いつになったら、治るんですか?
2006年 09月 09日
時々、長く通院している患者さんから,「いつになったら、治るんですか?」とか、「いつまで通わなくちゃいけないんですか?」と聞かれることがあります。患者さんにしてみれば、今後の見込みを聞くというのは当然のことなのですが、聞かれる医者の側としてみれば余りいい気がしない質問ではあります。それは、言外に「治らないのは腕が悪いんじゃないのか?」という非難めいたニュアンスを感じ取ってしまうからだと思います。
ところが病気の治る治らないに影響するのは、一番は病気の性質、次に患者さん本人の心がけ、その次ぐらいに医者の腕が影響しますので、医者の言い分としては病気の治らないことを全て自分のせいにされても困る、ということになります。
さて、病気の治り方には、大きく分けて3つのタイプがあります。一つは早く治るもの、次に時間はかかるが治るもの、最後は一生治る見込みのないものです。
早く治るものには、耳鼻科領域では急性中耳炎、急性扁桃炎、急性鼻炎、急性咽頭炎、急性喉頭炎など、”急性”とつくものが多いです。これらの特徴としては、急に悪くなって、回復し始めるとどんどん良くなることにあります。ですから、治療の前にどのくらいで治るかという見込みは立ちやすいです。ただし、まれに慢性化したり、後遺症を遺したりするものもありますので、もちろん注意は必要です。
時間はかかるが治るものとしては、慢性副鼻腔炎、慢性咽喉頭炎、滲出性中耳炎などがあります。これらは、私の場合、およそ2ヶ月間を一つの区切りとして考えております。その期間きちんと通って頂いて、薬も真面目に飲んで頂いてという条件付きではありますが、過半数の方がこの期間内に治ります。ただし、病気が重症だった場合、体質的に治り難い方、こちらの指示通りに通院してくれなかったり、薬も真面目に飲んでくれなかったりする場合は、当初の予想が当たらずに、遷延化(せんえんか)してしまいます。その場合はさらに長い治療期間がかかり、場合によっては手術も必要になってきます。
最後の、一生治る見込みのないものとしては、アレルギー性鼻炎、遷延化した感音性難聴、遷延化した慢性中耳炎、進行癌などがあります。アレルギー性鼻炎については、免疫療法あるいは減感作療法という治療で治ることもないわけではないですが、ほとんどの場合、一生ものと考えた方がいいでしょう。また、感音性難聴の中でも、急性低音障害型や一部の突発性難聴は、早めに治療することで治るものも多いですが、騒音性難聴やムンプス難聴、遅発性内リンパ水腫、メニエール病などは治らないものが多いです。
これら、治らない病気については「仲良くつきあっていくしかありませんね。」という常套句も使いますが、治らないまでも、極力快適な日常生活を送って頂くための、最善の策を 患者さんと一緒に考えることが大事です。
患者さんは、もちろん治ることを期待して医者にかかります。医者は診察して検査して、患者さんの苦痛の原因が何なのかを調べ、治療にあたります。それで、期待されたとおりに病気が速やかに治れば、患者さんも医者も万々歳なのですが、残念ながら、治らない病気というのはいまだに多く存在します。その場合は、病気を治すということから、病気があっても快適に暮らすにはどうするかということに、医者も患者も目的を変えなければいけません。この切り替えがうまくいかないと、患者さんと医者との間で行き違いが生じます。患者さんは「これはもう治りませんよ。」といわれると、多くの場合失望してしまいます。その医者を見限って、民間療法や怪しげな宗教にはしったりします。そこまで行かなくても、主治医に相談することなく他の医療機関に変わったり(患者が医者を替える時を参照)、治療を中断してしまうこともあります。これは、そこまでに至る患者ー医者双方の努力を無駄にしてしまう、もったいないことだと思います。
以上お話ししましたように、病気には比較的早く治るもの、時間がかかるもの、治らないものがあるのですが、耳鼻科には時間がかかる病気や、治らない病気が、急性疾患のみを対象としている科に比べて多いのです。たまに「耳鼻科に一度かかると、ず〜っと通わされる。」という悪評を聞くことがあるのですが、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎などを治療の対象としている科としては、これはある意味仕方のないことなのです。
せめてこのブログの読者には、その辺の事情を理解して頂きたいと思い、今回の記事を書いてみました。
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一日一回のご協力、毎度ありがとうございます m(_ _)m
ところが病気の治る治らないに影響するのは、一番は病気の性質、次に患者さん本人の心がけ、その次ぐらいに医者の腕が影響しますので、医者の言い分としては病気の治らないことを全て自分のせいにされても困る、ということになります。
さて、病気の治り方には、大きく分けて3つのタイプがあります。一つは早く治るもの、次に時間はかかるが治るもの、最後は一生治る見込みのないものです。
早く治るものには、耳鼻科領域では急性中耳炎、急性扁桃炎、急性鼻炎、急性咽頭炎、急性喉頭炎など、”急性”とつくものが多いです。これらの特徴としては、急に悪くなって、回復し始めるとどんどん良くなることにあります。ですから、治療の前にどのくらいで治るかという見込みは立ちやすいです。ただし、まれに慢性化したり、後遺症を遺したりするものもありますので、もちろん注意は必要です。
時間はかかるが治るものとしては、慢性副鼻腔炎、慢性咽喉頭炎、滲出性中耳炎などがあります。これらは、私の場合、およそ2ヶ月間を一つの区切りとして考えております。その期間きちんと通って頂いて、薬も真面目に飲んで頂いてという条件付きではありますが、過半数の方がこの期間内に治ります。ただし、病気が重症だった場合、体質的に治り難い方、こちらの指示通りに通院してくれなかったり、薬も真面目に飲んでくれなかったりする場合は、当初の予想が当たらずに、遷延化(せんえんか)してしまいます。その場合はさらに長い治療期間がかかり、場合によっては手術も必要になってきます。
最後の、一生治る見込みのないものとしては、アレルギー性鼻炎、遷延化した感音性難聴、遷延化した慢性中耳炎、進行癌などがあります。アレルギー性鼻炎については、免疫療法あるいは減感作療法という治療で治ることもないわけではないですが、ほとんどの場合、一生ものと考えた方がいいでしょう。また、感音性難聴の中でも、急性低音障害型や一部の突発性難聴は、早めに治療することで治るものも多いですが、騒音性難聴やムンプス難聴、遅発性内リンパ水腫、メニエール病などは治らないものが多いです。
これら、治らない病気については「仲良くつきあっていくしかありませんね。」という常套句も使いますが、治らないまでも、極力快適な日常生活を送って頂くための、最善の策を 患者さんと一緒に考えることが大事です。
患者さんは、もちろん治ることを期待して医者にかかります。医者は診察して検査して、患者さんの苦痛の原因が何なのかを調べ、治療にあたります。それで、期待されたとおりに病気が速やかに治れば、患者さんも医者も万々歳なのですが、残念ながら、治らない病気というのはいまだに多く存在します。その場合は、病気を治すということから、病気があっても快適に暮らすにはどうするかということに、医者も患者も目的を変えなければいけません。この切り替えがうまくいかないと、患者さんと医者との間で行き違いが生じます。患者さんは「これはもう治りませんよ。」といわれると、多くの場合失望してしまいます。その医者を見限って、民間療法や怪しげな宗教にはしったりします。そこまで行かなくても、主治医に相談することなく他の医療機関に変わったり(患者が医者を替える時を参照)、治療を中断してしまうこともあります。これは、そこまでに至る患者ー医者双方の努力を無駄にしてしまう、もったいないことだと思います。
以上お話ししましたように、病気には比較的早く治るもの、時間がかかるもの、治らないものがあるのですが、耳鼻科には時間がかかる病気や、治らない病気が、急性疾患のみを対象としている科に比べて多いのです。たまに「耳鼻科に一度かかると、ず〜っと通わされる。」という悪評を聞くことがあるのですが、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎などを治療の対象としている科としては、これはある意味仕方のないことなのです。
せめてこのブログの読者には、その辺の事情を理解して頂きたいと思い、今回の記事を書いてみました。
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今の大学病院に変わって、めまい専門医に初めて見てもらった時、その医師は、「私には治せない・・・」というような事をおっしゃいました。たぶん普通には「治らない病気です」と説明されるでしょうし、前の病院ではそういわれました。私は、その言葉に失望したのではなく、その逆、その時から自分が主体とならなければならないと、その時から変わったと思います。このニュアンス短文の中ではなかなか伝わらないかもしれませんが・・・(^^;;
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>osha-pさん、コメントありがとうございます。
仰ることはよく分かりますし、患者さん本人が、医者よりも主体的に病気に立ち向かわなければならないということに、賛同いたします。やはり一番の当事者は患者さんなのですから。
仰ることはよく分かりますし、患者さん本人が、医者よりも主体的に病気に立ち向かわなければならないということに、賛同いたします。やはり一番の当事者は患者さんなのですから。

我が子の小耳症のように生まれつきの疾患であれば、諦めもつくのしょうが、それでも聞こえる方法を日夜模索しています。
やはり基本としてどんな病気でも治したい意思は、誰しも同じだと思います。
私はとある病気で半年間入院した経験がありますが、病気は患っていた時間と同じか、それ以上に治療に時間がかかると言われました。
病気と真剣に向き合う意識と、医師を信頼することが何よりの近道だと思います。
あれっ?真面目なコメントは似合いませんか(笑)
やはり基本としてどんな病気でも治したい意思は、誰しも同じだと思います。
私はとある病気で半年間入院した経験がありますが、病気は患っていた時間と同じか、それ以上に治療に時間がかかると言われました。
病気と真剣に向き合う意識と、医師を信頼することが何よりの近道だと思います。
あれっ?真面目なコメントは似合いませんか(笑)
>バナナさん、おはようございます。
「真面目なコメント」ももちろん大歓迎です。
科学も医学も発展はしていますが、それでも残念ながら治らない病気というのはまだまだ多いです。
治らない病気に自分や家族がかかってしまったとき、嘆き悲しむのはもちろん当然のことですが、そこで悲観したままでいるのか、前向きに生きようとするのかで、その後の展開はだいぶ変わってくるものと思います。
(まあ、自分が患者の側になったら、それほど冷静にいられるか自信はありませんが。)
「真面目なコメント」ももちろん大歓迎です。
科学も医学も発展はしていますが、それでも残念ながら治らない病気というのはまだまだ多いです。
治らない病気に自分や家族がかかってしまったとき、嘆き悲しむのはもちろん当然のことですが、そこで悲観したままでいるのか、前向きに生きようとするのかで、その後の展開はだいぶ変わってくるものと思います。
(まあ、自分が患者の側になったら、それほど冷静にいられるか自信はありませんが。)

これはよく聞かれますね。何日の入院ですかというのも困った質問です。わたしは予想屋ではないといっていた研修医がいました。車の修理間隔でいつ完了しますかと聞かれると確かにこまることがあります。。。
>心療耳鼻咽喉科医さん、
一般的にどの位、という基準はありますが、やはり生身の人間では個人差もありますからねぇ、とにかく難しいです。予測しづらい場合には、率直に「一般的にはこのぐらいですが、色んな条件で変わります。」とか、「なかなか、無いケースなのでなんとも予測出来ません。」とか言うしかないのではと思っています。
車の修理感覚とは言えないまでも、当事者意識が少なく人任せの患者さんは,ちょっと困りますね。
一般的にどの位、という基準はありますが、やはり生身の人間では個人差もありますからねぇ、とにかく難しいです。予測しづらい場合には、率直に「一般的にはこのぐらいですが、色んな条件で変わります。」とか、「なかなか、無いケースなのでなんとも予測出来ません。」とか言うしかないのではと思っています。
車の修理感覚とは言えないまでも、当事者意識が少なく人任せの患者さんは,ちょっと困りますね。

榊原先生、はじめまして。県内某市に在住しております、契一と申します。
私は、痰が濃く(時々ほんの少し血が混じります)異様な味がしたので、県立病院の耳鼻科に2ヶ月前から通っているのですが、症状の改善が見られず、不安になっています。検査はファイバースコープによるものだけです。
私の親戚に、以前榊原先生に頭痛を伴う副鼻腔炎でしたかを見事に治していただいた者がおり、私も先生のご診断をぜひ仰ぎたいと思っています。
そのような理由で来院しては、先生や、私が今お世話になっている先生に対して、やはり失礼なのでしょうか。しかし、痛みも出てきた今、「別のお医者にかかっていれば!!」と後悔することだけは避けたいのです。
コメント欄でさせていただく質問ではないと思います、が、お電話でお尋ねするのもどうかと思いまして…。ご無礼を承知で、アドバイスを頂戴したく存じます。
私は、痰が濃く(時々ほんの少し血が混じります)異様な味がしたので、県立病院の耳鼻科に2ヶ月前から通っているのですが、症状の改善が見られず、不安になっています。検査はファイバースコープによるものだけです。
私の親戚に、以前榊原先生に頭痛を伴う副鼻腔炎でしたかを見事に治していただいた者がおり、私も先生のご診断をぜひ仰ぎたいと思っています。
そのような理由で来院しては、先生や、私が今お世話になっている先生に対して、やはり失礼なのでしょうか。しかし、痛みも出てきた今、「別のお医者にかかっていれば!!」と後悔することだけは避けたいのです。
コメント欄でさせていただく質問ではないと思います、が、お電話でお尋ねするのもどうかと思いまして…。ご無礼を承知で、アドバイスを頂戴したく存じます。
>契一さんへ
初めまして。
信頼してご相談いただいたのは嬉しいのですが、ネット上の医療相談は誤解が生ずる恐れがあるのでしないことにしています。
つきましては、副鼻腔炎一般について2,3日中に記事にして、それで答えとさせていただきますね。
(このような場合、”非公開コメント”をチェックしていただくと、私しか見られませんので、よろしいかと思います。)
初めまして。
信頼してご相談いただいたのは嬉しいのですが、ネット上の医療相談は誤解が生ずる恐れがあるのでしないことにしています。
つきましては、副鼻腔炎一般について2,3日中に記事にして、それで答えとさせていただきますね。
(このような場合、”非公開コメント”をチェックしていただくと、私しか見られませんので、よろしいかと思います。)

ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
07:17鍵さん、了解です。

ガンとかうつ病とかAWG電子照射機とか医療とか体の痛みを改善するマイナスイオン整体サロンについてのブログを書き出しました
まだ書き始めたばかりですが、トラックバックフリーにしてあるので、
よかったらいっぱいトラックバックして絡んでください
まだ書き始めたばかりですが、トラックバックフリーにしてあるので、
よかったらいっぱいトラックバックして絡んでください
>横浜のマイナスイオン整体サロン さんへ。
初めまして。ようこそいらっしゃいました。
残念ながら、私の立場としましては、ご紹介頂いたサイトの情報は
科学的根拠に乏しく、論理性にも欠けると判断いたします。
また、当ブログへのご感想もなく、ご自身のサイトの紹介だけで
あれば、書き込みをご遠慮頂ければ幸いと存じます。
初めまして。ようこそいらっしゃいました。
残念ながら、私の立場としましては、ご紹介頂いたサイトの情報は
科学的根拠に乏しく、論理性にも欠けると判断いたします。
また、当ブログへのご感想もなく、ご自身のサイトの紹介だけで
あれば、書き込みをご遠慮頂ければ幸いと存じます。

患者さんにしっかり説明をされていないから,「いつになったら、治るんですか?」とか、「いつまで通わなくちゃいけないんですか?」て言われてるところもあると思いますよ。
人に応じた説明をきちんをされているかどうか、その見直しが急務であることを、患者さんの言葉から読み取ってください。
人に応じた説明をきちんをされているかどうか、その見直しが急務であることを、患者さんの言葉から読み取ってください。
>やすよさん、はじめまして。そしてようこそいらっしゃいました。
患者さんが治療期間に不満を持つ場合、考えられる原因は
本文中にも書きましたが、いろいろあります。
「医者が最初に説明しなかったか、説明しても患者さんが
理解できなかった場合。」
「治療期間につては説明を受けたが、患者さん本人の見込みと
大いに食い違った。(自分ではたいした病気じゃないと思っていたが
意外にやっかいな病気だった場合など。)」
「患者さんが、医者の指示通りに服薬しなかったり、
生活上の注意を守らなかったりしたため、治りにくくなった場合。」
「病気が当初予想された典型的な経過をとらない、特殊なタイプ
だった場合。」
などなど、様々です。
以上のように治療期間や治り具合に不満が生じるのは、
医者、患者、病気の性質などに原因があり、全てのケースを
一方的に、医者の説明不足のせいにするのは、ちょっと違うんじゃ
ないかと思いますよ。
患者さんが治療期間に不満を持つ場合、考えられる原因は
本文中にも書きましたが、いろいろあります。
「医者が最初に説明しなかったか、説明しても患者さんが
理解できなかった場合。」
「治療期間につては説明を受けたが、患者さん本人の見込みと
大いに食い違った。(自分ではたいした病気じゃないと思っていたが
意外にやっかいな病気だった場合など。)」
「患者さんが、医者の指示通りに服薬しなかったり、
生活上の注意を守らなかったりしたため、治りにくくなった場合。」
「病気が当初予想された典型的な経過をとらない、特殊なタイプ
だった場合。」
などなど、様々です。
以上のように治療期間や治り具合に不満が生じるのは、
医者、患者、病気の性質などに原因があり、全てのケースを
一方的に、医者の説明不足のせいにするのは、ちょっと違うんじゃ
ないかと思いますよ。
by jibikai
| 2006-09-09 15:13
| 耳鼻科全般
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