アンチエイジングについて考えてみる(その7)
2010年 09月 03日
まず第一に加齢とともに難聴が起こる場合、その原因は内耳の障害が最も多いということ。内耳のどの部分が障害を受けるかにより、「感覚細胞型」、「蝸牛ニューロン障害型」、「血管条萎縮型」、「蝸牛伝音障害型」、「混合型」に分けられます。じゃあなぜ年をとるとこういった障害が起こるのかというと、活性酸素・フリーラジカルというものが外から入ってきたり、身体で作られたりして、細胞にダメージを与えた結果である部分が多いのです。
しかし、内耳にダメージを与える要因というのは何も活性酸素・フリーラジカルばかりではないようです。例えば騒音。急激に起こる強大な音による内耳障害は、音響外傷として、難聴や耳鳴として自覚されますけれども、それよりも低いレベルながらも恒常的に騒音に晒されますと、やはり蝸牛の感覚細胞、すなわち有毛細胞はダメージを受けます。これが積もり積もって、あまり自覚症状の強くない難聴を引き起こすわけです。その証拠に、例えば騒音のないと思われる未開の地に住む人は、文明社会に暮らす人に較べて聞こえがよいというデータもあります。
その他には、薬剤や化学物質、動脈硬化による血流の障害などもまた、内耳へジワジワとダメージを与えているものと思われます。
また前回もお話ししましたとおり、加齢による聴覚障害は、内耳の働きが悪くなるばかりではありません。後迷路障害(こうめいろしょうがい)といって脳の聴覚伝導路全体の機能低下も進んできます。脳では音を解析して言葉として意味づけ、理解をしていますので、後迷路障害では言葉の聞き取りが悪くなります。後迷路障害が起こる原因としても、活性酸素・フリーラジカルの関与もあるでしょうし、動脈硬化による脳循環不全なども関係しているでしょう。また、さらには最初に起こる内耳障害により、脳への音の入力が少なくなりますから、脳はその分仕事をさぼりがちになります。廃用性変化といいますが、要するに言葉の聞き取りと理解を出来るのにしなくなる状態です。
これで、加齢によって難聴が起こる仕組みがおおよそ理解できたかと思います。あとは、それをいかにして防いでいくのか、それがアンチエイジングです。
まずは活性酸素の発生を抑えることですが、聴覚への影響を実験的に確かめた研究というのはさほど多くないとのことです。
まず、カロリー制限。これはカロリー制限したマウスの方が、ABRという脳波を使った聴力検査では、高齢となっても聴力が落ちなかったとのこと。
それから、よく感音難聴で使われるビタミンB12ですが、これについては難聴者の場合は低い値を示したとのこと。(よって、補うことにより難聴の進行を抑える可能性がある)
それから、女性の場合は性ホルモンとの関連がいわれており、エストロゲンは聴力の低下を予防し、逆にプロゲスチンは難聴を進行させるといわれています。
もちろんここに書いたような聴力のアンチエイジング効果以外にも、寿命を延ばすという効果については、さらに色々な実験、研究が行われています。理論的には抗酸化剤が効果的なはずですが、残念ながら、現在のところ明らかに効果のある薬、あるいは食品などは見つかっていないのが現状です。
それにもかかわらずドラッグストアなどに行けば、いろんなサプリメントが売られてはいます。健康食品として売られているわけですが、買う方としては単なる栄養補給としてよりも、なにかしらのアンチエイジング効果を期待して購入するものも多いことでしょう。しかしながら、それらサプリメントが聞こえあるいは身体の老化に効果があるという保証は何もないということを憶えておくべきでしょう。
次に動脈硬化予防ですが、これはアンチエイジングに有効と思われます。食生活の見直しも当然必要ですが、運動も必要です。まずは有酸素運動。具体的には「少々きつい」と思う程度の運動を1週間で60分間行うのが有効だそうです。ただし、やり過ぎは禁物。過度の運動負荷は活性酸素を増やしますから、かえって老化を推進する結果となることもあります。
また、騒音を極力聞かない様にするということは重要です。もし騒音のある職場で働かざるを得ないのであれば、耳栓をすべきであるし、例え音楽であっても大音量でのコンサート、携帯型プレーヤーの長時間の使用などは避けるべきと考えます。
最後にもう一つ。加齢による難聴はおそらく内耳に最初に始まり、後迷路障害を起こすのはその後です。ですから、内耳障害が出てきて聞こえにくくなったら、補聴器を付けるのが、おそらくその後に起こってくる後迷路障害をある程度防ぐ効果があると思います。耳から出来るだけ情報を入れていって、脳の廃用性変化を防ぐという考え方です。中等度の難聴の方でも、補聴器を勧めても「俺にはまだ早い。」、「もうすこし様子を見てから。」という方があります。しかし、加齢による難聴であれば、徐々に進行して、いくら様子を見ても自然治癒は残念ながらあり得ないわけでして、そうであれば、いたずらに時間稼ぎすることなく、自分ではまだ要らないと思っていても、早めに補聴器を付ける方が良いケースも多いのです。
補聴器の着用ということは、一見治療を放棄して難聴であることを認めるということにも思われ、敬遠する方が多いのも心情的には理解できます。しかし、難聴によるコミュニケーション障害をそのまま放置することは、身体や脳の活動の機会を少なくします。そこで、そういった弊害を防ぐために補聴器を付けるということもまた、一つのアンチエイジングと考えてもいいと思うのです。
アンチエイジングというとなにやら夢の技術、という風に思われがちなのですが、残念ながらそれを実現する特効薬というようなものはありません。普段からのセルフケアと、一見後ろ向きに見える、補聴器着用ということも重要であるということを強調して、しばらく続けたアンチエイジングの項を終えたいと思います。
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「アンチエイジングについて」シリーズ、大変勉強になりました。
「メガネをかける」ということも、一昔、二昔前と今では、感じ方に雲泥の差があります。
補聴器についても、そのような意識の変革が生まれればいいですね。
「アンチエイジングについて」ちょっと取っつきにくいないようだったかも知れませんが、参考になれば幸いです。老いはは誰にでも訪れる現象ですから、本来身近な話題なんですが、突き詰めていくと難しいですね。
補聴器については現在勉強中です。聞こえの問題は全部が全部、治療で良くなるものではないので、補聴器についても徐々に解説していかなくてはと思ってます。


特に、運動をやり過ぎるとかえって老化の原因をなるのは、目から鱗です。なんでもやりすぎはいけませんね!
多くの方にお伝えしたい内容です。

補聴器は聞こえる方の耳の平均聴力レベルが50dB以上なら、付けた方が
いいとはいわれています。“目立つ補聴器”、実際最近はそういう流れもあります。
それから大事なのは、やはり装着してからしばらく付けてみないと、言葉の聞き取りは
良くなってこないということでしょうね。最初であきらめないよう、説明する必要が
あると思いました。
補聴器装用が一つのアンチエイジング対策となるためにも聴力測定結果に基づいた音作りを行い、快適で良い聞こえを提供しなければなりません。
医療・補聴器、それぞれの専門が上手く連携することが結果、アンチエイジング対策に結びつくでしょうか。大変勉強になりました。
ありがとうございました。
アンチエイジングに関するブログや記事を探していたところ辿り着きました。
アンチエイジングというと、美容や整形、要するに外見だけのことかと誤解してたことに気付きました。
色々な意味でとても考えさせられる内容でした。
また寄らせて頂くかもしれませんがよろしくお願いします。応援ポチさせていただきます♪
そうですね。私も、最近までアンチエイジングというと見た目だけの
問題かと思っていましたが、例えば体の機能とか、そういったことにも
目を向けて、いつまでも若々しく生きることなんだと思うようになり
もう少し理解を深めようと、勉強してみました。