睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群については、以前には記事にもしたことがありますが、大分経ちますので、改めて何回かに分けて記事にしていこうかと思います。まずは、概要から。

睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に、呼吸が度々止まってしまう病気です。無呼吸は10秒から長いときには1分近くとなり、それが繰り返し起こります。そのために睡眠の質が低下し、日中眠くなったり、頑張れなくなったりします。同時に、メタボリックシンドロームや脳や心臓の虚血性疾患や高血圧、EDの原因とも成ります。小児では症状が大人とは異なり、顎顔面や胸部の形態異常、成長障害、多動や情緒不安定などを引き起こします。

睡眠時無呼吸症候群の原因は、身体的特徴として、まずは肥満、下顎が小さく後退していること(いわゆる"顎がない”状態。受け口の逆)、頸が短いことなど、鼻の病気としては鼻中隔彎曲症、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎など鼻づまりを起こすもの、アデノイド増殖症や扁桃肥大、軟口蓋下垂や厚すぎる舌など様々あります。通常は一つの原因で起こるのではなく、様々な悪条件が重なることにより発症している方が多いようです。小児の場合は、アデノイド増殖症と扁桃肥大が原因となっていることがほとんどで、大人よりは肥満の割合は少ないです。アデノイドも扁桃も、咽にあるリンパ節の塊で免疫に関係した働きをしていると考えられていますが、小児期に、特に肥大しやすい特徴があり、これが睡眠時無呼吸症候群を引き起こすのです。

日本における睡眠時無呼吸症候群の頻度は従来 人口の2~4%といわれておりましたが、近年の疫学調査の結果からはそれよりもはるかに多い可能性が示唆されています。特に運転手などが睡眠時無呼吸症候群である場合、漫然運転や居眠り運転による事故等が発生しやすくなりますので、健診などで早期発見し、早期に治療する必要があると思います。

睡眠時無呼吸症候群を心配して耳鼻科を来院する方は、「日中の眠気に困っている方」、「いびきを家族や同僚などに指摘されて、受診を勧められた方」などです。診察と検査、治療の流れですが、先ずは睡眠時無呼吸症候群専用の問診票で、眠気の程度を調べます。次に、鼻や咽の診察を行い、狭くなっているような部位はないかを大まかに診ます。狭くなっている部位については、さらに内視鏡を使って詳しく診ます。また、鼻づまりがある場合には、鼻腔通気度計で鼻づまりの程度や左右差を客観的に評価します。画像診断としては、鼻副鼻腔や咽頭のCTが有効です。
最も重要な検査は、終夜睡眠ポリグラフィーというものです。これは入院して行う場合と、医療機関から検査装置を持ち帰り、自宅で検査を行う場合があります。入院して行う場合には呼吸の状態、血液の酸素飽和度、体位、心電図、目の動き、脳波などを一晩中モニターします。自宅で検査を行う場合には、このうち、心電図や目の動き、脳波を省いた項目を調べます。

治療ですが、重症の睡眠時無呼吸症候群の場合には、経鼻的持続陽圧呼吸療法(nCPAP)の適応となります。これは、鼻にマスクを装着して寝るもので、マスクからは少し圧を高めた空気が送られてきます。上気道に陽圧をかけることにより、咽の空間を保とうという治療法です。ほとんどの睡眠時無呼吸症候群に効果のある治療法ですが、あくまでも対症療法である点、マスクの違和感、重症例しか保険適用が認められないなどが欠点です。なるべく長い時間装着して休むのが理想的ですが、毎晩4時間以上できる方は70%程度といわれています。

鼻づまりが睡眠時無呼吸症候群の原因となっている場合には、鼻の中の形態を矯正する手術が有効です。鼻中隔彎曲症に対する鼻中隔矯正術、アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎に対する下鼻甲介焼灼術や切除術、鼻茸に対する鼻茸摘出術、慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術などが行われます。また、nCPAPの必要な患者さんでも、鼻づまりがあると治療が上手くいかないので、その場合は鼻の手術も行います。

下顎が小さい場合などは口腔内装具(いわゆるマウスピース)が有効です。これは寝ている間の噛み合わせを、少しだけ下顎を前方に移動するようにするためのもので、舌根が咽を塞ぐのを防ぎます。

もちろん、肥満、特に内臓脂肪の多い方は、減量が必要です。

このように睡眠時無呼吸症候群の治療は色々とあるのですが、それは原因も一つではなくて、いくつかの要因が複合して起こることによります。適切な治療を受けることによって、例えば日常生活に支障を来すほどの強い眠気があるような方でも、ほとんど普通の生活が送れるようになります。心配な方は、まず診察を受けることをお勧めしたいと思います。

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Commented by さくら at 2014-05-09 06:33 x
海外在住者です。1年前に突発性難聴に片耳がなり聴力が完全に回復しませんでした。高音が聞こえず、左耳は30%しか聞こえないような感じです。補聴器を今試していますが、テレビのボリュームで言ったら0.5ぐらい聞こえがよくなったぐらいで、雑音が上にのったような聞こえ方で、正直正常な耳の方で音を拾った方がききやすい気もします。(ひとごみが多い所は特に) でも、今から補聴器を付けたほうが、会話を聞き取る能力が落ちなくて済むと言われました。刺激を与えていないと、いずれ聞き取れなくなると言われました。
突発性でもそうなのでしょうか? 現状維持か再発か?で、徐々に聴力が落ちるとは思ってもいなかったのですが。
by jibikai | 2014-05-06 22:51 | 睡眠時無呼吸症候群 | Comments(1)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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