扁桃の功罪

鼻や口から咽へと入っていく通路の途中には、口蓋扁桃扁桃、舌根扁桃、咽頭扁桃など、リンパ球を中心とした免疫細胞を多く含む組織がいくつかあります。その存在意義はウイルスや細菌の感染から身体を守る、"免疫”という働きに尽きるのですが、その仕組みについて、例え話を交えてお話ししたいと思います。

扁桃組織というのは、いわばヒトの身体という"国”を守る”城”や”砦”のようなものです。城には堀や城壁があって外界から守られつつも、門は外界と通じています。さらに例えるなら、堀は粘液で城壁は粘膜。ウイルスや細菌などの外敵の侵入をここで食い止めます。城門は陰窩。粘膜とリンパ球が接近している部分です。。
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ウイルスや細菌が侵入しますと、城壁のそばから、リンパ球の一つであるB細胞(これはいわば"弓隊”です)がIgAという”矢”を放ちます。(IgAとウイルスとはいわば鍵と鍵穴、一対一の関係があって、一つ一つの種類に応じて用意しておく必要があります。したがって出会ったことのない初見のウイルスには、有効なIgAを持っていないということになります。)
ここをすり抜けた病原体に対しては好中球やマクロファージが接近戦や肉弾戦を挑みます.いわば”足軽隊”というところでしょうか。また、ウイルスが細胞に感染してしまった場合には、ナチュラルキラー細胞が感染した細胞ごと破壊します。

こうしたせめぎ合いの間にも、敵である病原体の情報収集が行われています。これは、リンパ球の一つT細胞の仕事です。T細胞が得た病原体の情報は、B細胞に伝えられ、IgAを作るのに役立てられます。情報を得たB細胞はIgAという矢を作って、ウイルスの再襲来に備えるものもあれば、輸出リンパ管という裏口から、全身のリンパ組織へと移動していくものもあり、各所で防御にあたるようになります。

以上が扁桃と、そこに含まれる免疫細胞の役割で、この過程だけを見れば、体を病原体の攻撃から守るのに非常に重要な働きと言うことが出来るかと思います。しかしながら、扁桃が病原体から体を守って、病原体の情報を探るという働きは、小学校低学年頃までで、その後は役目を終えます。それどころか、病原体と免疫細胞の小競り合いがしばしば繰り返されることにより、城門である陰窩には病原体と免疫細胞の死骸が溜まってしまい城が荒れるのです。これが、いわゆる膿栓、不愉快で何の役にも立たないものです。
また、病原体とのせめぎ合いがあると、主にT細胞は色々なサイトカインを作ります。サイトカインとは特定の細胞に作用して活性化を促す、いわば命令書。これが過剰に出続ければ、免疫細胞が自分の体の一部まで攻撃する様になります。これを自己免疫といい、IgA腎症、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎などの原因となっている可能性があります。例えでいえば、扁桃を本拠地にしている免疫細胞が、野武士化して、中央の言うことを聞かず、暴れまくっている状態といえると思います。
このような場合、野武士が本拠地としている扁桃を摘出する、あるいは凝固して減量してしまうのが有効ということになる訳なのです。

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by jibikai | 2015-02-15 21:51 | のどのはなし | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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