おたふく風邪〜流行性耳下腺炎〜

 最近の感染症、特にウイルス感染症の動向がちょっと今までと違うような気がしています。たまたまなのかも知れませんが、インフルエンザも例年より流行が早いですし、顔面や咽の帯状疱疹や、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性耳下腺炎(いわゆる、おたふく)も多いように思います。もしかしたら、異常気象などと関係があるのかな、なんて勝手に想像しています。

 例えば、流行性耳下腺炎は、数年に1度ぐらいの割合で春から初夏にかけて流行しますが、その他は年に数人診る程度です。ところが昨秋から今年の冬にかけては週に1人程度の割合で新患を診ておりまして、流行する季節もいつもと違うし、流行している期間も長く、患者数も多いように思います。山形県衛生研究所のデータを見ても、昨年からずっと横ばい状態で流行が続いているとのことです。この流行は当地のみに限ったことなのか、全国的なものなのか興味がありますので、もう少し調べてみたいと思っています。

 ところで、そもそも流行性耳下腺炎て何なのか、少し解説しておきます。一般的に”おたふく風邪”と言うとおり、耳の下やあごの下が腫れて、あたかも顔が大きくなったかのように見えます。それは耳下腺や顎下腺といった大唾液腺に炎症を起こすためで、原因はムンプスウイルスというウイルスによる飛沫感染です。耳下腺や顎下腺の腫れの他は、発熱や全身倦怠感などの症状が現れます。潜伏期は2〜3週程度で、感染力は強いです。ただし、終生免疫といいまして、一度かかったらかかりません。たまに、症状とか腫れ方からは明らかに流行性耳下腺炎のようなのですが、確か小さい時に一度かかっているはずという人もいます。これは、例外的に2度かかったわけではなく、1度目、おたふくだと思ったのが記憶違いだったり、紛らわしい他の病気であったりした場合です。
 
 流行性耳下腺炎と紛らわしい病気としては、首の周りが腫れる病気と言うことになりますが、そのうち子供が罹りやすいものとしては、首のリンパ節炎というものがあります。元々、首にはたくさんのリンパ節があり、通常は米粒ぐらいの大きさなのですが、虫歯や咽の炎症などに反応して腫れることが多く、その場合親指の先程度の大きさになることもありますので、流行性耳下腺炎と間違うことがあります。その他には化膿性耳下腺炎といって細菌が口の中から、唾液を送り出す管を逆にさかのぼって、耳下腺に炎症を起こすものがあります。ただし、これは子供よりお年寄りに多い点が、流行性耳下腺炎と異なります。また、流行性耳下腺炎の場合は、左右の耳下腺、顎下腺を合わせると全部で4つあるわけですが、そのうちの2つとか3つの腺が腫れることが多いのですが、化膿性耳下腺炎の場合は、片方の耳下腺が腫れるだけです。流行性耳下腺炎かどうか、また、抗体を持っていて将来かかる心配がないのかどうかを調べるには、血液検査で抗体の量を測るのが確実です。感染した場合は、感染の初期と腫れがひいて治ってからと、2回抗体を調べて、2回目で抗体が上がっていれば確実に診断できます。

 流行性耳下腺炎を起こすムンプスウイルスを、直接やっつける薬は残念ながらありません。身体がウイルスに対する免疫を獲得するまで、対症療法として解熱鎮痛剤などを使っていくしかありません。また、食べる時、唾液を出そうと唾液腺が働くと痛みが強まり、どうしても食べる量は減ってきますので、のど越しの良いゼリー(あまり酸っぱいものはダメ)を食べたり、こまめに水分補給をするのは良いでしょう。唾液腺の腫れのピークはせいぜい4〜5日間で、感染力もこの期間は強いですから、お子さんであれば、耳下腺の腫れが引くまでは出席停止です。大人でも、まだ罹ったことのない人には移してしまうことになりますので、他人との接触は控えた方が賢明です。

 合併症としては、髄膜炎、睾丸炎、乳腺炎、難聴(一側性の感音性難聴)に注意です。合併症の詳細については今回は割愛させて頂きますが、合併症を起こさなければ、1週間程度で普通の生活に戻れます。

 予防としては、ワクチンが有効ですが免疫のつく人は80〜90%といわれておりますので、絶対罹らないというわけではありません。また、以前MMRとして行った予防接種で、無菌性髄膜炎が副反応として、報告によって頻度はまちまちなのですが、1,000〜10,000人に一人の割合で起こりました。責任を追及された国は1993年に曖昧な形で、ワクチン接種を義務から任意に変更しました。その後、予防接種を受ける方は減少しており、このことも、最近の流行性耳下腺炎の流行の原因の一つと考えられます。

 国は予防接種の副反応として無菌性髄膜炎が起こったことの責任を曖昧にしたいがために、頻度などの情報を出したがりません。義務接種だったものをいつのまにか任意接種に変更して、「後は自己責任で、、、。」ということでお茶を濁しているわけです。予防接種の是非は別として、うやむやにして幕引きというのはよろしくないと思います。これでは、世のお父さんお母さんは、何を信じたらいいか分からなくなってしまいます。本当のところ、予防接種によって後遺症を残すような副反応がどのくらいの頻度であって、予防接種を止めた後は当然、自然に罹る率は高まるわけですが、それによってどれぐらいの頻度で後遺症が出ているのか、きちんと調査、発表して頂きたいところです。

 最近、「官から民へ」だとか「小さな政府」だとかいって、何でもかんでも民間に丸投げする風潮がありますが、最近の偽装マンションの例を引き合いに出すまでもなく、国が責任をもってやらなければいけない仕事はあると思います。伝染病の予防も、個人や企業レベルでやれる仕事ではないのですから、その責任を放棄しないで欲しいと思います。

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Commented at 2006-01-09 00:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by jibikai at 2006-01-09 12:11
>中村先生。TBありがとうございます。初トラックバックですか。光栄です。遠く離れた場所でも、リアルタイムに感染症の流行状況等、情報交換できて、有意義ですね。
by jibikai | 2006-01-06 16:55 | 耳鼻科全般 | Comments(2)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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