ネットと医療(前編)
2007年 05月 08日
私事になりますが、GW合間の5月1日の夕方、もうすぐ仕事も終わりで、(当院は水曜が休診なので)5連休に突入しようというその直前、急に右手の人差し指が爪のまわりから腫れだし、痛みも出てきました。診療にはさほど支障なく、なんとか無事に仕事は終えることができましたが、その後も指先の腫れはひどくなり、人差し指にもかかわらず、親指ぐらいの太さになるし、皮膚の色も赤黒い感じでまずい雰囲気でした。そういえば2,3日前に爪の縁にできた”ササクレ”を引っ張ってはがしたことを思い出し、さらに悪いことに前日庭仕事をしたことなどが、原因として想像できました。
普通の日だったら、悪くなったら翌日にでも近くの皮膚科の先生に診てもらえばいいわけですが、あいにくの連休でしたし、私自身、家族と出かける予定もしておりましたので、できれば自分で何とか治療したいと考えたのです。

そこで、まずしたことといえば、ネット検索。キーワードを”指”、”爪”、”ささくれ”、”感染”として入力、痛い指でマウスをクリックしたら、結構な数のサイトがヒットしました。大きく分けると患者の立場で書いているブログ、ネイルケアやネイルアートなどの紹介のサイト、医療者による解説などです。いくつかの信頼できそうなサイトを見てみると、診断は「爪周囲炎」か「ひょう疽」ということになるこがわかりました。原因は細菌感染(まあ、それは最初から分かっていましたが)。治療は、抗生剤の内服あるいは点滴(まあ、これも妥当)。あと問題は、外科的治療の仕方で、膿を出すために切開した方が良いのかどうか、切開するにはどこを切開すべきかなど、まあ、いろんな意見がありました。爪も剥がした方が良いとか、剥がさなくて良いとか相反する意見もありました。
さらには、炎症がひどくなった場合、指が変形したり爪がダメになって剥がれる場合もあることを知り、正直言って少しビビリました。
結局どうしたかというと、自分の医院内で左手にメスを持って切開(と言ってもちょっとだけです)して、膿を出し抗生剤はセフェム系のを連休中の数日間内服して、何とか事なきを得ました。
ネットがこれだけ普及する前であれば、おそらく医学書を紐解いたと思うのですが、やはり現代においては、ネット検索した方が早く、多くの、しかも新しい情報にアクセスすることができます。ただ今回、患者(と言ってもたいしたことないですが)の立場になって思ったことは、ネット上の情報は多いだけに、真偽と言いますか、自分にとって役立つ情報なのか、ひょっとしたら役立たないどころか、有害な情報もあり、その見極めが難しいということです。その場合は一つのサイトの情報にだけ頼るのではなく、いくつかの情報源に当たってみて、より標準的で論理的なものを選んでいく必要があると思います。
まあ今回の私のケースは単純で、ササクレを剥がしたところから感染を起こしたのだろうと容易に想像できましたし、治療も抗生剤で細菌をたたくことと、貯まった膿を抜くことにつきますから、ネットではそれを確かめただけですので、あまり変な情報には惑わされませんでした。しかし、医療従事者でもない一般の方が、全く予備知識もないような疾患について調べようとした場合はどうなのでしょう。もしかしたら、誤った情報を植え付けられ、誤った処置をしてしまう可能性はないのだろうかと心配になりました。
一方では、自分もこうやって、ブログやホーム・ページで医療に関する情報を発信している立場でもあります。ブログという性質上、面白さや即時性も大事にしていかなくてはいけませんが、それと同時に自分のところを訪問してくださる方に、確かな情報を提供していく責任があるとあらためて思った次第です。

現在の問題の指の様子。切開した創の周囲の皮膚は固くなり、一旦剥がれ、綺麗になりつつあります。みなさんも、くれぐれも”ササクレ”は引き剥がそうとしないようご注意下さいね。
ランキングに参加しています!
この記事が参考になったら、ポチッと押してください。
☆人気ブログランキング(病院・診療所部門)へ☆
一日一回のご協力、毎度ありがとうございます m(_ _)m
普通の日だったら、悪くなったら翌日にでも近くの皮膚科の先生に診てもらえばいいわけですが、あいにくの連休でしたし、私自身、家族と出かける予定もしておりましたので、できれば自分で何とか治療したいと考えたのです。

そこで、まずしたことといえば、ネット検索。キーワードを”指”、”爪”、”ささくれ”、”感染”として入力、痛い指でマウスをクリックしたら、結構な数のサイトがヒットしました。大きく分けると患者の立場で書いているブログ、ネイルケアやネイルアートなどの紹介のサイト、医療者による解説などです。いくつかの信頼できそうなサイトを見てみると、診断は「爪周囲炎」か「ひょう疽」ということになるこがわかりました。原因は細菌感染(まあ、それは最初から分かっていましたが)。治療は、抗生剤の内服あるいは点滴(まあ、これも妥当)。あと問題は、外科的治療の仕方で、膿を出すために切開した方が良いのかどうか、切開するにはどこを切開すべきかなど、まあ、いろんな意見がありました。爪も剥がした方が良いとか、剥がさなくて良いとか相反する意見もありました。
さらには、炎症がひどくなった場合、指が変形したり爪がダメになって剥がれる場合もあることを知り、正直言って少しビビリました。
結局どうしたかというと、自分の医院内で左手にメスを持って切開(と言ってもちょっとだけです)して、膿を出し抗生剤はセフェム系のを連休中の数日間内服して、何とか事なきを得ました。
ネットがこれだけ普及する前であれば、おそらく医学書を紐解いたと思うのですが、やはり現代においては、ネット検索した方が早く、多くの、しかも新しい情報にアクセスすることができます。ただ今回、患者(と言ってもたいしたことないですが)の立場になって思ったことは、ネット上の情報は多いだけに、真偽と言いますか、自分にとって役立つ情報なのか、ひょっとしたら役立たないどころか、有害な情報もあり、その見極めが難しいということです。その場合は一つのサイトの情報にだけ頼るのではなく、いくつかの情報源に当たってみて、より標準的で論理的なものを選んでいく必要があると思います。
まあ今回の私のケースは単純で、ササクレを剥がしたところから感染を起こしたのだろうと容易に想像できましたし、治療も抗生剤で細菌をたたくことと、貯まった膿を抜くことにつきますから、ネットではそれを確かめただけですので、あまり変な情報には惑わされませんでした。しかし、医療従事者でもない一般の方が、全く予備知識もないような疾患について調べようとした場合はどうなのでしょう。もしかしたら、誤った情報を植え付けられ、誤った処置をしてしまう可能性はないのだろうかと心配になりました。
一方では、自分もこうやって、ブログやホーム・ページで医療に関する情報を発信している立場でもあります。ブログという性質上、面白さや即時性も大事にしていかなくてはいけませんが、それと同時に自分のところを訪問してくださる方に、確かな情報を提供していく責任があるとあらためて思った次第です。

現在の問題の指の様子。切開した創の周囲の皮膚は固くなり、一旦剥がれ、綺麗になりつつあります。みなさんも、くれぐれも”ササクレ”は引き剥がそうとしないようご注意下さいね。
ランキングに参加しています!
この記事が参考になったら、ポチッと押してください。
☆人気ブログランキング(病院・診療所部門)へ☆
一日一回のご協力、毎度ありがとうございます m(_ _)m

先生こんばんは。
文章を読んだだけで痛そうです。
誤った情報→誤った処置。確かにあると思いますが、結果、もし病気が良くならなかったとしても「情報自体が誤っていた」のか「自分の情報選択が間違っていた(自己診断ミス)」なのかも分からないと思いますよ、一般人。
先生のような考えのもと運営されているっていう点でも非常に貴重な場所と思います。これからもお世話になります♪(一般人は勝手です。すみません(笑))
大分良くなられたのでしょうか?どうかお大事に♪ では♪♪
文章を読んだだけで痛そうです。
誤った情報→誤った処置。確かにあると思いますが、結果、もし病気が良くならなかったとしても「情報自体が誤っていた」のか「自分の情報選択が間違っていた(自己診断ミス)」なのかも分からないと思いますよ、一般人。
先生のような考えのもと運営されているっていう点でも非常に貴重な場所と思います。これからもお世話になります♪(一般人は勝手です。すみません(笑))
大分良くなられたのでしょうか?どうかお大事に♪ では♪♪
0

ん~これって痛くて指が熱いんですよね。怖い怖い
ネット検索:確かに便利ですが、はたしてそれが正しい情報なのか
独りよがり的なものなのか判断が難しいですね。
まして命に関わることとなると・・。
友人の親が癌になり食事療法をネットで調べ、疑問あるご飯を食べ続けています。
自分の情報採取フィルターを何処まで細かくするのか、しっかり認識しないといけませんね。
ところで、指はスパイダーマンに治してもらったのですか(笑)
ネット検索:確かに便利ですが、はたしてそれが正しい情報なのか
独りよがり的なものなのか判断が難しいですね。
まして命に関わることとなると・・。
友人の親が癌になり食事療法をネットで調べ、疑問あるご飯を食べ続けています。
自分の情報採取フィルターを何処まで細かくするのか、しっかり認識しないといけませんね。
ところで、指はスパイダーマンに治してもらったのですか(笑)
>ちょこさん、こんばんは。医療に限らず、現在は情報の量はネットを上手く使えば多く得られるようになりましたが、これからの問題は情報の質の向上ということになるでしょうね。今は色んな情報が入り乱れていますので、取捨選択が本当に難しいです。いずれ、サイトを評価するような機関も出来てくるような気もするのですが、何を基準に評価するのかなど、また別の問題も出て来そうですね。
ところで、指の方は大分良くなりました。ご心配いただき、ありがとうございます(^^)
ところで、指の方は大分良くなりました。ご心配いただき、ありがとうございます(^^)
>ばななさん、こんばんは。まあ、馬鹿馬鹿しいといいますか、単なる不注意からなった病気なので、お恥ずかしい限りなのですが、ネットで医療情報を得ようとしたエピソードとして例示してみました。
>「自分の情報フィルター」
そう、そのフィルターを確かなものにしていかないと、不利益を被る可能性もあるし、もしそうなって、サイトの管理者を訴えたところで、多分自己責任としてかたづけられる可能性が高いと思うのです。
まあ、逆に情報を発信する立場からすれば、報酬を得ているわけでもないので、訴えられたらたまったものではない、ということになりますが、でも読者や訪問者への影響は考えていかなくちゃならないでしょうね。
(スパイダーマンの写真は、”ネット”に掛けたつもりでした・・・・汗。
分かりにくかったですね。こりゃまた、スッパイダー・・・・・滝汗。)
>「自分の情報フィルター」
そう、そのフィルターを確かなものにしていかないと、不利益を被る可能性もあるし、もしそうなって、サイトの管理者を訴えたところで、多分自己責任としてかたづけられる可能性が高いと思うのです。
まあ、逆に情報を発信する立場からすれば、報酬を得ているわけでもないので、訴えられたらたまったものではない、ということになりますが、でも読者や訪問者への影響は考えていかなくちゃならないでしょうね。
(スパイダーマンの写真は、”ネット”に掛けたつもりでした・・・・汗。
分かりにくかったですね。こりゃまた、スッパイダー・・・・・滝汗。)
(^^)/ ↑なるほど「ネット」なんですね、うけました(^^)v
ハイ、これはまさしく私の問題です。
ネット上に現れる体験談などの情報は、全体のほんの一部ですよね。ネット情報を鵜呑みにしないようにとは注意を書いていますが、一部とわかってはいてもいいらしい情報があれば、藁をもつかむ心境の人は心動かされます。
その道に秀でたお医者さんでも治療に対する考え方が違ってくるので、確たる治療法がない疾患のネット情報はより複雑かもしれませんね。
めまいという疾患は特に信頼できるお医者さんと十分な相談ができる環境、、、いいと思われるネット情報も専門家の目を通して吟味してもらえる環境があるといいのですが、診察時間が少ない事もあってなかなか思うようにはいかないですね。
ハイ、これはまさしく私の問題です。
ネット上に現れる体験談などの情報は、全体のほんの一部ですよね。ネット情報を鵜呑みにしないようにとは注意を書いていますが、一部とわかってはいてもいいらしい情報があれば、藁をもつかむ心境の人は心動かされます。
その道に秀でたお医者さんでも治療に対する考え方が違ってくるので、確たる治療法がない疾患のネット情報はより複雑かもしれませんね。
めまいという疾患は特に信頼できるお医者さんと十分な相談ができる環境、、、いいと思われるネット情報も専門家の目を通して吟味してもらえる環境があるといいのですが、診察時間が少ない事もあってなかなか思うようにはいかないですね。
>osha-pさん、患者サイドに立ってみると、今までに経験したことがないような身体の不調が急に起こった場合、まずはネット検索することが多いんじゃないかと思いました。重篤な場合はすぐ医者にかかるべきでしょうが、それほど切迫していない場合や、私のケースのように連休前なんていう場合は、医者にかかるほどものかどうか、原因、治療法などを調べるために、PCを立ち上げる人は想像以上に多いんじゃあないかなと思った次第です。
その際、一番問題になるのが、ヒットしたうちのどのサイトを見るか、信じるかということになろうかと思います。現在のところその辺の指標が全くないため、患者サイドからすると怪しげな情報を上手くかいくぐって、目的とする情報にたどり着くのはなかなか大変そうです。
その際、一番問題になるのが、ヒットしたうちのどのサイトを見るか、信じるかということになろうかと思います。現在のところその辺の指標が全くないため、患者サイドからすると怪しげな情報を上手くかいくぐって、目的とする情報にたどり着くのはなかなか大変そうです。
by jibikai
| 2007-05-08 16:40
|
Comments(6)