耳鼻科医の診療日記
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休診日のお知らせ
8月はイレギュラーに休む日が多くなりますので、
お知らせします。

夏休みは、13日(水)から15日(金)までと、
17日(日)から20日(水)までとさせていただきます。

通院中の患者さんには、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、
よろしくお願いいたしますm(_ _)m
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写真の夕景は、近所の馬見ヶ崎川です。
最近は暑くて、あまり写真も撮っておらず、ちょっと前の画像。
夏休み中は、近くでリフレッシュしつつ、写真でも撮れたらいいなと
思っております。
by jibikai | 2008-07-31 10:53 | Comments(0)
耳鳴について考える 〜治療について〜
今回も耳鳴の話の続きで、治療について書きます。

耳鳴の治療としては、急性期と慢性期とに分かれます。
急性期、すなわち耳鳴が起こって間もない時期には、それと同時に急性の内耳障害が起こっていることが多いと思われます。具体的な病名としては、突発性難聴、低音障害型感音難聴、メニエール病、音響外傷などということになりますが、これらの疾患では、原因となっている疾患の治療をまずは行うべきです。

一方、慢性の耳鳴や、いつからかはっきりしないもの、難聴も伴わない耳鳴の場合は、前回お話した様な仕組みで、元々は内耳で起こった耳鳴が、脳における悪循環で、持続したり増強したりしていていることが考えられますから、これを何とかしなければなりません。
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(脳において、負のスパイラルが起こって耳鳴りが増強しているイメージ)


慢性的な耳鳴では、脳の中で耳鳴を増強するような、「負のスパイラル」が発生していると考えられます。それは、耳鳴の信号が大脳皮質で無害な音と無視されずに、大脳辺縁系に伝達されて不安や恐怖感を起こし、それが自律神経のバランスを崩しイライラする。そうなるとさらに大脳皮質はまた耳鳴を注意して聞こうと集中してしまい、さらに悪くなる、というようなことが何重にも繰り返されるうちに、内耳からの入力がなくとも、耳鳴を感じるまでに至る、というメカニズムが考えられています。

脳で耳鳴が増強しているような状況では、この「負のスパイラル」を断ち切ることが重要です。そのためには、脳の中で一番理知的かつ合理的な判断のできる大脳皮質での、耳鳴に対する考え方を転換していくことです。「耳鳴が危険な病気のサインではないこと」、「多くの人が経験するごくありふれた症状であること」、「それが増強するには脳の働きが悪循環を起こしていること」などを理解することが、治療には必要です。これにより、大脳辺縁系でも耳鳴を不快なものと判断しなくなり、自律神経失調症状も抑えられてくるというのが狙いです。

ただし、いくら理性的に判断しろと言っても、やはり耳鳴が強いときにはイライラしますから、これを軽減するために、音響療法というのを併用することも多いです。要するに静かな環境を避けて、相対的に耳鳴を小さくするという考え方です。音源としては、軽症の場合は、わざとチューニングをずらしたFMラジオで雑音を流すとか、波の音のCDを流すとか、難聴のある人であれば、補聴器を付けて環境音が聞こえる状態を作ることなどです。耳鳴に対する苦痛度が高い場合は、サウンドジェネレイターという補聴器と同じ形をした、雑音を流すための専用の機械が必要となります。

今回ご紹介しました耳鳴に対する治療法、すなわち耳鳴の起こる仕組みを理解することにより、過度の警戒を起こさないように、考えを変えていくことと、雑音により耳鳴を相対的に小さくして慣れていくことが、実は最近注目されているTRT (tinnitus  retraining therapy)という治療法なのです。

耳鳴の治療というのは、色々な治療法が流行、廃れを繰り返してきました。それだけ、決め手がなかったということになるわけなのですが、TRTはかつての治療が耳鳴の消失を目的としていたのに対して、耳鳴が意識のレベルに上がってこないように、いわば慣れてしまって、苦痛を避けるところに主眼をおいている点で異なります。薬を処方すればそれで済むという治療ではありませんから、それなりの難しさはありますが、期待できる治療法ではあると思います。
by jibikai | 2008-07-07 18:06 | 耳のはなし | Comments(0)
耳鳴について考える 〜苦痛の連鎖〜
引き続き、耳鳴の話です。またしても理屈っぽい話になってしまいそうなのですが、読んでいただければ幸いです。

さて、前回は音刺激によって引き起こされる脳の活動は、大脳皮質のみならず、大脳辺縁系や視床下部ー自律神経系の反応もあり、それぞれがまた関連しあっているということをお話ししました。耳鳴もまた、最初は内耳で起こるものが多いのですが、それによる神経の興奮もまた、脳幹を経て、大脳皮質へと伝達されます。大脳皮質では、耳鳴を気にしなくても良いものとして認識して処理してしまえば、大脳辺縁系や自律神経系はあまり影響を受けません。しかし、大脳皮質が耳鳴を特に警戒すべき音として判断した場合は、大脳辺縁系の海馬という部分には不快な経験としてメモリーされますし、扁桃体では不快感や恐怖として認識。扁桃体の反応はさらに、視床下部を通じて自律神経に「退避行動」を取るような命令を出させます。この自律神経によって命令される「退避行動」とは、心拍数の増加とか、血圧の上昇などなど、危険に対して身構えているようなものですから、リラックスとは正反対の、まさに緊張を強いられた状態となります。自律神経が内臓に対して退避行動を取るように命令することは、危険を回避しながら生きていくためには必要不可欠なことなのですが、それも過度になると、それ自体がストレスとなり弊害も多いわけです。さらに自律神経の緊張状態というのは、今度は大脳皮質を刺激しますから、ここからまた、大脳辺縁系へと不快なストレスを伴った信号が巡り巡っていくという悪循環を来してしまうわけです。(下のの図を参照して下さい。)
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こうなってしまうと、内耳の病変が落ち着いて、耳鳴を起こす病的な信号を、もう脳の方へは送ってこなくなってしまっていても、脳が一人歩きして、耳鳴を感じ続けるというようなことが起こります。無難聴性耳鳴や突発性難聴が治った後も耳鳴のみ続くケース、機能性難聴や心因性難聴に伴った耳鳴などには、このような状態が多いと思われます。

急性期の耳鳴、すなわち突発性難聴やメニエール病、中耳炎などによるもので、比較的発症後 間もないものは、元々の疾患をしっかりと治療することが重要で、それによって内耳での耳鳴発生を抑えます。しかし、内耳の状態が落ち着いた後にも、耳鳴が慢性的に続く場合、しかも苦痛や自律神経症状も伴う場合は、脳の中で起こっている悪循環を断ち切るための治療が必要になってくると思います。

それを具体的にどうするかは、また次回にお話ししたいと思います。

というわけで、耳鳴の話はまだまだ続きます。
by jibikai | 2008-07-03 18:22 | 耳のはなし | Comments(14)
耳鳴について考える 〜音と脳の関係〜
ちょっと、お絵かきに手間取りまして、1週間ぶりの更新です。

さて、脳の中で音の情報がどのように処理されているのかということを、もう少し掘り下げてみたいと思います。
(なお、本文、図の作成にあたりましては、川村光毅先生の論文「扁桃体の構成と機能」を参考とさせていただきました。) 
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さて、前回 聴覚伝導路としては、内耳ー脳幹ー大脳皮質というルートを説明しました。内耳で音の振動のエネルギーを神経の興奮という電気的エネルギーに変換、脳幹では音の周波数の解析が行われ、大脳皮質で言葉や音楽として理解されるという一連の流れです。これが聴覚伝導路としては、本流と考えて間違いないのですが、実は他にもいくつかの支流があって、特に大脳辺縁系という部分の働きが、最近注目されています。

大脳辺縁系というのは、大脳の中では内側の方にあって、海馬(かいば)や扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる部位などからなります。大脳皮質が、新しい大脳としてヒトに進化してから飛躍的に発達した部分ですが、大脳辺縁系はいわゆる旧い脳の部分で、哺乳類では種が違っても ほぼ同じ程度の機能を持つといわれます。

図の矢印は音を聞くことによって生じた神経の活動電位が、どのように脳内を伝わるかを示します。扁桃体へとつながるルートとしては、脳幹から直接 入ってくるルートと、大脳皮質から海馬の順に経由して情報処理を受けて入ってくるルートの二通りあります。

扁桃体では音などの外界の刺激に対して、それが自己にとって益になるのか害になるのかの価値判断が行われ、益ならば快情動(気持ちいいということ)が起き、害と判断されれば不快情動(気持ち悪く思うことや恐怖感など)が起こります。

扁桃体からは大脳皮質へと戻るルートと視床下部を介して、自律神経に命令を送るルートがあります。扁桃体からの大脳皮質への信号は脳を覚醒状態に保ち、刺激に対する感受性を高めて、皮質を活性化するといわれています。一方、自律神経は呼吸、循環、摂食、水分代謝など、内臓の活動の調節を行っていますが、音の刺激がこういった生命維持の根源とも言える働きに影響を与えることになるのです。例えば、不快な音を聞いて鳥肌が立つったりするのは、音の刺激に自律神経が反応したと考えられます。

以上のように、音を聞いたときの脳の反応としては、大脳皮質で理知的に判断するだけでなく、大脳辺縁系で情動的に快か不快か直感的に判断したり、自律神経症状が起こったりと、脳内のいろいろ部位で、反応が起こります。さらには、それらの反応は、互いに関連しあっているというのが、今日の音と脳との関係の話のまとめです。

実際の音の刺激のみならず、耳鳴においても脳の関与は大きいことは、特に最近いわれていることでして、その辺については、また、次回にお話ししたいと思います。

参考文献
川村光毅:扁桃体の構成と機能. 臨床精神医学 36 (2007) 817-828 (アークメディア)
by jibikai | 2008-07-01 21:11 | 耳のはなし | Comments(2)