アレルギー性鼻炎の抗体検査

アレルギー性鼻炎の診断にはいくつかのステップがありまして、まずは問診でくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痒みなどのアレルギー症状の有無や程度を聞くことから始まり、次に、鼻の中の視診で粘膜の状態などを診たり、鼻水の中の細胞を調べてアレルギー反応が起こっているかどうか調べたりします。そして最後にアレルギー性鼻炎が強く疑われる方には、何が原因のアレルギーか調べるために、抗原検査というものを行うわけです。
前々回の記事『耳鼻科開業医を受診する患者さん』でも書きましたとおり、初診時にアレルギー性鼻炎と病名の付く方は非常に多いです。(下の図:左の円グラフ)
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ただしその中には、疑い例、非常に軽症の方、すでに検査済みの方や、検査を希望しない方もいらっしゃいますので、最後の抗体検査まで受けられている方はアレルギー性鼻炎と病名の付いた方のうちの36 %にあたる2,176例でした。(右の円グラフ)割合からするとさほどではないのですが、総数としては結構な数の患者さんの抗原検索をしたことになります。開業医のデータとしてはトップクラスと自負しております。
当院ではアレルギー性鼻炎では、ほとんどの方に抗原検索を勧めています。なぜなら、アレルギーの治療はまずは原因抗原を避けることから始まりますので、自分が何に反応しているのかを知るのは非常に重要だからです。よく血液検査による抗体検査は金額が高いので、患者さんのコストも大きいということで否定的な意見を言う方もあるのですが、それは10数種類も調べるからであって、抗原の種類を絞り込んで検査すれば、患者さんの自己負担もさほど大きくはなりません。ちなみに当院で調べるのは、基本的にはスギ、ダニ、イネ科、キク科雑草の4種類だけです。1種類のコストが1、100円ですから、4倍で4,400円、それに診断料というものが1,440円ついて、全部で5,840円。3割負担の患者さんなら、1750円(端数切り捨て)です。ほとんどの方が1度だけやれば十分な検査ですから、1,750円で自分を苦しめている抗原(アレルゲン)が分かれば、コストパフォーマンスは悪くないと思うのですが・・・・

話が横道にそれました。ここからが今日の本題、アレルギー性鼻炎の原因として何が多いのかを調べるために、当院で特異的IgE検査を受けていただいた2,176例の方を対象に、抗体陽性率というのを調べました。特異的IgEというのは特定の抗原に反応する抗体で、繰り返し抗原を吸入することで、血液中に増えてきて、ある一定量を超えると発症してくるわけです。特異的IgEが高いからといって、全員が発症するわけではないのですが、IgE値が高ければ高いほど、発症している方の頻度が大きくなります。
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当院で基本的に調べている、スギ、ダニ、イネ科(カモガヤ、ホソムギなど)、キク科(ヨモギ、ブタクサなど)の4種について、抗体陽性率をみますと、スギ65.5%、ダニ 40.7%、イネ科 38.2%、キク科雑草 23.2%という結果でした。抗原が陽性だからといって必ずしも発症しているわけではないのですが、この中から一定の割合ですでに発症しているか、あるいは今後発症してくる方のあることを考えますと、やはり、アレルギー性鼻炎の中ではスギ花粉症の方が一番の多いということが言えると思います。

大分長くなりましたので、今日はこの辺まで。
Commented by ちょこ at 2007-09-01 19:34
先生こんばんは。
自分の理解力の無さを棚に上げて、図々しくも一言。(先に謝っておきます、ごめんなさい!)
ちょっと内容を把握するのに、時間がかかってしまいました。。。

検査を受けた人数と割合から逆算して、最初のベースが約12,000人であり、10年間の受診者数であることは分かったのですが、「アレルギー性鼻炎」という病名を ”諸検査後に確定” させるものだと思っていたので・・・。
病名の有無?最初の半数(6,000人)は抗原を特定する検査を受けなくても、問診と視診で「アレ鼻」と確定して分類されているという事でしょうか?
私のイメージでは「約半数がアレ鼻疑い、疑いの内3分の1が確定」なのかな?と。
あれ?根本的な所があんまりよく分かっていないようです。すみません。。。

しかし、12,000人となると統計をとるのも大変そうですね。お疲れ様でした。。。では♪
Commented by jibikai at 2007-09-03 08:47
>ちょこさん、ちょっと私の説明がわかりにくかったのかも知れません(汗)。
かいつまんでいえば、12,000余名中、アレルギー性鼻炎(疑い例も含んで)という病名が付いた人(問診と視診で)が半数近くいて、その内の36%は検査を受けているということですので、解釈は間違っていません。抗体検査は確実例の方に受けるよう勧めていますが、例外は他の所ですでに検査済みの場合と、小さい子の場合です。だから、症状と鼻の中の視診などで確実例となった方は、抗体検査を受けた方よりも、もう少し多いということになります。
Commented by peanut-street at 2007-09-05 13:41
我が子は猫とハウスダストアレルギーで
背中に数箇所軽く傷をつけての検査でした。
統計大変ですが数字が見えるとおもしろいですね。

さて小耳症交流会が無事、終えることができ
先生から頂いた資料も皆さん興味深く見ていました。
ありがとうございます。
今はほっと虚脱している私です。
Commented by jibikai at 2007-09-05 21:22
> peanut-streetさん、交流会おつかれさまでした。
実りある会になったようで、何よりです。

ところで、今回のデータには出していませんが、ネコアレルギーは結構多く、おそらくペットによるアレルギーでは一番多いと思われます。
しかもダニ・ハウスダストアレルギーを合併している方も多いです。

既に飼っているものは仕方ないので、掃除をまめにするよう奨めるぐらいしかできません。
by jibikai | 2007-08-31 12:06 | 花粉症・アレルギー | Comments(4)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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