耳管開放症
2012年 09月 12日
耳管とは鼓室と上咽頭をつなぐ管で、その役割は鼓室の気圧と大気圧の均衡を保つことや、鼓室内から不要な分泌物や病原体を上咽頭へと運び出してきれいな状態にすることなどにあります。耳管が働いているのを実感するのは、飛行機に乗ったときなど気圧が変動する時です。例えば着陸態勢に入って飛行機の高度が下がった時、耳がつまる感じになることがあります。これは、機内の気圧が上昇するために、鼓膜が外側から押されて凹んでしまい響きにくくなるために起こる現象です。その様なときには唾を飲み込むようにしたり、鼻をつまんで息を込めて、いわゆる耳抜きをすれば、つまる感じが取れてパッと聞こえが良くなります。これは耳管が開いて鼓室へと空気を送り込んで鼓膜の凹みを解消したことによります。
このように、耳管は鼓膜の内側と外側との間に気圧の差が出来たときには開くようにできているのですが、開きっぱなしになってしまうのが耳管開放症です。症状は軽症ですと耳のつまる感じだけですが、ひどくなってきますと自分の声が大きく響く感じ(自声強聴)がしたり、呼吸の音が聞こえたりします。これらは、口の中から鼓室へとダイレクトに空気の行き来できる通路が空いてしまっているための症状です。
原因は体重の減少や脱水などが多いのですが、これは耳管を取り巻く軟部組織のボリュームが少なくなるためです。
かかりやすいのは若い方では特に女性、高齢者になりますと逆に男性が多いようです。
診断は、鼓膜所見、聴力検査やティンパノメトリーでも異常のないケースが多く、なかなかつかないこともありえます。
治療は、軽症では漢方薬を中心とした内服療法、生理食塩水の点鼻などがあります。自声強聴や呼吸音聴取などがある場合には、鼓膜のテーピング(鼓膜に特殊な絆創膏を貼って動きを制限する治療)が有効です。それで良くならない場合の治療法は、耳管を特殊なピンを使ってふさぐ治療(耳管ピン)などがあります。
耳管機能の不調による病気としては耳管が通りにくくなって起こる滲出性中耳炎などについては研究も進んで治療法も確立していますが、耳管開放症についてはまだそれほど研究が進んでいるとは言えませんので、かかる耳鼻科医によって診断や治療方針が若干異なるということはあるかも知れません。当院での治療法は漢方、生食の点鼻、鼓膜テーピングを症状に応じて行っています。耳管ピンは当院では施行できませんので、その場合は、施行可能な病院を紹介いたします。
耳管開放症は最近増加傾向にあります。とくに重い後遺症を残すとか、生命に関わる病気というわけではないのですが、不快感が強いために物事に集中できなくなったり、気分が塞いでしまったりすることもあります。もし、「耳がふさがる感じ」、「自分の声が大きく響く感じ」、「自分の呼吸の音が聞こえる」などでお悩みでしたら、是非耳鼻科で相談することをお勧めします。
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鼓膜のテーピングという方法があるのですね。とても勉強になります。
先日、医療情報技師試験というものを受けました。
医学に関しては、基礎的な部分しか問われていないと思うのですが、素人の私には一から覚えないといけないことが多くて、なかなか大変でした。
改めて医療関係者の方はすごいなぁと思いました。
また先生のブログで、勉強させてくださいませ。
それにしても医療情報技師試験ですか。いつも勉強熱心なところ、素晴らしいと思います。
耳管開放症と低音障害型感音難聴はいずれも耳閉感が起こりますが、
おそらく患者さん自身が感じている耳閉感はほとんど同じで、その差は
自覚的には判断出来ないのではないかと思います。
しかも一日のうちでも良い時と悪い時があるなど変動が見られる点なども、
似ています。
違う点は、耳管開放症であれば運動後に起きやすいとか、頭を下に下げると
改善するいう傾向があることはありますが、必ずそうなるとは言えず、
そこが難しいところではあります。
一日のうちで良い時に悪い時があるのは「耳管開放症」による耳閉感かと思っていたんですが、低音障害型感音性難聴でも同じようなことが起こり得るんですね。勉強になりました。
前回のコメントには書かなかったのですが、昨年耳閉感と音がどこから聴こえてくるかわからないことが多くなり耳鼻科を受診。
低音の聴力低下(右)と耳管機能検査の結果、耳管が開気味(左の方が症状が強い)との診断を受けました。(加味帰脾湯を適宜服用中)
この夏軽い眩暈と耳鳴り耳閉感が起こり聴検で両側の低音が35dBまで低下と判明。その後45dBまで下がりイソバイドを服用しました。現在は30dBぐらいの状態です。
普通から耳閉感を感じることが多く、耳閉感が続いた時に低音の聴力が低下しているのか耳管の関係なのかわからずいたので、耳管開放症に詳しいjibikai先生に伺ってみた次第です。やはり自分ではわかりづらいんですね。
内リンパ水腫によるものといわれているものでも、
聴力や耳閉感が変動することはよくあります。
それから、当院で診ている患者さんでもどちらか
迷う例はありますし、両方合併しているんじゃないかと
しか考えられないような例もあります。
同業の先生からも同じような意見を聞くこともあります。
自覚症状でも耳閉感が変動している感じはします。
今回は途中でイソバイドを5日間飲んで30dBまで回復したためアデホス、メチコバールのみに戻して様子見してます。
両方合併しているように考えられるものもあるんですね。
難しいですね。
耳鳴りが酷くて・・・などでない場合の耳鼻科にかかるタイミングがわからないのが一番困ってます。それほど聴力は落ちていないかなと思っていたら意外と落ちていたりもするので・・・。
今朝も耳閉感が強いです。
おかげさまで、医療情報技師試験に合格することができました。
私たち素人は、この試験で問われるレベルの医療・医学の知識でも、身に着けるのが本当に大変です。
それを考えると、自分や知人などの体調に関して、病名をあれこれ素人判断することが、どれほど怖いことなのかなって、改めて思います。
自分の限界を知ったうえで、耳のホームページも続けていきたいです。
これからもよろしくお願いいたします。
テレビを見てわかったんですけど……
鼻すすり耳をカチッといわせ息を吸います!!あと鼻を積まんで……
息を吸いましたこれは鼻官開放症だと思い投稿しました!!
1年くらいしています!
今からでもやめたら間に合いますか??
変わるのが自分でも分かると思うのですが、それを続けてしまうと
聞こえが悪くなったり、真珠腫性中耳炎という病気になったり
しますから、今すぐ止めた方がいいです。止めれば大抵は大丈夫ですよ。
突発性難聴の事でお尋ね致します。一年ぐらい前から、突然難聴になりました。すぐに耳鼻科を受診しまして、突発性難聴と診断されました。
現在は、耳鳴り、耳閉塞感、難聴、の状態です。夜寝床に横になると、
耳閉塞感が感じられなくなり、すごく楽になります。そんな事例はよくある事なのでしょうか、横になれば改善するのであれば、治す事が出来るように素人は思ってしまうのですが、先生いかがなもんでしょうか、アドバイスをよろしくお願いいたします。そして、突発性難聴になってしまうと
飛行機を使った旅行は今後出来ないのでしょうか、お尋ねいたします。
たかが片耳が悪くなったぐらいで、と言う人もいましたが、この状況はなった人でないと、わかりません。どうかいい治療法が確立される事を願っております。有難うございました。
耳管開放症は耳管が開いてるのに耳閉感があるんですね。病気の名前(開放)とは逆(耳閉)の症状があるだなんて、何だか変な感じですね。
では、耳管閉塞症はどんな病気なんですか?教えてください。
耳管が開きっぱなしになると、そこから音のエネルギーが逃げてしまうし、鼓膜に張りがなくなって音を伝える効率が悪くなり、症状として耳閉感が起こります。
耳管閉塞の状態では、大抵の場合鼓室内の気圧が大気圧より低くなり、鼓膜が凹んで、さらには鼓室内に粘液などが貯まってしまい、中耳炎を引き起こします。
耳管開放症になると音が伝わり難くなるから難聴になるってことですね?!
あ、だからこの病気で歌手の中島美香さんが活動休止してたのかなぁ?
ボクもしょっちゅう飛行機乗ったときみたく自声強調や呼吸音が聞こえたり、よく耳鳴りするけど...。(家の近くの耳鼻咽喉科に受診したときは異常ないって言われてます。)
耳管閉塞症で中耳炎は痛そうです;
説明してくださってありがとうございます。