好き嫌いと、アレルギーは違います!

きのうのニュースから、

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15歳少女がキス後に急死=犯人はピーナツ−カナダ

 【ロサンゼルス29日時事】カナダのケベック州サゲネーの病院は29日までに、15歳の少女、クリスティーナ・デフォルジュさんが交際相手の少年とキス後、急死したことを明らかにした。一見不可解な死だったが、「犯人」として浮上したのは、ピーナツアレルギーのショック症状。
 16歳の少年は、デフォルジュさんが極度のピーナツアレルギーと知らず、キスする約9時間前にピーナツバターを塗ったトーストを食べていた。デフォルジュさんは病院で手当てを受けたが、数日後の今月23日に死亡した。 
(時事通信) - 11月30日15時1分更新

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以上、yahoo! Japanのトピックスより、転載させていただきました。


今回、この話題を取り上げたのは、今朝出勤前に見ていたTVで気になる発言があったからです。それは、あるTV番組のオープニングでの、メインのキャスターによるコメントです。この話題を取り上げ「私には好き嫌いもアレルギーもない。」と話していました。無知なのか不用意なのかはわかりませんが、問題のある発言です。
これでは、単なる「好き嫌い」と「食物アレルギー」を同じものという誤解を与えてしまいます。

 ここではっきり言っておきたいのですが、「好き嫌い」と「食物アレルギー」は全然違います。好き嫌いの場合は、根性で嫌いなものでも食べられるようになるかも知れませんが、食物アレルギーというのは、たとえその食べ物が好きであっても、食べれば具合が悪くなるので食べられないのです。例えば、エビやカニなんてだいたいの人が好きですよね。でも、甲殻類アレルギーっていうのがあって、その重症な人は、たとえ極上のタラバガニだろうが、越前ガニだろうが天然車エビだろうが、いくら好きでも、食べられないのです。
 
 実は医局の後輩に甲殻類アレルギーの医者がいまして、別の医者の結婚式で同じ円卓を囲んで、隣に座ったことがあります。この先生、普段はもちろん海老やカニは一切口にしませんが、油断したのか、たまたま海老のすり身が入ったお吸い物を少し口にしてしまいました。具は食べなかったものの、とたんに顔色は悪くなるは、少し息苦しくなるはで急性のアレルギーによるショック症状かと心配しました。本人に「大丈夫か。」とたずねたところ、この程度であれば、もう少しすれば収まるとのことで、様子を見ましたが、特に処置無く30分ほどで回復し、事なきを得ました。しかし、もう少しひどくかったら、危なかったかも知れません。
 
 全身に急激に起こるアレルギー反応で血圧が低下したり、呼吸困難に陥ることをアナフィラキシーショックといいます。引用した記事の少女は、このアナフィラキシーショックで亡くなったと考えられます。以前、日本でもソバアレルギーで亡くなった方もあり、原因となる食物を口にしてから、30分以内で重症化しますので要注意です。

 甲殻類アレルギーの例を出しましたが、その他、果物(キウイ、桃、メロンなど)、豆・穀類(トウモロコシ、大豆、ピーナッツ、小麦、米など)、魚(アジ、サバ、マグロ、サケ、タラなど)、酪農製品(牛乳、牛肉、卵、鶏肉、豚肉など)いろいろな食物アレルギーがあります。自分がもしかしたらそうじゃないかなと心配な方は、アレルギー科を標榜しているところで診てもらった方がいいと思います。また、重症な食物アレルギーの患者さんは、自分で分かっていますから、アレルギーを起こすものは食べません。問題は、単にわがままや好き嫌いで食べないのだろうと、勘違いしている人です。
マスコミも、好き嫌いとアレルギーが違うことを正確にアナウンスしてくれないと、世の中に対する影響が大きいだけに困るのですが。

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Commented by たかし at 2005-12-01 13:35 x
こんにちは♪
この記事を他のブログで見てあらためてアレルギーによるショックが重篤化することを思い知らされました。
義母も若い頃あわやの状態に2度まで追い込まれたようです。
そんなものでアレルギーショックが起こるわけ無い、俺がみていてやるからということで食べたようでしたが・・・危ないところだったようです。
高齢になりいろいろな治療も必要になり、私たちで義母に合わないお薬、食べ物をリスト化し、お医者様に見せるようにしています。
それにしても好き嫌いと結びつけたりする発想を影響力のある司会者が言うのはまずいですね。
Commented by jibikai at 2005-12-01 14:30
確かに、たくさんのブログでこの話題は取り上げられているようですね。記事をいくつか読んでみて、ほとんどの方はアレルギーについて理解してらっしゃるようで、心配していた勘違いはないようです。しかし、ネットなどには縁がなく、TVしか見ない人たち(とくに高齢の方)が、誤解しないか心配です。
Commented by taisyo-papa at 2005-12-01 20:46 x
はじめまして。TB返しさせていただきました。
jibikaiさんのおっしゃるとおり何の知識もなしに公共の電波にのせて不用意なことは言わないで欲しいですね。
うちの次男君は赤ちゃんの時、卵がだめだったようで食べさせたらもどしていましたが、4歳の今はとりあえず平気なようです。
その代わり今は喘息とアトピー。一度咳き込み始めると大変です。大人になれば自然と治ると言われることもありますが、それだって別にお医者さんに言われたわけではないですが。今の僕ら夫婦には朝になったら医者に吸入に連れて行ってあげることしかありません。
Commented by jibikai at 2005-12-01 22:06
>taisyo-papaさん。コメントありがとうございます。
また、中耳炎についてですが、ネットでの医療相談はなかなか難しいものがありますので、個別にはご相談にのれません。ごめんなさい。でも、同じような疑問を持つ方が多いのも事実ですので、一般論として記事にしますので、2〜3日お待ちください。記事ができましたら、TBさせていただくことにします。
by jibikai | 2005-12-01 11:51 | 花粉症・アレルギー | Comments(4)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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