鼻水の話

さて今回は鼻水はどこから来て、どこへ行くのかという話。鼻水って鼻の中でズルズルいってるのも不快ですけど、垂れてくるのも格好悪かったり不愉快だったり。あまり良いイメージのない鼻水ですけれども、何の役に立っているのか、また鼻水の量ってどこで調整しているのか、そんなことも含めてお話したいと思います。

その前に鼻の働きというのはいくつかあるのですが、ご存じでしょうか?
一つには呼吸の働き。鼻は気道の一部をなすわけですが、空気の流れに対する抵抗値は鼻の中が一番大きくて、全気道抵抗の半分を占めます。このことにより深くゆったりした効率的な呼吸が保てるのです。
二つ目の働きは下気道の防御。空気を加湿したり体温に近づけたり、異物や病原体を除去したりと、いわばエアーコンディショナーとフィルターとしての役割です。
そして三つ目の働きは、嗅覚です。嗅覚は食物を摂ったり、危険を察知したりするのに重要です。
以上、「呼吸」、「下気道の防御」、「嗅覚」の3つが鼻の働きです。

さて、厄介者と思われがちな鼻水ですが、鼻の働きの2つ目、「下気道の防御」のために不可欠なものなのです。鼻水があることによって外気を加湿することが出来るし、塵や病原体を吸着して、さらに鼻の粘膜にダメージを与えないように保護しつつ流し去ることも出来るのです。

ここで最初に提示しました疑問、鼻水はどこから来て、どこへ行くのかという話に戻りたいと思います。鼻水は鼻腺(びせん)というところで作られます。鼻腺は粘膜表面の下、粘膜固有層にあります。サラサラの成分を作る漿液腺とネバネバの成分を作る粘液腺があります。鼻水は必要に応じて鼻腺から粘膜表面へと分泌されるわけです。鼻水の量を調整するのは、主として三叉神経と副交感神経の働きです。三叉神経は鼻の中の物理的あるいは化学的な刺激、温度の変化などを察知して、そのシグナルを脳幹へと伝達します。その情報は上唾液核へと伝えられ、そこから副交感神経が鼻腺へと分泌を促すシグナルを送ることによって鼻水が出るのです。
粘膜に分泌された鼻水は、一部は吸気を加湿するのに使われ、一部は後鼻孔を通じて咽へと落下、さらには気づかないうちに嚥下して食道へと流れ落ちていくのです。
鼻水、あるいは鼻汁が咽に流れ落ちる現症を後鼻漏(こうびろう)といいますが、実は正常な状態でも起きていることなのです。ただし、意識するのは病的に多い時とか、粘度が高くなって咽の違和感や咳の原因になっている時です。病的に多くなるのはアレルギー性鼻炎、粘度が高くなるのは副鼻腔炎で起こることが多いです。
また分泌された鼻水、鼻汁を後鼻孔へと輸送するのは粘膜の粘液線毛運動という働きなのですが、風邪の鼻炎などでこの働きが障害されると鼻閉や鼻汁過多の原因となります。

さて、鼻水がどこから来てどこに行くのか、鼻水がどういう役割を果たしているのか、どんな仕組みで制御されているのかということを簡単に解説してみました。
鼻炎などで鼻水が止まらなくなると、不具合を嘆く訳なのですが、鼻水は元々必要なもの。鼻炎ではその制御がちょっとだけうまくいかなくなっているだけ、ということをご理解いただきたいのです。

================================================

ブログランキングに参加しています!
宜しければご協力を!
(アイコンをクリックするとランキングのページにジャンプします。
そしてなんと!耳鼻科医に10ポイントが入ります!!)
=================================
by jibikai | 2012-01-07 01:22 | 鼻のはなし | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


by jibikkuma