内耳の働きから、代謝異常による難聴まで
2010年 05月 24日

内耳の働きは、中耳から伝わってきた音の振動エネルギーを電気的な信号に変更することにあります。どのようにして機械的なエネルギーを電気的な信号に変換するのか、その秘密は内耳の構造にあります。
内耳は二重の管腔構造になっております。(管のなかにまた別の管がある)外側の管を骨迷路(こつめいろ)、内側の管を膜迷路(まくめいろ)といい、それぞれの内容液を外リンパ、内リンパと言います。骨迷路は膜迷路によって2段に分けられて、それぞれを鼓室階、前庭階といいます。

さらに蝸牛の断面を拡大します。

基底板にはコルチ器(ラセン器)という構造が乗っかっており、ここがリンパ液を伝わってきた音の振動を、神経の興奮に変換するシステムです。コルチ器には内有毛細胞と外有毛細胞があり、そこに神経の末端が接続するという構造になっています。

鼓室階を伝わってきたリンパ液の振動はまず基底板を揺らします。基底板の振動によって聴毛の角度が変化して、内リンパ液に多く含まれるカリウムイオン(K+)は、内および外有毛細胞内に流入します。

それでは、有毛細胞内に移動したカリウムイオンはその後どうなるのでしょうか。カリウムイオンはいつまでも有毛細胞内にとどまるのではなくて、いったん外リンパに移動して、そこから中央階の外側壁にある血管条を通って、再び内リンパに戻され、再利用されるのです。しかし、外リンパから内リンパへ移動するのにはエネルギーが必要で、そのエネルギーを産生しているのが血管条というわけです。
血管条はそのエネルギーを作るために、豊富な血流を必要としますから、この血流の阻害される病態、例えば糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などで内耳障害を起こして難聴を生じる可能性は充分に高いと思われます。加齢に伴いこれらの疾患の有病率は高くなりますから、いわゆる老人性難聴の一部には糖尿病、高血圧、脂質代謝異常による血管条の微小循環障害による難聴も含まれているものと思われます。
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なお、内耳の働きについて、動画でも解説していますので参考にして下さい。