風邪と抗生剤
2010年 09月 20日
風邪の治療に抗生剤を使うのは適切かどうかということは、医者によっても議論の分かれるところです。そもそも風邪というのは、ほとんどがウイルスが原因です。ウイルスには抗生剤が効きませんから、ウイルス性と分かればまず抗生剤は不要です。問題はウイルス性か細菌性か診断できるのかということと、もし細菌性だった場合抗生剤を使うのか、それとも自然治癒力に委ねるのかということになりましょう。
さらに、もう一つ。最近も問題になっている耐性菌の問題。これについては、個人個人の風邪が治るかどうかということよりも、集団、あるいは社会としての免疫が重要となってきます。
まずは個人レベルの話として、発熱、鼻汁、鼻づまり、咽の痛み、咳、痰といった風邪症状があった場合、抗生剤を使うかどうかです。これらの症状だけではまず最初は抗生剤を使わずに、対症療法すなわち解熱剤、咳止め、去痰剤、抗ヒスタミン剤などと、安静などで様子をみることが多いかと思います。ただし、最初から急性副鼻腔炎、急性中耳炎、急性気管支炎、急性扁桃炎などのひどいケースは抗生剤を使うべきと考えます。

ただし、抗生剤の使用は耐性菌を生む危険性があります。抗生剤を使うことによって耐性菌が出てくるのは次のような仕組みです。まず、抗生剤を使って血中濃度が上がって、耐性のない普通の病原菌は死にます。この濃度がMICです。これで、菌が全滅すればよいのですが、生き残るのがいます。それが耐性菌。耐性菌は、非耐性菌が死んだ状態ではライバルがいなくなるので、むしろ中途半端な抗生剤の量では生育しやすくなります。そこで、特に濃度によって抗菌剤の効果が強まる抗菌剤の場合は、MPCつまり耐性菌を制御できる濃度まで上げるだけの高容量にすることが、耐性菌の発現を予防するのに有効ということになります。(図)
個人レベルの話であれば、身体に侵入して増殖してしまった病原菌をある程度減らしてしまえば、あとは治っていくのですが、生き残った菌が体外に出ていって、他の人にうつった場合、もしその相手の免疫力が低下していれば、命取りとなることもあるわけです。ですから集団レベルの免疫という話になると、一旦抗生剤を使った以上は、しっかりと耐性菌まで殺すことを考えなくてはいけないということになるのです。
ということで風邪の治療としては、中耳炎や気管支炎などの合併症がなければ、抗生剤は使わず対症療法主体、合併症が生じたら抗生剤の必要なケースも多くなりますが、その場合はしっかりと菌を叩かなければ耐性菌が生じやすく、中途半端な抗生剤の使い方にならないよう気を付けることが大事ということになります。
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さらに、もう一つ。最近も問題になっている耐性菌の問題。これについては、個人個人の風邪が治るかどうかということよりも、集団、あるいは社会としての免疫が重要となってきます。
まずは個人レベルの話として、発熱、鼻汁、鼻づまり、咽の痛み、咳、痰といった風邪症状があった場合、抗生剤を使うかどうかです。これらの症状だけではまず最初は抗生剤を使わずに、対症療法すなわち解熱剤、咳止め、去痰剤、抗ヒスタミン剤などと、安静などで様子をみることが多いかと思います。ただし、最初から急性副鼻腔炎、急性中耳炎、急性気管支炎、急性扁桃炎などのひどいケースは抗生剤を使うべきと考えます。

ただし、抗生剤の使用は耐性菌を生む危険性があります。抗生剤を使うことによって耐性菌が出てくるのは次のような仕組みです。まず、抗生剤を使って血中濃度が上がって、耐性のない普通の病原菌は死にます。この濃度がMICです。これで、菌が全滅すればよいのですが、生き残るのがいます。それが耐性菌。耐性菌は、非耐性菌が死んだ状態ではライバルがいなくなるので、むしろ中途半端な抗生剤の量では生育しやすくなります。そこで、特に濃度によって抗菌剤の効果が強まる抗菌剤の場合は、MPCつまり耐性菌を制御できる濃度まで上げるだけの高容量にすることが、耐性菌の発現を予防するのに有効ということになります。(図)
個人レベルの話であれば、身体に侵入して増殖してしまった病原菌をある程度減らしてしまえば、あとは治っていくのですが、生き残った菌が体外に出ていって、他の人にうつった場合、もしその相手の免疫力が低下していれば、命取りとなることもあるわけです。ですから集団レベルの免疫という話になると、一旦抗生剤を使った以上は、しっかりと耐性菌まで殺すことを考えなくてはいけないということになるのです。
ということで風邪の治療としては、中耳炎や気管支炎などの合併症がなければ、抗生剤は使わず対症療法主体、合併症が生じたら抗生剤の必要なケースも多くなりますが、その場合はしっかりと菌を叩かなければ耐性菌が生じやすく、中途半端な抗生剤の使い方にならないよう気を付けることが大事ということになります。
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初めまして。いつも参考にさせていただいてます。
今回のお話、とてもわかりやすく読ませていただきました。
私の場合ですが、よほどの高熱がない限り、風邪で病院に行くことはなく、自然治癒ですが、
子供たちは比較的早く連れて行ってます。すると抗生剤が出されます。
中耳炎や肺炎予防ということだと思うのですが、苦くて飲み切れなかったりで困っています。
溶連菌とか後々怖いものはなんとしても飲ませないといけないですが、
プール熱や風邪の高熱でも出されるので、本当に飲まないといけないのかいつも疑問に思います。
ちょっとお聞きしたいのですが、普通のウイルス性の風邪などは自然に治るということですが、
細菌性のものは自然治癒することはないのでしょうか?
やはり抗生剤を必ず使わないといけないのでしょうか?
また教えていただけると嬉しいです。
今回のお話、とてもわかりやすく読ませていただきました。
私の場合ですが、よほどの高熱がない限り、風邪で病院に行くことはなく、自然治癒ですが、
子供たちは比較的早く連れて行ってます。すると抗生剤が出されます。
中耳炎や肺炎予防ということだと思うのですが、苦くて飲み切れなかったりで困っています。
溶連菌とか後々怖いものはなんとしても飲ませないといけないですが、
プール熱や風邪の高熱でも出されるので、本当に飲まないといけないのかいつも疑問に思います。
ちょっとお聞きしたいのですが、普通のウイルス性の風邪などは自然に治るということですが、
細菌性のものは自然治癒することはないのでしょうか?
やはり抗生剤を必ず使わないといけないのでしょうか?
また教えていただけると嬉しいです。
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もちろん、細菌感染でも自然治癒はありますよ。ただし、こじらせる前に
細菌を叩いた方がいいと思われる場合には抗生剤を使います。
それから、特に一〜二歳のお子様で、保育所などで集団保育を受けている
子の場合は、とくに中耳炎がひどくなりやすいので、抗生剤を使わざる
をえないケースも多くなります。
細菌を叩いた方がいいと思われる場合には抗生剤を使います。
それから、特に一〜二歳のお子様で、保育所などで集団保育を受けている
子の場合は、とくに中耳炎がひどくなりやすいので、抗生剤を使わざる
をえないケースも多くなります。

こんにちは。いつも勉強させていただいております。
私は、ピロリ菌の除菌に2回挑戦したのですが、耐性菌だったようで、除菌できませんでした。
消化器外科のお医者さんから「除菌剤を2回使っても、除菌できない人がいるのは事実。ただ、本当にそういう人を診たのは、僕はこれが初めてなので、なんかショックだ」と言われました。
その時初めて「耐性菌ってなんだろう? どういう仕組みでできるの?」と思ったものでした。
今日は耳鼻科の先生のところへ行きました。いつも陽気な先生なので、話すと気分が明るくなります。
私は、ピロリ菌の除菌に2回挑戦したのですが、耐性菌だったようで、除菌できませんでした。
消化器外科のお医者さんから「除菌剤を2回使っても、除菌できない人がいるのは事実。ただ、本当にそういう人を診たのは、僕はこれが初めてなので、なんかショックだ」と言われました。
その時初めて「耐性菌ってなんだろう? どういう仕組みでできるの?」と思ったものでした。
今日は耳鼻科の先生のところへ行きました。いつも陽気な先生なので、話すと気分が明るくなります。
by jibikai
| 2010-09-20 23:19
| 耳鼻科全般
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Comments(4)