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耳を診る
今回は耳の診察の最も基本となる耳の視診について、連続写真を使って説明したいと思います。
耳の中は外耳道というトンネル状の部分があって、その奥に鼓膜があります。鼓膜の向こう側は鼓室といって中耳の一部ですから、鼓膜の状態をつぶさに観察することによって中耳の状態もおおよそ判るというわけです。
ところが外耳道は狭い上に、への字型に屈曲しています。そこで①のように耳介を後上方に引っ張って、外耳道を真っ直ぐにする必要があります。
e0084756_18124283.jpg
外耳道を後上方に引っ張りつつ、耳鏡を外耳孔へ入れます。このとき耳鏡の先端が外耳道に当たると痛いので、極力当てない様注意しています。
e0084756_1813816.jpg
さらに耳鏡の先端を奥へと進め、耳鏡をのぞき込むと鼓膜が見えるというわけです。
e0084756_18132810.jpg

鼓膜は肉眼でも見えますが、より詳細な観察をしたり、処置をしたりする時には手術用顕微鏡を使います。

ちょっとマニアックでしたけれども、今回は耳の診察をどうしているかという話をしてみました。外耳道がへの字に曲がっているということ、耳介を後上方に持ち上げると奥まで見えやすいことなどを憶えておくと、お子様の耳垢を取ったりする時に役立つかなと思います。もちろんその時にも外耳道を傷つけると耳が痛くなりますから、やり過ぎは禁物ですが。
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by jibikai | 2011-01-11 18:29 | 耳のはなし | Comments(0)
ストレスと難聴
e0084756_836456.jpgここ数年、ストレスが原因で難聴を発症される方が多いように思います。典型的なのは急性低音障害型感音難聴やメニエール病ですが、診断基準を満たさない軽度の難聴や、耳閉感、耳鳴を訴える方にもストレスが背景にありそうな方は多いのです。もちろん、ストレスを受けたからといって必ず皆さん難聴になるわけではないので、元々のなりやすい素因や全身の状態なども関係しているとは思いますが。

さて、難聴の原因となりやすいストレスの種類ですが、仕事関係が一番多く、ついで人間関係、介護疲れなどが多いように思います。“思います。”としたのは、正確に統計をとったわけではなく、あくまでも印象だからです。

ストレスが急性低音障害型感音難聴の要因になっているかどうか、解析を試みたことはあります。この疾患は比較的発症した日がはっきりしていますから、発症時や発症前に何をしていたか、どういう状況であったかなどを詳細にみていけば何か分かるかも知れないと考えたからです。そういった意識をもって診察していきますと、仕事が立て込んでいたとか、多忙で寝不足が続いていたという状況で発症している方は多いことに気付きます。人間関係からのストレスも多いと推測しているのですが、こちらの方は患者さんも詳しくは言いたがらないことが多く、はっきりしないのが現状です。

そこで発症した日がどういう日だったのかを調べてみますと、曜日別では週末よりもウィークデイに多く、お正月やゴールデンウィーク、お盆休みの発症は少ない傾向にありました。これから言えることは、難聴の誘因となるストレスは、家庭よりも職場で受けている可能性が高いということです。

ただし、ストレスと難聴の関係はまだまだ分かっていないことも多く、今年も研究テーマの一つにしていきたいと思っています。

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by jibikai | 2011-01-09 09:08 | 耳のはなし | Comments(3)
語音聴力検査
さて、今回は語音聴力検査についてお話したいと思います。
聴覚検査としましては、純音聴力検査が最も重要でよく行われるのですが、語音聴力検査も情報量が多い重要な検査です。

語音聴力検査とは言葉の聞き取りやすさを調べる検査です。検査音には「ア」、「キ」などの“語音”を用います。純音聴力検査と同じ防音室で、オージオメータを使って行います。オージオメータには語音の録音されたテープレコーダやCDプレーヤが接続されていて、ヘッドホンから流れる語音を聞いてその通りに発音するか、紙に書いていただきます。そして、左右各々、音の大きさを変えながら正答率を調べます。もっとも大事な指標は最大語音明瞭度です。

音自体の聞こえの程度というのは、純音聴力検査で分かるわけですが、さらに語音聴力検査も追加して行う意義としては、「難聴の原因となっている障害部位の推定」、「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」、「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」などがあります。

以下、それぞれについて説明したいと思いす。

まず「難聴の原因となっている障害部位の推定」ですが、聴力正常な場合や伝音難聴では、ある程度音を大きくすると語音は100%近くまで間違わずに聞き取ることが出来ます。それに対して感音難聴では、いくら音を大きくしても最大語音明瞭度が上がらなくなります。聞き取りやすい音の大きさの範囲が狭くなって、それ以上音の大きさを大きくすると、むしろ言葉の聞き取りが悪くなってしまうのです。
また、ごくまれに見られる後迷路性難聴では、純音聴力検査の結果に対して語音の聞き取りが極端に悪くなります。これは、内耳までは正常でも脳の中の聴覚伝導路のどこかが障害されているために起こる現象です。

次に「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」ですが、通常は純音聴力検査の閾値(ぎりぎり聞こえる音の大きさ)よりも40dB前後大きな音で最大語音明瞭度が得られます。ところが純音聴力検査が上手くできていない場合や、心因性難聴あるいは機能性難聴といわれる難聴の場合は、逆に語音聴力検査の結果の方が良好な結果を示すことがあります。ですから、明らかに会話可能なのにもかかわらず、純音聴力検査で高度な難聴を示す場合などには、さらに語音聴力検査も追加して行います。

最後の「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」です。補聴器を装着する最も大きな目的は、人の話を聞き取ると言うことです。ですから、いくら音が大きく聞こえても語音の聴取がうまくいかなければ補聴器はあまり役に立たないと言うことになります。目安として最大語音明瞭度が50%以下ですと補聴器を付けても満足な結果が得られないことが多いようです。ですから語音聴力検査によって予めどの程度補聴器が役に立つのかということも判りますし、片側だけに補聴器を付ける場合にはどちらの耳に付けた方がいいかの指標ともなるのです。
また補聴器を付けてある程度慣れた頃に、補聴器の効果判定というのを補聴器販売店や耳鼻科の補聴器外来では行いますが、その際にも語音聴力検査は必須となるのです。

今回は語音聴力検査についてお話ししました。
聴補器選びに欠かせない語音明瞭度測定も参考にしてみて下さい。
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by jibikai | 2010-12-13 01:24 | 耳のはなし | Comments(7)
急性低音障害型感音難聴になりやすいのは?
急性低音障害型感音難聴とは急に発症する耳閉感(耳のつまる感じ)、難聴、耳鳴などを主症状とし、聴力検査では低音のみが障害されている感音難聴です。ストレスに伴うことが多いので、一般的にはストレス難聴と言われることもあります。もともとは突発性難聴の一つのタイプと考えられていましたが、比較的治りやすい、両側に起こることがある、反復することがある、メニエール病に移行する例があるなどの特徴があり、近年一つの独立した疾患として扱われるようになりました。

当院では6年間以上にわたり急性低音障害型感音難聴の調査を行っておりまして、今回紹介するデータもその中の一つです。
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グラフは2004年1月から2010年9月までの6年9ヶ月の間に発症し当院を受診した急性低音障害型感音難聴の例116例の性別、年齢別分布です。
まず、男性よりも女性に多いことがわかります。その差は約2倍ですが、この割合は他の病院などの調査でも同じことが言われています。
年齢は30歳台のいわゆる働き盛りにピークがあります。これも他の論文などに報告されているのと全く同様の傾向です。
男性よりも女性に多いこと、働き盛りの世代に多い理由としては、女性の方がストレスを受けやすいこと、30代前後は社会的にも家庭の中にもストレスが多いからなのではないかと推測されてはいますが、はっきりしたことはわかっていません。
事実、発症前に心理的なストレスや、過労状態、睡眠不足などがなかったか尋ねると、半数近くの方にそのようなエピソードがあるようです。
10台にも少ないながらも急性低音障害型感音難聴の発症はあるわけですが、この世代で多いのは受験のストレス、睡眠不足などがどうも要因となっていそうなケースです。ちょうどこれから受験シーズンを迎えます。あまり無理をしませんようにといっても、そうもいかないこともあるでしょう。せめて、10代でもいわゆるストレス難聴になることがあることを記憶にとどめていただければ幸いです。

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急性低音障害型感音難聴関連の記事はこちらから。
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メニエール病と低音障害型感音難聴
急性低音障害型感音難聴とは?
低音障害型感音難聴 〜診療シミュレーション〜
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by jibikai | 2010-12-09 22:39 | 耳のはなし | Comments(1)
通信販売の補聴器はお得か?
実は私自身、補聴器が通信販売(通販)で売られているという事実を最近まで知りませんでした。といいますのも、まじめに耳のことを考えている人(医者も患者さんも補聴器やさんもそうですが)にとっては、それが想像を絶する暴挙といえ、そんなことあり得ないだろうと思っていたのです。

補聴器は各人の聞こえやニーズに合わせて、機種を選んでそれを調整(フィッティング)して初めて使えるものとなります。工場から出荷された補聴器というのは完成品とはいえません。フィッティングをしてはじめて役に立つものとして機能するのです。ちなみに補聴器店では通常フィッティングの料金を別に請求することはありません。ですから、補聴器の料金というのはフィッティングの料金込みのものと理解いただくとよろしいかと思います。

さらには、補聴器の機能を最大限に引き出すためには、耳の中に入る部分(耳栓といいます)をイヤーモールドといって個人個人の耳型を採って作った方がいい場合が多いです。イヤーモールドは、より安定した装着や出力を得るため、音漏れとそれによるハウリング(ピーピー音)を防ぐために有効です。通販ではイヤーモールドを作ることも困難ですし、耳栓を数種類用意して使用者本人に選んでもらうのが関の山です。イヤーモールドが必要でも作れない、これも通販の大きな問題の一つです。

事実、独立行政法人 国民生活センターによりますと、通販による補聴器販売に対する消費者からの相談件数が、補聴器全体の件数の35%を占めること、通販で売られていた補聴器や集音器の機能を調査したところ、機能的に問題のある銘柄がいくつかあったとのことです。

たとえ安くても使えないのでは何ともなりません。通販の補聴器は、例外なくお勧めできものではありません。

参考サイト:通信販売の補聴器等の安全性や補聴効果-販売サービスに関する調査も含めて-
Nagoya × Rionet Hearing Aid 補聴器選びはお店選び
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by jibikai | 2010-12-06 23:09 | 補聴器 | Comments(13)
鼻すすりは止めましょう
耳がつまる感じ、耳に膜が張ったような感じなど、耳閉感(じへいかん)という症状を訴える方は多いのですが、原因は様々。滲出性中耳炎や急性低音障害型感音難聴(いわゆるストレス難聴)が主なものですが、意外と知られていないのは、鼻すすりが耳閉感を引き起こしているということです。

鼻をよくすする方の鼓膜を見ますと、鼓膜が薄くなったり、張りがなくなる(弾力が低下している)ことがあります。また、鼻すすりにより鼓室の空気が上咽頭の方に引っ張られますので、鼓膜は凹んだ状態になってしまい、なかなか元に戻らなくなります。

鼓膜が薄くなったり、弾力を失ったり、凹んだりすると、音が鼓膜に当たってエネルギーを耳小骨に伝達しようにも効率が悪くなってしまい、その結果伝音難聴を生じて、耳がつまった感じになるのです。

ところで、鼻すすりってどういう時にするのでしょうか。一つ目は生理的、あるいは正常な鼻をすする場面ですけども、臭いを嗅ごうとする時です。
二つ目は鼻の奥にたまった鼻汁を除去、咽に吸い込んで飲み込もうとする時です。これはちょっと汚いですが、呼吸を楽にしようとすることなので、正常な行為とも云えます。しかし鼻汁には咽の炎症を引き起こす物質も含まれますので、鼻はすすらず飲み込まず、かんだ方がいいでしょう。
三つ目は癖になっている場合です。特に、耳管開放症では、耳管が開いていると自分の声が耳管を通じて耳に響いたり、呼吸音が聞こえたりして不愉快ですから、自分で耳管を閉じることを覚えてくるのです。鼻をすすることによって、鼓室の空気は咽頭の側に引っ張られて、鼓室は陰圧になります。そうすると耳管は、虚脱してぺちゃんこになりますから、ますます鼓室内の陰圧が取れななくなって容易には元に戻らなくなります。

さて、鼻すすりによって耳の不調のある方への治療ですけれども、まずは鼻すすりを止めて貰うことなんですが、これがなかなか厄介です。まず、自覚のない方がほとんど。いわれて初めて「ああ。」と気付いてくれるんですけれども、「鼻すすりは止めて下さいね。」と念を押しても、「わかりました。  ズズ〜。」っと直ぐ無意識にやってしまう方も多いのです。もちろん、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など、慢性的に鼻づまりや鼻汁の症状を起こす病気があればそれを治療します。耳管開放症の方の場合は、まずは漢方の内服、それから生理食塩水の点鼻などが有効のこともあります。
原因が何にせよ、鼻づまりから生じた鼓膜の異常というのは、ひどくなりますと癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎など、なかなか厄介な中耳炎を引き起こしますから、鼓膜の凹みがひどければチュービングが必要になることもあります。

今回は無意識でついついやってしまう鼻づまりが、耳の不調の原因となることをお話ししてみました。

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by jibikai | 2010-09-28 17:34 | 耳のはなし | Comments(6)
アンチエイジングについて考えてみる(その7)
さて、しばらく耳のアンチエイジングをテーマにいろいろと考えてきましたが、ここまでのところをまとめてみます。
まず第一に加齢とともに難聴が起こる場合、その原因は内耳の障害が最も多いということ。内耳のどの部分が障害を受けるかにより、「感覚細胞型」、「蝸牛ニューロン障害型」、「血管条萎縮型」、「蝸牛伝音障害型」、「混合型」に分けられます。じゃあなぜ年をとるとこういった障害が起こるのかというと、活性酸素・フリーラジカルというものが外から入ってきたり、身体で作られたりして、細胞にダメージを与えた結果である部分が多いのです。

しかし、内耳にダメージを与える要因というのは何も活性酸素・フリーラジカルばかりではないようです。例えば騒音。急激に起こる強大な音による内耳障害は、音響外傷として、難聴や耳鳴として自覚されますけれども、それよりも低いレベルながらも恒常的に騒音に晒されますと、やはり蝸牛の感覚細胞、すなわち有毛細胞はダメージを受けます。これが積もり積もって、あまり自覚症状の強くない難聴を引き起こすわけです。その証拠に、例えば騒音のないと思われる未開の地に住む人は、文明社会に暮らす人に較べて聞こえがよいというデータもあります。
その他には、薬剤や化学物質、動脈硬化による血流の障害などもまた、内耳へジワジワとダメージを与えているものと思われます。

また前回もお話ししましたとおり、加齢による聴覚障害は、内耳の働きが悪くなるばかりではありません。後迷路障害(こうめいろしょうがい)といって脳の聴覚伝導路全体の機能低下も進んできます。脳では音を解析して言葉として意味づけ、理解をしていますので、後迷路障害では言葉の聞き取りが悪くなります。後迷路障害が起こる原因としても、活性酸素・フリーラジカルの関与もあるでしょうし、動脈硬化による脳循環不全なども関係しているでしょう。また、さらには最初に起こる内耳障害により、脳への音の入力が少なくなりますから、脳はその分仕事をさぼりがちになります。廃用性変化といいますが、要するに言葉の聞き取りと理解を出来るのにしなくなる状態です。

これで、加齢によって難聴が起こる仕組みがおおよそ理解できたかと思います。あとは、それをいかにして防いでいくのか、それがアンチエイジングです。

まずは活性酸素の発生を抑えることですが、聴覚への影響を実験的に確かめた研究というのはさほど多くないとのことです。

まず、カロリー制限。これはカロリー制限したマウスの方が、ABRという脳波を使った聴力検査では、高齢となっても聴力が落ちなかったとのこと。

それから、よく感音難聴で使われるビタミンB12ですが、これについては難聴者の場合は低い値を示したとのこと。(よって、補うことにより難聴の進行を抑える可能性がある)

それから、女性の場合は性ホルモンとの関連がいわれており、エストロゲンは聴力の低下を予防し、逆にプロゲスチンは難聴を進行させるといわれています。

もちろんここに書いたような聴力のアンチエイジング効果以外にも、寿命を延ばすという効果については、さらに色々な実験、研究が行われています。理論的には抗酸化剤が効果的なはずですが、残念ながら、現在のところ明らかに効果のある薬、あるいは食品などは見つかっていないのが現状です。

それにもかかわらずドラッグストアなどに行けば、いろんなサプリメントが売られてはいます。健康食品として売られているわけですが、買う方としては単なる栄養補給としてよりも、なにかしらのアンチエイジング効果を期待して購入するものも多いことでしょう。しかしながら、それらサプリメントが聞こえあるいは身体の老化に効果があるという保証は何もないということを憶えておくべきでしょう。

次に動脈硬化予防ですが、これはアンチエイジングに有効と思われます。食生活の見直しも当然必要ですが、運動も必要です。まずは有酸素運動。具体的には「少々きつい」と思う程度の運動を1週間で60分間行うのが有効だそうです。ただし、やり過ぎは禁物。過度の運動負荷は活性酸素を増やしますから、かえって老化を推進する結果となることもあります。

また、騒音を極力聞かない様にするということは重要です。もし騒音のある職場で働かざるを得ないのであれば、耳栓をすべきであるし、例え音楽であっても大音量でのコンサート、携帯型プレーヤーの長時間の使用などは避けるべきと考えます。

最後にもう一つ。加齢による難聴はおそらく内耳に最初に始まり、後迷路障害を起こすのはその後です。ですから、内耳障害が出てきて聞こえにくくなったら、補聴器を付けるのが、おそらくその後に起こってくる後迷路障害をある程度防ぐ効果があると思います。耳から出来るだけ情報を入れていって、脳の廃用性変化を防ぐという考え方です。中等度の難聴の方でも、補聴器を勧めても「俺にはまだ早い。」、「もうすこし様子を見てから。」という方があります。しかし、加齢による難聴であれば、徐々に進行して、いくら様子を見ても自然治癒は残念ながらあり得ないわけでして、そうであれば、いたずらに時間稼ぎすることなく、自分ではまだ要らないと思っていても、早めに補聴器を付ける方が良いケースも多いのです。
補聴器の着用ということは、一見治療を放棄して難聴であることを認めるということにも思われ、敬遠する方が多いのも心情的には理解できます。しかし、難聴によるコミュニケーション障害をそのまま放置することは、身体や脳の活動の機会を少なくします。そこで、そういった弊害を防ぐために補聴器を付けるということもまた、一つのアンチエイジングと考えてもいいと思うのです。

アンチエイジングというとなにやら夢の技術、という風に思われがちなのですが、残念ながらそれを実現する特効薬というようなものはありません。普段からのセルフケアと、一見後ろ向きに見える、補聴器着用ということも重要であるということを強調して、しばらく続けたアンチエイジングの項を終えたいと思います。

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by jibikai | 2010-09-03 18:18 | 耳のはなし | Comments(10)
アンチエイジングについて考えてみる(その6)
さて、加齢による難聴の話ですけれども、それを防ぐことは出来るのか、という話の前にもうひとつお話しすることがあります。それは後迷路性難聴(こうめいろせいなんちょう)について。

加齢による難聴というのは、単に内耳だけの問題ではなく、後迷路性難聴というものを合併してきます。それは脳の中の聴覚伝導路の働きが悪くなって起こります。
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脳内の聴覚伝導路ですが、音によって生じた情報は、まず内耳から蝸牛神経という神経が内耳道という管を通って頭の中に入っていきます。蝸牛神経は延髄にある蝸牛神経核へとつながっていきます。そこからさらに脳幹にあるいくつかの中継核を通って、最後は大脳へと情報が伝わっていくのです。脳の中では音を言葉として聞き分けたり、音の聞こえてくる方向を感知したり、雑音の中から目的とする音のみを聞き分けたりといった複雑なことをしています。
加齢による難聴の場合は、脳幹から大脳に至るまでほぼ一様のレベルで(つまり一部だけ極端に悪くなるわけでなくて)働きが低下します。

ということで、加齢による難聴では、「言葉の聞き取りが悪くなる。」、「音の方向感が悪くなる。」、「早口が理解できなくなる。」、「雑音の中で人の話が聞き取りにくい。」ということが同時進行的に起こってくるわけです。同じ感音難聴でも後迷路性難聴を合併した場合は、内耳性難聴ののみよりも、いろいろと不都合なことが起こってくると言えると思います。

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by jibikai | 2010-08-26 08:10 | 耳のはなし | Comments(2)
アンチエイジングについて考えてみる(その5)
さて、耳のアンチエイジングについて考えていますが、今回はなぜ、年を取ると聞こえなくなるのかということについて考えてみたいと思います。
聴覚というのは外耳、中耳、内耳、それから脳の働きに司られていますが、加齢によって聞こえが悪くなるというのは、一番には内耳の働きが悪くなることが大きく関係しています。

そこで、まずは内耳の働きについてちょっとおさらい。
e0084756_0151419.gif

内耳の働きは、中耳から伝わってきた音の振動エネルギーを電気的な信号に変更することにあります。どのようにして機械的なエネルギーを電気的な信号に変換するのか、その秘密は内耳の構造にあります。
上の図のカタツムリのような格好の部分が蝸牛で、聴覚を担当する部分です。まず、ここに耳小骨から音の振動が伝わってきます。
e0084756_22124728.gif

蝸牛の断面をみますと管になっておりまして、さらに外リンパの入っている鼓室階と前庭階、それから内リンパの入っている中央階とに分かれます。内リンパと外リンパは通常混じり合わないように仕切りされています。

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中央階と鼓室階を分けているのが基底板で、その上にコルチ器が乗っかっています。コルチ器というのは基底板を伝わってきた音の振動のエネルギーを神経の興奮に変換する、いわば一つのユニットです。
このユニットを構成する中で一番重要なのは、内有毛細胞と外有毛細胞でしょう。ここで初めて、物理的な音のエネルギーが、電気的なエネルギーに変換されるからです。
次に求心性神経。発生した電気的なエネルギーを脳へと伝える役割を担っています。
それから、血管条。ここはいわば発電のための動力を作るところです。

さて、前々回のエントリーでお話ししましたとおり、内耳の加齢による変化は、細かく言うと
1)感覚細胞障害型
2)蝸牛ニューロン障害型
3)血管条萎縮型
4)蝸牛伝音障害型
とそれらの、混合型があります。
これらについて、蝸牛の構造と照らし合わせながら、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

1)感覚細胞障害型というのは、内、外の有毛細胞の障害です。加齢による内耳障害では高音から聞こえが悪くなるのですが、実際蝸牛の中でも高音を担当する部分、すなわち渦巻きの外側よりの方の内外有毛細胞が消失していくのだそうです。これは6000〜8000Hzまでの部分の障害ですが、さらには騒音性難聴を合併してもう少し下の4000Hzまで障害されることも多いです。

2)蝸牛ニューロン障害型では、音が聞こえないという難聴よりも先に、言葉が聞き取りにくいという症状が起こってきます。これは、ニューロンの本数が少なくなることにより、脳内の聴覚伝導路もまた衰えるからだと考えられます。

3)血管条は、内リンパと外リンパの間でイオンの濃度に差が付くように働いています。このイオンの濃度差を利用して、特に外有毛細胞は音のエネルギーを増幅する仕事をしていますから、血管条がうまく働かなくなると、外有毛細胞の活動が低下して難聴になるのです。

4)蝸牛伝音障害型ですが、アブミ骨から外リンパへと伝わった音の振動が、うまく伝わらなくなることによるものです。具体的には基底板が振動しにくくなるためと考えられます。

5)混合型老人性難聴:上の1)から4)までの病態のいくつか、あるいはすべてが同時進行的に起こっているもの。実は加齢による内耳障害という場合は、コルチ器を構成するある一つのパーツのトラブルというよりも、複数の部位でのトラブル、すなわちこの混合型が最も多いと考えられます。

これらの内耳の変化がなぜ起こるのか、いまだに不明な点も多いのですが、加齢によるものの場合には、やはり活性酸素による細胞障害が大きく影響すると考えられます。
ということで、次回は活性酸素・フリーラジカルの産生を抑制すれば、加齢による内耳障害を防げるのか、ということについてお話ししたいと思います。

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by jibikai | 2010-08-12 18:19 | 耳のはなし | Comments(0)
アンチエイジングについて考えてみる(その4)
さて、ここからは耳、特に聴覚の老化とそれは防げるのかという話です。
まず、聴覚の老化現象といえば、老人性難聴という言葉を思い浮かべるのではないでしょうか。これは50歳代ぐらいから徐々に、特に2000 Hz以上の高音から聞こえにくくなるもので,高い音になればなるほど顕著です。聴力検査で測定する周波数の中では、一番高い8,000Hzがもっとも早く下がりますし、下がり初めてからの進行も早いです。さらに高い音、いわゆるモスキート音が聞こえなくなるのがもっと若くて30代ぐらいからですから、まったく自覚がなくてもその頃から既に聴覚の老化は始まっていると考えられます。

年齢とともに聞こえが悪くなる原因としては、内耳の加齢現象が最も強く影響しています。内耳以外では,脳の中の聴覚伝導路の老化が関係していて、外耳や中耳の影響は余りありません。

内耳の加齢による変化は、細かく言うと
1)感覚細胞障害型
2)蝸牛ニューロン障害型
3)血管条萎縮型
4)蝸牛伝音障害型

とそれらの、混合型があります。

それぞれの型の詳細については、また次回にお話ししたいと思います。

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by jibikai | 2010-07-24 00:51 | 耳のはなし | Comments(0)