耳を大切にするとは?

前回の配事にも書いたとおり、今日3月3日はひな祭り、、と同時に「耳の日」でもあります。しかし、当事者である耳鼻科医や、耳の病気を持つ患者さんにとって、あまリピンとこないというのが正直なところ。実際には、私の所属しております、日本耳鼻咽喉科学会山形県地方部会というところでは、難聴者向けに無料の補聴器相談なんかもやってはいるのですが、他はこれといって具体的な活動はないのです。

じゃあ、何をやればいいのかということになりますけれども、大部分の方が普段耳の不都合なんか感じたことがないわけですから、「健康な耳を維持するにはどうするか。」ということと、「周囲の難聴者へはどう接していくべきか。」などについての啓蒙活動が重要なことと思われます。耳の日のポスターには「耳を大切にしましょう」というスローガンが掲げられていますが、これだけじゃあ、−般の人にとって具体的に何をしたらいいかわかりませんよね。私だって、「耳を大切にって具体的には何すりやいいんだい?」つて聞かれたら、とっさには答えられないと思います(汗)。
しかし落ち着いて考えてみますと、耳のトラブルというのは、「痛み」と「聴こえの問題」と「めまい」ということになろうかと思います。具体的にはこれらへの対策が「耳を大切に」することになろうかと思いますので、ちょっと書いてみますね。

耳の痛みについては、ほとんどの場合、子供では急性中耳炎が、大人では外耳道炎が原因です。急性中耳炎はほとんどが風邪に続発しますから、風邪を引かないようにすること、引いてしまったらきちんと治すこと、鼻のかみかたを覚えることなどが大事と思います。外耳道炎は、耳のいじりすぎや不適切な耳掃除で起こりますから、それを防ぐには、気持ちいいからってつい耳をいじりすぎないように強い意志を持つこと、正しい耳掃除の仕方を覚えることが必要です。

次の聴こえの問題ですが、大きく分けて中耳のトラブルで起こるものと、内耳のトラブルで起こるものがあります。中耳のトラブルは主に中耳炎ですから、やはり風邪への対処につきるかなと患います。
内耳のトラブルは原因不明なものが多く、治療するのも難しいものが多いです。また、いくら気をつけても、ほとんどの人が年をとれば耳は速くなります(老人性難聴)が、これも防ぎようがありません。
原因がある程度分かっているものとしては、低音障害型感音性難聴やメニエール病などの難聴があります。これらは、内耳にリンパ液が貯まりすぎることが直接の原因であり、ストレスと因果関係がありそうだということまではわかっています。また、騒音性難聴や音響外傷は、強大音で起こることが分かっています。ということは、ストレスを避けることと、大きな音を長時間聞かないことが、今のところは、内耳性の難聴を避ける有効な方法と思われます。

最後の「めまい」についてですが、めまいの原因は大きく分けて3通りあり、「耳のトラブル」、「頭の中のトラブル」、「自律神経系など全身的なトラブル」に集約されます。その中の「耳のトラブルJで起こるめまいは、良性発作性頭位めまい症っていうものと、メニエール病、内耳炎、突発性難聴などがありますが、予防法はとりあえずストレスを避けることぐらいしか思い浮かぴません。ただ言えることは、内耳性のめまいでは、難聴を伴うものもあり、めまいが治っても難聴が治らないケースも多く、こういった後遺症をできるだけ残さない様にするには、早期発見・早期治療が大切です。めまいというと、耳鼻科と内科と脳外科でどこへ行ったらいいか悩む人も多いと思うのですが、聴こえが悪かったり、耳鳴を伴うようでしたら、迷わず耳鼻科を受診した方がいいと患います。

以上、「耳を大切に」するとは、具体的には何をしたらいいのか書いてみましたが、ちょっと、長すぎましたね(芙)。これでは、ポスターに載せられません。でも、単にポスターを診療所や病院に配るだけでなく、他の方法の啓蒙活動は必要だし、「耳を大切に」するとはどういうことかをまずはっきりさせないことには始まらないと思い、記事にしてみました。

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by jibikai | 2006-03-03 11:50 | 耳のはなし | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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