あるのですが、それらを一括りにして「めまい」と表現していると思います。

症状も様々ならば、めまいの原因も様々。大きく分けて、「耳に原因のあるもの」、「脳に原因のあるもの」、「全身的な問題が原因のもの」に分かれます。めまいがした時に一番悩むのは、何科を受診したら良いかということになろうかと思います。耳に原因のあるものは耳鼻科が専門ですし、脳に原因のあるものは脳外科や神経内科、全身性の問題については一般内科や循環器、内分泌などが専門の内科医が専門ということになろうかと思います。

受診する側としては、「そんな原因なんて分かったら苦労しないよ。」、っていうのが本音でしょうね。確かにそうです。大雑把には回転性のめまいは耳から、非回転性のめまいは全身疾患や頭蓋内の疾患からといわれます。

しかし一番大事なのは「命に関わるめまい」かどうかです。一番気を付けなくてはならないのが、脳出血や脳梗塞。急なめまいで脳出血や脳梗塞の心配がないか見分ける方法としては、めまい以外の症状に注意です。


今まで経験したことのない様なひどい頭痛。
意識がないか、もうろうとしている。
ろれつが回らない。
ものが二重に見える。
手足が麻痺している。
手足や身体、顔面などの感覚が弱い。しびれる。


などの症状があれば、どの科を受診しようなどという余裕はありません。
救急車を呼ぶべきでしょう。

持病との関連では、高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈などのある方の場合は、脳血管障害によるめまいの可能性が高くなります。本人もご家族も、持病を良く把握しておくことも必要ですね。

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by jibikai | 2010-06-24 17:09 | 耳のはなし | Comments(4)
自分の耳について
当ブログがどのような検索語で見ていただいているのか解析しますと、トップ10に入るのはいつも、「低音障害型感音難聴」と「耳がつまる」、「耳閉感」などです。ことさらそれらキーワードを多用しているという意識もないのですが、なぜかそうなっています。

何だか耳閉感や低音障害型感音難聴には縁があるんだな、と以前から思っていたのですが、実は自分も2回ほど繰り返しています。
e0084756_10332131.jpge0084756_10333344.jpge0084756_10371281.jpg私の聴力像。自分で測りました。左端は2005年8月12日のもの。この時は2,3日前からの耳閉感と音楽が反響する感じ、音程のズレる感じ、他人の話し声が聴取ししずらい、などの症状がありました。左右では左耳の方がより顕著でしたが、右も軽度の症状を自覚していました。ファイバを自分で耳に突っ込んで見ましたが,外耳道、鼓膜とも正常。ティンパノメトリイも両側正常でした。聴検も自分でやったので、音のon-offは分かるわけで,正式ではありませんが、気導は明らかに左の低音域と8 kHが低下していました。低音域の骨導は正常でair-boneギャップはあるものの、複合的に判断して、急性低音障害型感音難聴と自己診断いたしました。
その後は1週間以上かかりましたが,自覚症状は変動しつつも徐々に改善していきました。

で、しばらく自分の耳のことは忘れておりましたが,翌年2006年の5月に症状が再発しました。この時のが中央のオージオグラムですが、聴力は初回より悪く250 Hzとなぜか8 kHzで45dBまで低下していました。このときも症状は10日から2週間程度続いて,回復しました。

最後に聴検したのが右側でこの時は無症状です。(uHearの検証をしていたので6 kもみてます)、正常範囲内。でも強いて言えば左250と6k、8kに若干左右差があるかな,という感じです。

自分がなってみた感想なのですが、一側の低音部が聞こえないだけなのですが。それでもやや会話にも不便を感じ、耳閉感も結構苦痛でした。

だからというわけでもないのですが、この疾患についてはしばらく詳しくみていこうかと思っています。

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by jibikai | 2010-06-15 11:32 | 耳のはなし | Comments(6)
他覚的耳鳴
耳鳴には自分にしか聞こえない、自覚的耳鳴と、ゴム管などを入れることによって、患者さんの耳から実際出ているのを聴取することの出来る他覚的耳鳴があります。

頻度的には少ないのですが、他覚的耳鳴につてお話しします。他覚的耳鳴は血管性耳鳴といって耳の周囲の血管内を血液が流れる際の乱流によるもの、筋性耳鳴という筋肉の異常収縮、けいれんなどによるもの、その他に分かれます。

血管性耳鳴の原因は頸動脈狭窄、グロームス腫瘍、動静脈瘻などがあります。筋性耳鳴の原因となる筋肉は、アブミ骨筋、鼓膜張筋、耳管周囲筋や軟口蓋などです。その他にも、耳管の開閉や顎関節運動に伴う耳鳴があります。

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by jibikai | 2010-06-13 18:23 | 耳のはなし | Comments(0)
耳閉感があって聴力は正常な場合
今日は急性低音障害型感音難聴関連の話題。急性低音障害型感音難聴とは、ある日突然始まる耳閉感(耳のつまる感じ)を主症状として、聴力検査では125Hzから500Hzまでの低い周波数の音だけ聞こえが悪くなっているという特徴があります。ストレスや過労などが原因のことが多いので別名ストレス難聴とも言います。

一方で耳閉感を主訴とする疾患は他にもありまして、軽微なものですとその鑑別がしばしば問題となります。他に耳閉感を訴える疾患としましては、耳垢栓塞、外耳炎、外耳道異物などの外耳疾患、滲出性中耳炎や耳管開放症などの中耳疾患、内耳疾患としてはメニエール病などがあります。このうちの外耳疾患や滲出性中耳炎などは、視診だけで診断が付くのですが、軽度の耳管狭窄や耳管開放症は視診だけでは判別不能ですし、聴力検査でも異常が出ないことも多いのです。

その場合異常なしとするのか、急性低音障害型感音難聴のごく軽微なケースと考えるのか、軽度の耳管機能障害が潜んでいると考えるのか、あるいは自律神経失調症などの耳以外に原因があるのではと考えるのかは医者によっても大分違いが出てくるところかも知れません。

そのへんの所を明らかにしたいと考えていまして、現在リサーチ中です。
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このグラフは当院を耳閉感などで受診された方で急性低音障害型感音難聴が疑われた方の聴力を、症状が片側の方と、両側の方に分けて、高音3周波数の合計を横軸、低音3周波数の合計を縦軸に取って分布を見たものです。いずれのグラフもAの領域が急性低音障害型感音難聴の確実例、BとDの領域が低音域の聴力が正常である例と言うことになります。この領域には軽度の耳管機能障害や自律神経失調症、そして急性低音障害型感音難聴の病態である内リンパ水腫がある例などが混在しているのではないかと考えています。もし内リンパ水腫があれば、この群からどのぐらいの割合で再発してくるのか、あるいは最初は聴力正常でも、再発を繰り返す度に低音障害型感音難聴が顕著となってくる例がないかどうか、ということをちょっと気を付けてみてみようと思っています。

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by jibikai | 2010-06-06 23:22 | 耳のはなし | Comments(5)
補聴器が必要か知りたい場合は?
難聴には治るものもありますが、残念ながら治らない難聴もあります。治らない難聴で、生活に何らかの支障がある場合には補聴器を付けることが勧められます。補聴器が必要かどうか知りたい場合はまずは耳鼻科を受診していただくことをお勧めしています。今回の記事では、補聴器について相談をしたくて耳鼻科を受診した場合には、どのような流れで診察が進むか、また、いざ補聴器が必要となった場合には、どのようにして補聴器を手に入れることが出来るのかについて書きたいと思います。

診察

難聴がいつからあるのか、中耳炎やその他難聴を起こす疾患の既往、聞こえにくくて困るのはどんな場面なのかなどを問診で確かめます。
視診では、外耳道と鼓膜の状態をよく確かめます。補聴器を希望して来院された方でも、診察してみると耳垢栓塞や滲出性中耳炎が原因の難聴であったりすることもあります。これらは治療すれば聴力の改善が見込めますから、外耳道や鼓膜に異常のないことを確かめるのは重要です。また、慢性中耳炎で耳だれが出ている場合は、補聴器を付ける前に治療して、出来るだけ耳だれを止める必要がありますので、鼓膜穿孔や耳だれがないかなどもよく確かめます。

検査

聴力検査で難聴の程度やタイプ(伝音難聴か感音難聴か)を調べます。
語音聴力検査で言葉の聞き取りやすさを調べます。言葉を聞き取る能力が残っているほど、補聴器は有効となります。左右どちらの耳に補聴器を付けた方がよいかを判断する参考にもなります。
MCL、UCLの検査:音を最も聞き取りやすい大きさと、大きすぎて苦痛に感じる音の大きさを調べます。補聴器の調整する際の参考になります。

補聴器の適応となるのは?

難聴により日常生活に何らかの支障のある方。聴力レベルではおおよそ40 dB以上といわれていますが、実際にはそれよりも軽い難聴でも補聴器を付けた方が良い場合もあります。

補聴器装着までの流れ

診察や検査の結果、補聴器を付けた方が良さそうだ、あるいは試してみる価値がありそうだと判断される場合、耳鼻科から補聴器の販売店をご紹介いたします。その際、診察や聴力検査の結果と勧められる補聴器のタイプなどを記載した紹介状を発行いたします。
販売店にては、耳鼻科での診断結果を参考に患者さん個人に最も適したフィッティングを行い、補聴器を貸し出してもらいます。
ある程度の試用期間をおいて、再び補聴器販売店へ。試用した結果、満足できる様であれば購入していただきます。不都合な点があれば再調整にて対処します。
再調整を経て補聴器の有用性が期待できる様であれば、購入していただきますが、どうしても期待通りの結果が得られない場合は、購入を見送ることもできます。(試聴期間、預かり金などにつきましては販売店によっても異なりますが、お店にて説明していただけるはずです。)

また、法律で定められた一定以上の高度難聴の場合は、身体障害者認定の上、補聴器の購入に際しては公費の負担が得られます。この場合は、別の手続きとなりますので、耳鼻科にてご相談下さい。

なお、日本耳鼻咽喉科学会は耳鼻咽喉科専門医の中から、補聴器についての所定の講習や実習を修めた医師を補聴器相談医として委嘱しています。


補聴器相談医につきましては、日本耳鼻咽喉科学会のサイト内の以下の頁をご参照下さい。
補聴器のやさしい解説
補聴器相談医とは?
専門医・補聴器相談医検索

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by jibikai | 2010-06-02 17:37 | 耳のはなし | Comments(3)
補聴器の日
今年は寒い日が続いてまったく実感がわきませんが、もうすぐ6月ですね。
さて 6月6日って何の日かご存じでしょうか。
「雨がザーザー降ってくる日」(絵描き歌より)とか、
「ロールケーキの日」なんていうのもありなのですが、
「補聴器の日」でもあるのです。是非、記憶に留めていただいて
聞こえの悪い方はもちろんのこと、聞こえの良い方でも興味があれば、ぜひこの機会に
もっと補聴器について関心を持って下さい。

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最近の補聴器の進化は日進月歩で、聞こえの悪い方の多様なニーズにも対応できる
ようになっていますし、見た目もファッショナブルにもなってきています。

耳鼻科医は耳を治療するのが専門ですが、治療しても聞こえが回復しない場合もあります。
そんな時には補聴器が大きな助けとなります。

「補聴器ってどんなもの?」、「本当に役立つの?」なんていう疑問のある方は、是非、下に紹介したサイトをご覧になってみて下さい。きっと補聴器に対する見方が変わることと思います!


認定補聴器専門店『リオネットセンター栄』のスタッフFCC HIRO氏のブログ

日本補聴器工業会
【驚き!ニッポン工場大発見!】(シーメンス補聴器工場見学)最新式補聴器の出来るまでを、動画で見ることが出来ます。北陽が取材して、TVで放送されたものですが、補聴器のハイテクさに驚かされます!

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by jibikai | 2010-05-25 11:08 | 耳のはなし | Comments(8)
内耳の働きから、代謝異常による難聴まで
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内耳の働きは、中耳から伝わってきた音の振動エネルギーを電気的な信号に変更することにあります。どのようにして機械的なエネルギーを電気的な信号に変換するのか、その秘密は内耳の構造にあります。
内耳は二重の管腔構造になっております。(管のなかにまた別の管がある)外側の管を骨迷路(こつめいろ)、内側の管を膜迷路(まくめいろ)といい、それぞれの内容液を外リンパ、内リンパと言います。骨迷路は膜迷路によって2段に分けられて、それぞれを鼓室階、前庭階といいます。
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さらに蝸牛の断面を拡大します。
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鼓室階と中央階は基底板で、中央階と前庭階の間はライスネル膜で隔てられていますから、通常内リンパ液と外リンパ液が混じり合うことはありません。一方、いずれも外リンパ液で満たされている鼓室階と前庭階は頂回転でつながっています。

基底板にはコルチ器(ラセン器)という構造が乗っかっており、ここがリンパ液を伝わってきた音の振動を、神経の興奮に変換するシステムです。コルチ器には内有毛細胞と外有毛細胞があり、そこに神経の末端が接続するという構造になっています。
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コルチ器の微細な構造ですが、重要な構造としてはまず、内有毛細胞と外有毛細胞があります。内有毛細胞は1列、外有毛細胞は3列に並んでいます。内、外それぞれの有毛細胞には聴毛(ちょうもう)という毛のような物が生えています。さらには蓋膜という構造が聴毛の先端を覆っています。外有毛細胞の聴毛は蓋膜に刺さるようにしっかりと連結していますが、内有毛細胞の聴毛は、蓋膜から僅かに離れています。

鼓室階を伝わってきたリンパ液の振動はまず基底板を揺らします。基底板の振動によって聴毛の角度が変化して、内リンパ液に多く含まれるカリウムイオン(K+)は、内および外有毛細胞内に流入します。
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カリウムイオンの流入により有毛細胞の中では激しい電気的な変化が起きて、それをきっかけとして神経伝達物質を放出。シナプス結合している聴神経の興奮が起こるという仕組みです。

それでは、有毛細胞内に移動したカリウムイオンはその後どうなるのでしょうか。カリウムイオンはいつまでも有毛細胞内にとどまるのではなくて、いったん外リンパに移動して、そこから中央階の外側壁にある血管条を通って、再び内リンパに戻され、再利用されるのです。しかし、外リンパから内リンパへ移動するのにはエネルギーが必要で、そのエネルギーを産生しているのが血管条というわけです。
血管条はそのエネルギーを作るために、豊富な血流を必要としますから、この血流の阻害される病態、例えば糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などで内耳障害を起こして難聴を生じる可能性は充分に高いと思われます。加齢に伴いこれらの疾患の有病率は高くなりますから、いわゆる老人性難聴の一部には糖尿病、高血圧、脂質代謝異常による血管条の微小循環障害による難聴も含まれているものと思われます。

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なお、内耳の働きについて、動画でも解説していますので参考にして下さい。

by jibikai | 2010-05-24 23:30 | 耳のはなし | Comments(0)
急性低音障害型感音難聴の疫学的検討
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急性低音障害型感音難聴の疫学調査はこれまでにも多くの施設で行われており、目新しいテーマではないのですが、これまでの報告は大きな施設からのものがほとんどです。ところが当疾患は診療所を受診するケースも多く、当疾患の全体像を把握するには、診療所における傾向も見なければなりません。そこで当医院にて治療した急性低音障害型感音難聴症例について疫学的に検討し、先日日本耳鼻咽喉科学会山形県地方部会例会で発表しました。ちょっとマニアックな内容ですが、スライドと解説をアップしますのでおつきあい下さい。
(急性低音障害型感音難聴って何?っていう方はこちらをご覧下さい。)
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今回の研究対象は2004年から昨年末までの6年間に当院を受診した急性低音障害型感音難聴の疑われる患者さんのうち、下記の診断基準を満たす方としました。
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高音域3周波数の合計が60dB以下と定めているのは、水平型や山型の感音難聴を除外するためです。ただし、この診断基準によりますと、元々高音域の難聴のある方に低音障害型感音難聴を併発した例は除外されてしまうため、賛否両論あって診断基準がまだ(案)のままとなっています。
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疑い例も含めた症例数は176例で、そのうちの100例が確実例でした。
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確実例100例の性別、年齢別分布です。男女差は男性28例、女性72例であり他の報告者同様女性に多い傾向にありました。年齢層では男性が40歳代、女性が30歳代にピークがありました。
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症状は耳閉感が最も多く72%で、以下難聴、耳鳴、聴覚過敏、自声強聴と続きます。
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そのうちの主訴は耳閉感が58%、難聴と耳鳴がそれぞれ18%、、聴覚過敏と自声強聴がそれぞれ3%でした。
難聴よりも耳閉感を訴えるケースの多いのが当疾患の特徴と言えると思います。
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発症から受診までの期間です。
発症当日に受診するケースが最も多く、ほとんどのケースが1週間以内に受診していることがわかります。
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発症した月ですが、年ごとに多少のばらつきはあるものの春から秋にかけて多く、冬には少ない傾向にありました。
発症した月について報告している論文としては、他にもう一つ見つけることが出来ましたが、春から夏にかけて多く冬には少ないということを言っておりましてほぼ同様の傾向でした。
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季節が発症に関係しているとすれば、気象条件と関連はないのかということを検討してみました。発症した日が特定しやすい、発症後7日内に受診した80例について、発症のあった日と無かった日との間で、様々な気象条件について有意差の検定を行いました。当日の平均気温、最高気温、最低気温は発症のあった日の方が無かった日に比べて平均で1度以上高い傾向にありました。前日の気温との差は平均、最高、最低いずれも低い傾向がありました。平年気温との差は平均、最高、最低いずれも若干高めなのですが、発症の無かった日の方がむしろ高い傾向がありました。
気圧に関しては海面の平均気圧で見ましたが、当日、前日との差、平年との差、全てのパラメータにおいてほとんど差がありませんでした。
有意差についてはt検定を行いましたが、いずれも有意差はありませんでした。
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典型例100例中、少なくとも一度は再診して経過観察が可能であった86例 90耳の予後について検討しました。
各周波数が20 dB以内となったのものを治癒、
低音3周波数の平均聴力レベルの改善が平均10 dB以上であったものを改善、
低音3周波数の平均聴力レベルの改善が10dB 未満であったものを不変としました。
治癒が69耳、改善12耳、不変9耳で悪化した例は見られませんでした。
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再発の定義としては治癒と判定した後に、低音部3周波数の合計が65 dB以上となったもの。
改善例、不変例については、症状、聴力が一旦固定した後に再び低下した例。
自覚症のみの再発とは、基準は満たさないものの、自覚症が再発したものとしました。
再発なしが69耳、自覚症のみが6耳、再発して診断基準を満たしたものが15耳でした。


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さてここからは、様々な因子毎に早期予後と再発率を見てみました。
まずは男女差についてですが、早期予後、再発率とも有意差はありませんでした。
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年齢ですが、高齢である方が予後不良との報告もありますが、今回の検討では有意差が見られず、再発率については高齢になればなるほど多くなる傾向はあるものの、こちらも有意差はありませんでした。
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治療開始までの日数が長くなると予後不良例が多くなる傾向はあるものの有意差なし。再発率についても有意差はありませんでした。
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めまい感の有無ですが、ある方が予後不良の傾向はあるものの有意差なし。
再発率についてはχ2検定にて危険率5%で有意差を認めました。
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聴力との関係については、初診時の低音部3周波数の合計のついてみました。
130dB以上になりますと95dB以内、125dB以内の例と比べると有意に予後不良となりますが、再発率との相関は見られませんでした。
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治療は、イソソルビドを使用した例とプレドニンを使用した例がありました。
早期予後についてはイソソルビド使用群のの方が良好な傾向がありますが、有意差はありませんでした。
再発は使用群にのみみられましたが、使用していない群が7耳と少ないため有意差はありませんでした。
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プレドニン投与の有無による差ですが、使用群で予後不良の傾向がありますが、これは初診時聴力のより低下している例に対してプレドニンを使用する傾向があり、バイアスがかかったものと思われます。
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by jibikai | 2010-05-07 23:48 | 耳のはなし | Comments(0)
無音の世界
都会に暮らす現代人の日常は、車や電車の騒音や隣人の出す生活雑音などに包まれ、静かな環境というのはある意味憧れの世界なのだと思います。しかし無音の世界というものが、果たして居心地の良い環境なのかというのが今日の話題。

都会が騒々しい雑音に溢れているとして、じゃあ人気のない自然いっぱいの所、たとえば山奥などは無音なのでしょうか?都会の様な暴力的な音はありませんが、全くの無音じゃないですよね。例えばせせらぎの音、鳥のさえずり、虫の鳴き声、風の音なんかが周りにはあるんじゃないでしょうか。

全くの無音というわけではないのですが、それに近い環境というのは耳鼻科の聴力検査室で体験できます。聴力検査室というのは普通よりも壁を厚く、床も振動が伝わりにくくしてあるし、壁には吸音材を使ったり厚いカーテンをつるしたりして、音が反響しないように工夫してあります。

私が医者に成り立ての頃、大学病院の耳鼻科の医局に所属していましたが、患者さんが急変しそうな時などは病棟に泊まることもありました。当直室には先輩の当直医が泊まりますから、下っ端は他に寝床を探さなければなりません。医局のソファーも良いのですが、病棟からちょっと離れているのと、人の出入りがあって静かな環境とは言えないのが欠点でした。そこである晩私は、病棟にある聴力検査室に寝ることにしました。私がいた大学は聴覚の中でも聴性誘発反応といって、音を聞くことによって起こる脳波をコンピュータで解析する研究に力を入れていましたので、かなり大きめの聴力検査室が病室のならびに備えてありました。部屋の中にはベッドが一つポツンと置いてあって、その周りに検査機器が散在しているような環境、もちろん窓もありません。寝るにはちょっと異様な環境ではありましたが、研修医なんていうのは常に睡眠不足、ちゃんとベッドがあって、誰にも邪魔されない静かなところであればどこでも良かったのです。

何かあったら起こしてくれるよう、深夜勤の看護師さんにお願いして夜中に聴検室のベッドに入りました。疲れも溜まっていましたし、きっとぐっすり眠れるだろうと思ったのですが、結果は違いました。まず、とにかく眠ってるような眠っていないような浅い睡眠で、悪夢にうなされるわ、金縛りに会うわで散々な思いをしました。しかも時間の感覚までおかしくなり朝が来たのかどうかも分からず、目覚めは最低。後で先輩に「あそこ出るんだぜ!」って聞きましたが、きっと違うのです。音のない不自然な環境が、睡眠のリズムや時間の感覚までも狂わせてしまうんじゃないかと思うのです。

適度な環境音というのは人間にとって必要なものだと言うこと体験し、聴検室で寝ようなんて、この後二度と思わなかったことは言うまでもありません。

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by jibikai | 2010-05-01 16:58 | 耳のはなし | Comments(9)