聴力検査〜その5〜
2007年 07月 23日
まずは、混合性難聴の例として、慢性中耳炎のちょっと進行した状態を想定してみました。

慢性中耳炎は、中耳の炎症を繰り返した結果、鼓膜に穴が開いたり耳小骨のつながりが壊れたりします。そのため、まずは伝音性難聴となるのですが、さらに病状が進行しますと、内耳にも炎症が及びますので、骨導値も低下して「混合性難聴」という状態になります。伝音難聴単独では高度難聴(60 dB以上)となることはないのですが、このように骨導値の閾値上昇を伴った混合性難聴となりますと、高度難聴となることも多いです。
また、慢性中耳炎に対しては聴力改善を目的とした手術(鼓室形成術)が行われることもありますが、これは伝音系の改善を目的とした手術ですので、理論的にはA-B gap(気骨導差)の分は良くなる可能性があります。ですから、骨導値の良好な場合ほど、手術で聴力の回復する可能性が高いということになります。
今日はさらに、感音性難聴の例をいくつか紹介します。
まずは低音障害型感音性難聴の例。

右側の例を挙げてみましたが、もちろん左のこともありますし、頻度としては多くはないのですが、両側性の場合もあり得ます。
感音性難聴では、気導と骨導がほとんど同じレベルでして、言い方を変えれば、A-B gap(気骨導差)がないということになります。
周波数125から500 Hzまでの低音のみ聴力低下して、高音部は正常か、反対側と同じレベルを示します。
高度難聴となることはなく、通常、悪くても40 dB程度まででとどまります。
メニエール病に伴う難聴も最初は図のような、低音障害型を示すことが多いのですが、病状が進行しますと比較的周波数の高い音も傷害されてきますので、水平型になることも多いのが、低音障害型感音性難聴との相違点です。
感音性難聴は、他にも色々な原因で起こりますが、実は一番多いのは、加齢による変化です。

いわゆる老人性難聴で、高音になればなるほど閾値が高くなりますので、右下がりのオージオグラムとなります。両耳とも同じ経過を取りますので、左右対称のパターンとなります。
最後に、騒音性難聴の例を示します。

ちなみに健康診断や人間ドックなどで聴力検査を行う場合、4,000 Hzを調べるのは、この騒音性難聴を見つける意味合いが大きいからなのです。
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以上、5回にわたって解説して参りました聴力検査もとりあえずここで一段落です。
聴力検査は単に難聴の程度を知るだけでなく、オージオグラムのパターンや、気骨導差を見ることで障害部位や原因も想定できる、有用かつ重要な検査なのですが、聴力という目にはは見えない物を扱う分、理解しづらいものです。拙い説明ではありましたが、なんとなくでも聴力検査というものに、興味や理解を持って頂けたらうれしく思います。
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明らかな治療法はない代わりに?理由はわからないけれど、けっこうよくなってたり、、、ですね。今のレベルが続いているので、今後も変わらないといいのですが、老人性難聴だけはしかたがないかもしれませんね(って、そういう傾向はすでにありますが、、、(^^;;
耳鼻科の病気は、粘膜の色とか形など、見た目で判断するものが比較的多いのですが、難聴やめまいは例外で、目に見えない病態を想像していくことが必要になってきます。
特に耳閉感などは、外耳、中耳、内耳いずれの病気でも起こりますので、鑑別診断に聴力検査は非常に重要になってきます。また、めまいの患者さんでは、自覚的な難聴がなくとも聴力検査をルーチンに行いますが、それで片側の難聴があった場合などは、めまいと関係があるのかないのか、悩むケースも多いです。

さてご質問ですが、お話から推測するには、感音難聴との
診断になろうかと思います。子供の感音性難聴の場合、先天性でなければ、ウイルス性(たとえばおたふく風邪のウイルスなど)のものが多いと考えられますが、確定するのは難しいことが多いです。
ほとんどの感音性難聴は、発症後 2週間を超えると治りにくく、主治医の先生のおっしゃる通りかと思います。したがって、
ビタミン剤などのあまり副作用のない薬で、様子を見るのが一般的です。
早く診せなかったことを後悔していらっしゃるようですが、
それよりも、聴力が残っているのなら、それ以上悪くならないように、また、良い方の耳を大事にする意味からも、今後は主治医の先生の指示通りに受診することとが重要のように思います。

子供は昨日も今日も友達から声をかけられたけれど、名前の一部しか聞き取れなかったと泣いています。どうしたいいのか・・・嘆き悲しんでもいられませんので気丈に振舞おうとすればするほど、悲しさが倍になって跳ね返ってきます。
先生が仰るようにがんばってみます。
ご相談に関し、回答いただきまして、ありがとうございました。
内耳性難聴に対する薬でしたらば、特に解熱剤との飲み合わせが
問題になることは、まずないのですが、処方の詳細が不明ですので、責任あるお答えは出来かねます。悪しからず。
友達から話しかけられて、一部しか聞き取れなかったとの
ことですが、難聴と診断されて間もないので、特に強く意識して
しまっているということはないでしょうか?
例えば、教室の席順や、先生には出来るだけはっきり話して
もらうなど、配慮してもらうことは必要でしょうし、家族も
聞こえやすい方の側から話しかけるなど、気を付けなければ
なりません。しかし、それ以上 特別扱いしたり、親が落ち
込んでも、あまりよい結果にはならないように思います。
聞こえの悪いことで、現実的にどのようなハンデがあるのか、
それを克服するのにはどうしたらよいのかを、前向きに考える
しかないように思います。


低音障害型感音難聴だった場合、繰り返すことはたまにあります。
また、メニエール病の初発だった場合も、自閉感や聴覚過敏が
ある一定期間の後、再発することもあります。
一回で治ってしまうのか再発するかの予測は、なかなか難しいようです。

まず、前のレスの”自閉感”→ ”耳閉感”に訂正させてください・・
さて、
音楽は普通の音量であれば、問題ありません。ただし電車の中など
元々騒音があるところでは、携帯型プレーヤーのボリュームを
ついつい大きくしがちなので注意が必要。
千葉のテーマパークは問題ないと思いますが、大きく揺れる
アトラクションだけは止めておきましょう。
普段心がけることはストレスを避けることと、後は適度な運動と
いうところでしょうか。

まずGのきついアトラクションはめまいを引き起こす可能性があるので、
内耳のトラブルがある人は原則的にやめておいた方が無難。
適度な運動の量は、人によっても違うでしょうが、軽く汗ばむ
程度に週3,4回位というところでしょうか。
カラーリングについては、聞いたことがなく何ともコメントしかねます。

了解です。

検査は聴力検査のみ。
10年以上前から耳鳴りがしていて、だんだんひどくなってきている
そうです。受診した耳鼻科では3ヵ月後にもう1度聴力検査をします。と、言われたのですが、それまで何も治療や検査をしなくてもいいのか心配です。
早期治療が回復の決め手にはならないのかな・・・と。
教えていただけたらありがたいです。
混合性難聴ですと、想定される疾患も色々ですし、
複数の病態が重なっており、複雑です。
従いましてこのようなコメント欄で、どうのこうのということは
差し控えさせていただきたいと思います。
お役に立てないことは申し訳ないのですが、診察せずに診断する
ことは不可能ですし、よって具体的なアドバイスも出来ないことを
ご了承下さい。
診察は受けられているようですから、主治医の先生の判断に
委ねるか、それで不安がおありでしたら、他の医師の意見も
聞いてみるしかないのではないのでしょうか。

何か他の病気の可能性等の話もしてくれず、
落ち着いて話も聞けないから不安・・・。と言いますので、
もう少し大きい病院に診察に連れて行ってきます。
このサイトのように、病院の先生がコメントにお返事をくださるだけで患者側には大きな安心につながっていきます。
改めて御礼申し上げます。