急性副鼻腔炎(その2) 〜診療シミュレーション〜

前回に引き続いての診療シュミレーション。
患者Aさんが、初診から3日経って受診しました。

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医師「具合はいかがですか?」
Aさん「少しは楽になってきたようです。」

医師「鼻汁の量はどうですか。」
Aさん「量は同じぐらいですが、色は薄くなってきました。でも、朝かむと、まだ、”ネギッパナが出ます。」

医師「はなづまりは、どうですか?」
患者「少しはいいです。」

医師「頬のあたりの痛みは?」
Aさん「最初は痛み止めを飲んでましたが、昨日ぐらいからは飲まなくとも大丈夫みたいです。」

医師「分かりました。じゃあ、今日も治療しますね。」
Aさん「え〜、またあの鼻をジュ〜って吸うやつ、やるんですか?あれ、出来れば止めて欲しいんですけど、やらないとダメですか。」

医師「まあ、必要だからやってるわけで......、 それに治療の後は鼻が通って気持ちよかったでしょ?」
Aさん「まあ、そうなんですけど、何か鼻が引っ張られる様な感じがどうも苦手で。それに、昨日の説明はどうも言葉だけでよく分かりませんでしたから、なんで週に何度も通わなくちゃいけないのか、鼻を吸わなくちゃいけないのか、ちゃんと説明して下さい。」

医師「わかりました。そういうと思って、昨日は間に合いませんでしたが、今日は図を用意してますので、それで説明しましょう。
Aさん「用意がいいですね。」
急性副鼻腔炎(その2) 〜診療シミュレーション〜_e0084756_1158188.gif

医師「えぇ、まあ、、、、、。
まず上の図の様に副鼻腔というのは、額、目の内側、頬とあとそれから、正面から見たのでは分からないのですが、鼻の真後ろに広がっている、骨の中の空間で、それぞれ鼻とつながっているんですよ。」
Aさん「それは前回も聞きましたが、何でそんな部屋があるんですか?」
医師「それは、顔面の骨を軽くするためだとか、声が響くようにするためだとか、いわれていますが、本当のところはよく分かりません。」

Aさん「小さい子供にもあるんですか?」
医師「赤ちゃんでは、ごく小さな上顎洞があるだけですが、成長に伴ってどんどん副鼻腔のスペースが広がっていきます。10代なかばでほぼ完成というところでしょうか。」

Aさん「私は何で副鼻腔炎になったんですか。」
医師「急性副鼻腔炎というのは、広い意味で言えば風邪引きの状態では、ごく当たり前に起こるんですよ。」
急性副鼻腔炎(その2) 〜診療シミュレーション〜_e0084756_11592459.gif

医師「それは鼻からカゼの細菌が直接侵入したり、カゼのウイルスによって鼻の粘膜や副鼻腔の粘膜の免疫力が低下したりするからなんですよ。ところが、大抵は知らず知らずのうちに副鼻腔炎は治っているわけです。カゼをこじらせた時、しばらくネギッパナが続きますが、その後、またさらさらの鼻水になって治っていくってことあるでしょう?」
Aさん「まあ、普通にありますね。」
医師「それは、一旦は副鼻腔炎の状態になっても、副鼻腔の粘膜には自分でキレイになろうとする働き:粘液絨毛運動輸送機能  っていうのがあって、侵入した細菌や異物や鼻汁を追い出していくからなんですよ。」

Aさん「なるほど。でも今回、何でこんなに長引いて、しかもひどくなったんでしょう?」
医師「それは、”自分でキレイになろうとする能力”の限界を超えたからでしょう。
鼻炎がひどくなると、まず鼻と副鼻腔の間の通路(自然孔)が塞がってしまいます。
そうすると、副鼻腔の粘膜が正常に機能しなくなり、だんだん腫れてくるんですよ。
そうすると、ますます鼻と副鼻腔の間の通路が狭まってしまいますし、
こんどは、出るところを失った膿が副鼻腔の中に貯まってきます。これぐらいになると、もう自力での復旧がまず難しく、医療の力を借りなくてはならないわけです。」

Aさん「私の場合、そんな感じになっているわけですね。」
医師「そうです。ですから、まず鼻から副鼻腔への通路を何とか確保するために、鼻に薬を噴霧したり、貯まった鼻汁をジュ〜ッと吸うのは、必要なんですよ。」

Aさん (しぶしぶ) 「わかりました。それで、今後の見通しはどうなんでしょう。」
医師「Aさんの場合、鼻茸(ポリープ)が出来ているわけでもありませんので、おそらく2〜3週間の通院で治る見込みですが、人によっては手術が必要になったりすることもあります。」

Aさん「わかりました。じゃあ、しばらく通うことにします。」

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というわけで、次回「急性副鼻腔炎 その3」へと続く...............

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Commented by 心療耳鼻咽喉科医 at 2006-10-08 03:16 x
ちょうど急性副鼻腔炎で困っている方がいたのでお教えしました、風邪のあと多い時期になってきましたね。私は忙しい方で難治の場合は点滴をしてしまっています。結果的にかんじゃさんは通院しないですみ満足していることが多いようです。
Commented by jibikai at 2006-10-09 09:53
>心療耳鼻咽喉科医さん、コメントありがとうございます。
急性副鼻腔炎は広義のを含めると、多くの方が罹患している
わけですが、なかなか概念としてわかりにくいので、どうしたら、
分かりやすく説明できるか、考えています。
この病気も、壮年層に多いようですので、忙しい方をどう治療するかが
問題かなとも、思っています。
そうですね。難治の場合は点滴もいいかもしれませんね。
by jibikai | 2006-10-06 12:34 | 鼻のはなし | Comments(2)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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