語音聴力検査
2010年 12月 13日
聴覚検査としましては、純音聴力検査が最も重要でよく行われるのですが、語音聴力検査も情報量が多い重要な検査です。
語音聴力検査とは言葉の聞き取りやすさを調べる検査です。検査音には「ア」、「キ」などの“語音”を用います。純音聴力検査と同じ防音室で、オージオメータを使って行います。オージオメータには語音の録音されたテープレコーダやCDプレーヤが接続されていて、ヘッドホンから流れる語音を聞いてその通りに発音するか、紙に書いていただきます。そして、左右各々、音の大きさを変えながら正答率を調べます。もっとも大事な指標は最大語音明瞭度です。
音自体の聞こえの程度というのは、純音聴力検査で分かるわけですが、さらに語音聴力検査も追加して行う意義としては、「難聴の原因となっている障害部位の推定」、「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」、「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」などがあります。
以下、それぞれについて説明したいと思いす。
まず「難聴の原因となっている障害部位の推定」ですが、聴力正常な場合や伝音難聴では、ある程度音を大きくすると語音は100%近くまで間違わずに聞き取ることが出来ます。それに対して感音難聴では、いくら音を大きくしても最大語音明瞭度が上がらなくなります。聞き取りやすい音の大きさの範囲が狭くなって、それ以上音の大きさを大きくすると、むしろ言葉の聞き取りが悪くなってしまうのです。
また、ごくまれに見られる後迷路性難聴では、純音聴力検査の結果に対して語音の聞き取りが極端に悪くなります。これは、内耳までは正常でも脳の中の聴覚伝導路のどこかが障害されているために起こる現象です。
次に「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」ですが、通常は純音聴力検査の閾値(ぎりぎり聞こえる音の大きさ)よりも40dB前後大きな音で最大語音明瞭度が得られます。ところが純音聴力検査が上手くできていない場合や、心因性難聴あるいは機能性難聴といわれる難聴の場合は、逆に語音聴力検査の結果の方が良好な結果を示すことがあります。ですから、明らかに会話可能なのにもかかわらず、純音聴力検査で高度な難聴を示す場合などには、さらに語音聴力検査も追加して行います。
最後の「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」です。補聴器を装着する最も大きな目的は、人の話を聞き取ると言うことです。ですから、いくら音が大きく聞こえても語音の聴取がうまくいかなければ補聴器はあまり役に立たないと言うことになります。目安として最大語音明瞭度が50%以下ですと補聴器を付けても満足な結果が得られないことが多いようです。ですから語音聴力検査によって予めどの程度補聴器が役に立つのかということも判りますし、片側だけに補聴器を付ける場合にはどちらの耳に付けた方がいいかの指標ともなるのです。
また補聴器を付けてある程度慣れた頃に、補聴器の効果判定というのを補聴器販売店や耳鼻科の補聴器外来では行いますが、その際にも語音聴力検査は必須となるのです。
今回は語音聴力検査についてお話ししました。
聴補器選びに欠かせない語音明瞭度測定も参考にしてみて下さい。
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私は補聴器フィッティングの立場からしかコメントできませんが、おおまかに言うとお客様がより補聴器と上手く付き合ってゆくための基礎データでもありますのでこの特集は本当に嬉しいです^^
たくさんの方にこのページを見ていただきたいです。
補聴も最大の目標は難聴によるコミュニケーション障害の改善ですからもちろんですけど
純音聴検の結果だけだと迷うような症例については語音もやってみると、
結構情報が得られることが多いです。
今年一年、とてもお世話になり、ありがとうございました。
今年は、jibikai先生のブログを読ませていただき、
また、他の患者さんとお話しする機会などもあり、
とても勉強になった一年でした。
明くる年も、どうぞよろしくお願いいたします。
また、提示した音を上げれば上げるほど語音明瞭度は上昇しないのですか?、閾値上40dB程度で最高明瞭度に至るのは何でですか?教えてください。
純音聴力検査の閾値とは、音として聞こえるか聞こえないかぎりぎり認識できるレベルで。最大語音明瞭度とは、語音一音が、最も聞き間違えなく聞こえるレベルです。日常でも、小声だとはっきり聞こえないものが、ある程度大きい声は聞き取れるということは、経験することであり、その差が40 dBということです。
また、最大語音明瞭度はある程度の音圧で頭打ちになります。これも日常経験出来ると思うのですが、どうでしょう?テレビのボリュームを上げていっても、ある程度聞き取りやすいレベルがあって、それ以上はかえって聞き取りにくくなりませんか?
正常な聴力であれば最大語音明瞭度は90~100%ですから、それ以上音圧を上げても100%を超えることはあり得ませんよね。また、難聴でも語音聴取には最適な音圧があります。