額帯鏡
2006年 06月 19日
例によって単なる気まぐれの思いつきからなのですが、新シリーズとして「耳鼻科医のお道具箱」というものを展開していきます。耳鼻科診察室にはどんなものがあるのか、紹介していこうという企画で、「病院や医院って何か訳のわからんものがいっぱい置いてあって怖い。」という人がいないとも限らず、こういった方にも安心感を持ってもらうため、情報公開していくのが目的です。

第一回目はこの写真の道具を、是非紹介したいと思います。よくコントなどで医者の役をする人が付けますよね。これは額帯鏡(がくたいきょう)といいまして、聴診器と並んで医者のシンボルのように思われていますが、実はこれを使うのは耳鼻科医ぐらいなものなのです。もちろん、当院のキャラクターである”ジビックマ”(左のイラスト)も額帯鏡をしています。使わない時は、上に反転させておきますが、その場合ジビックマのように黒い面が正面を向くのが正しいのです。コントでは逆に鏡の面が正面を向いていることが多いのですが、それをテレビの前で指摘すると、家族には「どうでもいいでしょ、コントなんだから。」とたしなめられます。でも、耳鼻科医としては、やはりこだわりのある部分なんですよ。

さらに、咽と鼻の境目にあたる後鼻孔(こうびこう)というところや、気管の入り口にある声帯というためには、さらにもう一つ、棒のついた小さく丸い鏡を口に入れて、反射させて見ていました。さらには、左手にこの小さい鏡、右手に鉗子を持って、声帯ポリープを取ったり、咽のずっと奥に刺してしまった魚の骨を抜いたりしていました。この小さい鏡を自由自在に操るのは、もう職人芸の世界で、昔の耳鼻科医はこれが出来れば、外来処置に関しては一人前という感じでした。
ところが、ちょうど私が医者になった頃、大きな技術革命が起こりました。それは、いわゆるファイバースコープというものの実用化です。胃カメラを細くしたようなものなのですが、自在に曲がる光ファイバを咽に入れて、奥を覗く物で、これによってさほど熟練を要すことなく、鼻の奥でも声帯でも見られるようになりました。さらにここ数年まえからは「電子スコープ」という物が主流になりつつあり、高画質化が最近のトレンドです。同時に手術用顕微鏡という物も低価格化と高機能化が進んで、特に耳の診察や細かな処置などに、ごく普通に使われるようになりました。

ところが、そういった最新鋭の機器があってもやはり、額帯鏡のコンパクトさや、手軽さと言った魅力はやはり捨てがたいものです。前近代的遺物とは思いつつも、まず、真っ先に耳や鼻や口から咽を見るのには額帯鏡を使い、さらに必要に応じて、ファイバースコープや顕微鏡を使うことが多いのです。
なにも医療機器に限らず、道具は古い、新しいにかかわらず、使い勝手が一番重要ですよね。額帯鏡は、徐々に重要度は下がってきているとはいえ、もう少し生き残る道具かなと思います。
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今家の近所の耳鼻科の先生は、症状を言うとすぐ看護師さんに「あれ!」と言ってファイバースコープ突っ込む!ウゲッとなるので私は嫌い。耳にはまだ入れられたことがないけど。
道具って大事ですよね!お医者様の道具とは全然違いますけど、私皮むき(人参とかジャガイモむくやつ)とても使いやすいのがあって、どうしても同じ物がほしくて探し回り、見つけたお店の在庫全部買ってきた事があります(10個ほど)
下世話なこと聞いてすみませんが、額帯鏡っておいくら位するものなのですか?前に聴診器が10万近いものがあると聞いたこと事があるのですが。
ファイバースコープ:私はよく鼻に入れられます。好きな人には見せられない苦しい顔になります。
そのかわり3歳以上ぐらいだと、何か痛い処置とか検査をしなくちゃいけない場合には、大人並みに本人に説明するようにしています。細かいことはわからなくても、なんとなくは理解してくれることもありますので。2歳児とかそれ以上の年齢でも、なかなか話を聞いてくれない子は、粘り強く説得するか、押さえつけて処置するか、待てるものはいったん突き放すか、ケースバイケースです。子供より早く親が根負けしてしまい、治療を放棄するケースもあり、難しいです。

喉の痛みはほとんどなくなりました。あの痛くて、辛かった日々が夢のようです。