味を感じる仕組み
2010年 05月 05日
上の図中 左は舌の全体像です。味を感じる仕組みの一番大きな単位として、舌乳頭(ぜつにゅうとう)という突出した部分があります。舌乳頭はその形より,有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)、葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)、茸状乳頭(じじょうにゅうとう)に分けられます。有郭乳頭は舌の後方、葉状乳頭は左右の端、茸状乳頭は舌の先に最も多く、舌の上面にも少数存在します。有郭乳頭は7〜15個、茸状乳頭は1,500個ぐらいあります。
舌乳頭の次のまとまった単位としては、味蕾(みらい)というものがあります。断面はタマネギを縦にスライスしたような形です。舌乳頭には味蕾が多数分布しており、一つの舌乳頭あたりで味蕾の数が最も多いのが有郭乳頭で、次に葉状乳頭、最も少ないのが茸状乳頭です。舌全体で各種の舌乳頭にある味蕾の数の割合としては、葉状乳頭にあるのが最も多くて40〜50%ほど、有郭乳頭に30〜40%、茸状乳頭に10〜20%です。
味に対する敏感さというのはこの味蕾の数でおおよそ決まると言っていいので、味というのは舌の中心部で感じているように感じることが多いと思いますが、意外や意外、舌の後方が最も大きくて、次に舌の両端,次いで舌の先端部であって、中心部が最も鈍感ということになります。
味の基本的な要素としては、甘味、塩味、酸味、苦味ということが以前から知られていまして、それらについては、以前言われていた基本味による鋭敏な部位の差異というのはほとんどないということは先日、「都市伝説」の記事でお話ししたとおりです。ただ、最後に発見された味の要素である「うまみ」については、感じる部位がかなりはっきりしており、舌の側面と舌の根本に多いとのことです。
最後に、味を感じる仕組みの最小単位について。これは味細胞(図中右側)というもので,先端には突起の様なものがありまして、ここだけが口の中に面して唾液や味物質に接します。味物質が突起の受容膜に結合しますと、細胞の膜電位が変化してカルシウムチャンネルが開きます。ここからカルシウムが細胞内に流れ込んで,その刺激により味細胞は神経伝達物質であるノルエピネフリンを放出して、これにより味神経が興奮するというメカニズムになっています。
味覚に関する知見というのは、近年いろいろと更新されているようで、この記事を書くに当たってはいくつかの書籍を読んで勉強し直しております。このブログは一般の方にも医学、特に耳鼻科に興味や知識を持っていただきたいと思って運営していますが、不正確なことはかけませんので、自分でももう一度学んでまとめ直すという点では、自分のためにもなっていると改めて感じました。
ちょっとマニアックな記事になってしまいましたが、何かの参考になればうれしいです。
ここから先、脳でいかに味を感じているかと言うことについても、いずれ書きたいと思いますが、それにはもう少し時間をいただきたいと思います。
=============================
ブログランキングに参加しています!
宜しければご協力を!
(アイコンをクリックするとランキングのページにジャンプします。
そしてなんと!耳鼻科医に10ポイントが入ります!!)
=============================
当方から解説をお願いしておきながら、記事を拝読するのが遅くなり、申し訳ございません。
本当にわかりやすい解説でした。
実は私は「イソバイド」を愛しているのですが、あの味に苦しんでいる方も多いと聞きます。味覚の研究が進んで、飲みやすいお薬が開発されるといいな、と思います。