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<   2010年 09月 ( 4 )   > この月の画像一覧
鼻すすりは止めましょう
耳がつまる感じ、耳に膜が張ったような感じなど、耳閉感(じへいかん)という症状を訴える方は多いのですが、原因は様々。滲出性中耳炎や急性低音障害型感音難聴(いわゆるストレス難聴)が主なものですが、意外と知られていないのは、鼻すすりが耳閉感を引き起こしているということです。

鼻をよくすする方の鼓膜を見ますと、鼓膜が薄くなったり、張りがなくなる(弾力が低下している)ことがあります。また、鼻すすりにより鼓室の空気が上咽頭の方に引っ張られますので、鼓膜は凹んだ状態になってしまい、なかなか元に戻らなくなります。

鼓膜が薄くなったり、弾力を失ったり、凹んだりすると、音が鼓膜に当たってエネルギーを耳小骨に伝達しようにも効率が悪くなってしまい、その結果伝音難聴を生じて、耳がつまった感じになるのです。

ところで、鼻すすりってどういう時にするのでしょうか。一つ目は生理的、あるいは正常な鼻をすする場面ですけども、臭いを嗅ごうとする時です。
二つ目は鼻の奥にたまった鼻汁を除去、咽に吸い込んで飲み込もうとする時です。これはちょっと汚いですが、呼吸を楽にしようとすることなので、正常な行為とも云えます。しかし鼻汁には咽の炎症を引き起こす物質も含まれますので、鼻はすすらず飲み込まず、かんだ方がいいでしょう。
三つ目は癖になっている場合です。特に、耳管開放症では、耳管が開いていると自分の声が耳管を通じて耳に響いたり、呼吸音が聞こえたりして不愉快ですから、自分で耳管を閉じることを覚えてくるのです。鼻をすすることによって、鼓室の空気は咽頭の側に引っ張られて、鼓室は陰圧になります。そうすると耳管は、虚脱してぺちゃんこになりますから、ますます鼓室内の陰圧が取れななくなって容易には元に戻らなくなります。

さて、鼻すすりによって耳の不調のある方への治療ですけれども、まずは鼻すすりを止めて貰うことなんですが、これがなかなか厄介です。まず、自覚のない方がほとんど。いわれて初めて「ああ。」と気付いてくれるんですけれども、「鼻すすりは止めて下さいね。」と念を押しても、「わかりました。  ズズ〜。」っと直ぐ無意識にやってしまう方も多いのです。もちろん、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など、慢性的に鼻づまりや鼻汁の症状を起こす病気があればそれを治療します。耳管開放症の方の場合は、まずは漢方の内服、それから生理食塩水の点鼻などが有効のこともあります。
原因が何にせよ、鼻づまりから生じた鼓膜の異常というのは、ひどくなりますと癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎など、なかなか厄介な中耳炎を引き起こしますから、鼓膜の凹みがひどければチュービングが必要になることもあります。

今回は無意識でついついやってしまう鼻づまりが、耳の不調の原因となることをお話ししてみました。

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by jibikai | 2010-09-28 17:34 | 耳のはなし | Comments(6)
風邪と抗生剤
風邪の治療に抗生剤を使うのは適切かどうかということは、医者によっても議論の分かれるところです。そもそも風邪というのは、ほとんどがウイルスが原因です。ウイルスには抗生剤が効きませんから、ウイルス性と分かればまず抗生剤は不要です。問題はウイルス性か細菌性か診断できるのかということと、もし細菌性だった場合抗生剤を使うのか、それとも自然治癒力に委ねるのかということになりましょう。
さらに、もう一つ。最近も問題になっている耐性菌の問題。これについては、個人個人の風邪が治るかどうかということよりも、集団、あるいは社会としての免疫が重要となってきます。

まずは個人レベルの話として、発熱、鼻汁、鼻づまり、咽の痛み、咳、痰といった風邪症状があった場合、抗生剤を使うかどうかです。これらの症状だけではまず最初は抗生剤を使わずに、対症療法すなわち解熱剤、咳止め、去痰剤、抗ヒスタミン剤などと、安静などで様子をみることが多いかと思います。ただし、最初から急性副鼻腔炎、急性中耳炎、急性気管支炎、急性扁桃炎などのひどいケースは抗生剤を使うべきと考えます。
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ただし、抗生剤の使用は耐性菌を生む危険性があります。抗生剤を使うことによって耐性菌が出てくるのは次のような仕組みです。まず、抗生剤を使って血中濃度が上がって、耐性のない普通の病原菌は死にます。この濃度がMICです。これで、菌が全滅すればよいのですが、生き残るのがいます。それが耐性菌。耐性菌は、非耐性菌が死んだ状態ではライバルがいなくなるので、むしろ中途半端な抗生剤の量では生育しやすくなります。そこで、特に濃度によって抗菌剤の効果が強まる抗菌剤の場合は、MPCつまり耐性菌を制御できる濃度まで上げるだけの高容量にすることが、耐性菌の発現を予防するのに有効ということになります。(図)

個人レベルの話であれば、身体に侵入して増殖してしまった病原菌をある程度減らしてしまえば、あとは治っていくのですが、生き残った菌が体外に出ていって、他の人にうつった場合、もしその相手の免疫力が低下していれば、命取りとなることもあるわけです。ですから集団レベルの免疫という話になると、一旦抗生剤を使った以上は、しっかりと耐性菌まで殺すことを考えなくてはいけないということになるのです。

ということで風邪の治療としては、中耳炎や気管支炎などの合併症がなければ、抗生剤は使わず対症療法主体、合併症が生じたら抗生剤の必要なケースも多くなりますが、その場合はしっかりと菌を叩かなければ耐性菌が生じやすく、中途半端な抗生剤の使い方にならないよう気を付けることが大事ということになります。

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by jibikai | 2010-09-20 23:19 | 耳鼻科全般 | Comments(4)
補聴器を購入する際の公費負担について
今日はちょっと堅苦しい話で恐縮ですが、補聴器を購入する際に市町村などの行政から受けられる補助についてです。

もちろん難聴のある方、あるいはそのご家族以外には興味のない話だとは思うのですが、時として、知識がないばかりに、本来受けられるはずの行政サービスを受けていない方もありますので、記事にしてみます。

さて、一定レベル以上の聴覚障害者に対しては、行政が補聴器購入のサポートを行っているのはご存じでしょうか。2006年に障害者自立支援法という法律が施行され、聴力障害のある方への支援も、現在はこの法律に基づいて行政サービスのルールが定められています。

最も重要な行政サービスは、補聴器購入資金の補助です。
このサービスを利用するには、まず身体障害者手帳の交付を受けることが必要になります。身体障者認定のための診断書・意見書を記載できるのは,都道府県知事の定める医師です。聴力障害の程度によって等級が分けられます。申請者される方は居住地の役所の障害福祉担当課(山形市の場合は生活福祉課です。)へ診断書・意見書と申請書、申請の写真 を添えて提出すると数週間で身体障害者手帳が給付されます。

身体障害者手帳給付後、申請者は指定医療機関の医師に"補装具交付意見書"の記載を依頼します。病院や学校、または補聴器店で購入する 補聴器を決め、補聴器店で"見積もり"を作成し、 居住地域の役所担当窓口などで"補装具交付意見書"と"見積書"を添えて"補装具の支給申請" を行います。補装具費の支給が認められれば役所から "支給決定通知書"と"補装具費支給券“が支給されます。補聴器販売店で"補装具費支給券"を提出し、補聴器を受け取ることになります。

【自立支援法対応補聴器について】
障害者自立支援法では、1割の自己負担で購入できる補聴器の種類をおおよそ限定しております。対応機種は最大出力のピーク値によって、高度難聴用と重度難聴用に分かれますが、重度難聴用の方がより高出力のタイプということになります。高度難聴用ではポケット型、耳掛け型、耳あな型がありますが、重度難聴用ではポケット型と耳掛け型のみです。補聴器の型、また高度難聴者用か重度難聴者用かによっても支給額の上限が決まっています。

ただし、各メーカーでは自立支援法対応補聴器としてラインナップを拡充させている様ですし、デジタル補聴器もあります。
自立支援法対応補聴器については、是非、下の記事も参考にしてみて下さい。
いつもお世話になっている『リオネットセンター栄』のスタッフFCC HIRO氏の役立つブログ。
Nagoya × Rionet Hearing Aid より、「自立支援法対応補聴器」


なお以前の法律と異なるのは、「補聴器が現物支給であったものから、購入資金の支給に変わったこと。」、「利用者負担金が原則1 割負担となったこと。」です。

障害者自立支援法の問題の一つとしていわれるのは、聴覚障害として認定されない程度の中等度の難聴者(児)に対するサポートが手薄なことです。ただし、自治体によっては市町村や県独自の補助を条例などで定めているところもありますので、自分の住む自治体にそのような制度がないかどうかも確かめておくと良いと思います。


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by jibikai | 2010-09-08 23:34 | Comments(2)
アンチエイジングについて考えてみる(その7)
さて、しばらく耳のアンチエイジングをテーマにいろいろと考えてきましたが、ここまでのところをまとめてみます。
まず第一に加齢とともに難聴が起こる場合、その原因は内耳の障害が最も多いということ。内耳のどの部分が障害を受けるかにより、「感覚細胞型」、「蝸牛ニューロン障害型」、「血管条萎縮型」、「蝸牛伝音障害型」、「混合型」に分けられます。じゃあなぜ年をとるとこういった障害が起こるのかというと、活性酸素・フリーラジカルというものが外から入ってきたり、身体で作られたりして、細胞にダメージを与えた結果である部分が多いのです。

しかし、内耳にダメージを与える要因というのは何も活性酸素・フリーラジカルばかりではないようです。例えば騒音。急激に起こる強大な音による内耳障害は、音響外傷として、難聴や耳鳴として自覚されますけれども、それよりも低いレベルながらも恒常的に騒音に晒されますと、やはり蝸牛の感覚細胞、すなわち有毛細胞はダメージを受けます。これが積もり積もって、あまり自覚症状の強くない難聴を引き起こすわけです。その証拠に、例えば騒音のないと思われる未開の地に住む人は、文明社会に暮らす人に較べて聞こえがよいというデータもあります。
その他には、薬剤や化学物質、動脈硬化による血流の障害などもまた、内耳へジワジワとダメージを与えているものと思われます。

また前回もお話ししましたとおり、加齢による聴覚障害は、内耳の働きが悪くなるばかりではありません。後迷路障害(こうめいろしょうがい)といって脳の聴覚伝導路全体の機能低下も進んできます。脳では音を解析して言葉として意味づけ、理解をしていますので、後迷路障害では言葉の聞き取りが悪くなります。後迷路障害が起こる原因としても、活性酸素・フリーラジカルの関与もあるでしょうし、動脈硬化による脳循環不全なども関係しているでしょう。また、さらには最初に起こる内耳障害により、脳への音の入力が少なくなりますから、脳はその分仕事をさぼりがちになります。廃用性変化といいますが、要するに言葉の聞き取りと理解を出来るのにしなくなる状態です。

これで、加齢によって難聴が起こる仕組みがおおよそ理解できたかと思います。あとは、それをいかにして防いでいくのか、それがアンチエイジングです。

まずは活性酸素の発生を抑えることですが、聴覚への影響を実験的に確かめた研究というのはさほど多くないとのことです。

まず、カロリー制限。これはカロリー制限したマウスの方が、ABRという脳波を使った聴力検査では、高齢となっても聴力が落ちなかったとのこと。

それから、よく感音難聴で使われるビタミンB12ですが、これについては難聴者の場合は低い値を示したとのこと。(よって、補うことにより難聴の進行を抑える可能性がある)

それから、女性の場合は性ホルモンとの関連がいわれており、エストロゲンは聴力の低下を予防し、逆にプロゲスチンは難聴を進行させるといわれています。

もちろんここに書いたような聴力のアンチエイジング効果以外にも、寿命を延ばすという効果については、さらに色々な実験、研究が行われています。理論的には抗酸化剤が効果的なはずですが、残念ながら、現在のところ明らかに効果のある薬、あるいは食品などは見つかっていないのが現状です。

それにもかかわらずドラッグストアなどに行けば、いろんなサプリメントが売られてはいます。健康食品として売られているわけですが、買う方としては単なる栄養補給としてよりも、なにかしらのアンチエイジング効果を期待して購入するものも多いことでしょう。しかしながら、それらサプリメントが聞こえあるいは身体の老化に効果があるという保証は何もないということを憶えておくべきでしょう。

次に動脈硬化予防ですが、これはアンチエイジングに有効と思われます。食生活の見直しも当然必要ですが、運動も必要です。まずは有酸素運動。具体的には「少々きつい」と思う程度の運動を1週間で60分間行うのが有効だそうです。ただし、やり過ぎは禁物。過度の運動負荷は活性酸素を増やしますから、かえって老化を推進する結果となることもあります。

また、騒音を極力聞かない様にするということは重要です。もし騒音のある職場で働かざるを得ないのであれば、耳栓をすべきであるし、例え音楽であっても大音量でのコンサート、携帯型プレーヤーの長時間の使用などは避けるべきと考えます。

最後にもう一つ。加齢による難聴はおそらく内耳に最初に始まり、後迷路障害を起こすのはその後です。ですから、内耳障害が出てきて聞こえにくくなったら、補聴器を付けるのが、おそらくその後に起こってくる後迷路障害をある程度防ぐ効果があると思います。耳から出来るだけ情報を入れていって、脳の廃用性変化を防ぐという考え方です。中等度の難聴の方でも、補聴器を勧めても「俺にはまだ早い。」、「もうすこし様子を見てから。」という方があります。しかし、加齢による難聴であれば、徐々に進行して、いくら様子を見ても自然治癒は残念ながらあり得ないわけでして、そうであれば、いたずらに時間稼ぎすることなく、自分ではまだ要らないと思っていても、早めに補聴器を付ける方が良いケースも多いのです。
補聴器の着用ということは、一見治療を放棄して難聴であることを認めるということにも思われ、敬遠する方が多いのも心情的には理解できます。しかし、難聴によるコミュニケーション障害をそのまま放置することは、身体や脳の活動の機会を少なくします。そこで、そういった弊害を防ぐために補聴器を付けるということもまた、一つのアンチエイジングと考えてもいいと思うのです。

アンチエイジングというとなにやら夢の技術、という風に思われがちなのですが、残念ながらそれを実現する特効薬というようなものはありません。普段からのセルフケアと、一見後ろ向きに見える、補聴器着用ということも重要であるということを強調して、しばらく続けたアンチエイジングの項を終えたいと思います。

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by jibikai | 2010-09-03 18:18 | 耳のはなし | Comments(10)