扁桃のお話し〜どんなときに手術が勧められるのか?〜
2007年 11月 07日

今年の紅葉は夏があまりにも暑すぎたせいか、ぱさぱさした感じであまり綺麗じゃないという評判ですね。ちょっと残念です。
さて、久しぶりの耳鼻科的な話題として、扁桃(へんとう)の話でもしてみたいと思いますので、興味のある方はおつきあい下さい。
扁桃については以前にも、扁桃炎と病巣感染症という記事を書いたことがあるのですが、アクセス解析やコメントを見ますと扁桃についての事項も意外と多いので、改めて記事にすることにしました。

陰窩には時として食物のカスが転がり込んだり、扁桃のリンパ球に殺された雑菌の死骸などが貯まります。これを膿栓(のうせん)というのですが、たまに口の中にポロッと出てきて、何だろうと指で押しつぶしたりすると、あまりの臭さにビックリすることも多いようです。これを一般的には「臭い玉」というようなのですが、この呼び名は実は最近になって知りました。某有名掲示板などに「臭い玉」専用スレッドが立ち上がっているときもあり、膿栓の話で盛り上がっていたりするのは、耳鼻科医としては非常に興味深いです。
さて、膿栓もたまに口に出てくるとか、1、2個扁桃にくっついていたりするのはあまり問題にはならないのですが、例えば化膿性扁桃炎ではひどくなりますと膿栓がびっしりとくっつきますし、扁桃は赤く腫れ上がります。

また、扁桃炎による咽の痛みや高熱を繰り返すがあります。習慣性扁桃炎というのですが、年に4、5回以上繰り返す場合や、溶連菌(溶血連鎖球菌)による扁桃炎を繰り返す場合には、扁桃摘出術という手術が勧められます。これは、全身麻酔のもと、扁桃を取る手術なのですが、入院を必要とします。大人の場合は2週間程度、子供はそれよりも少し短くて10日程度の入院が一般的かと思います。手術後に起こりえる合併症としては、後出血(ごしゅっけつ)と言って、扁桃を取った傷からの出血が、まれに起こりえます。なお扁桃は口の方から取りますので、首に傷が残るとか、そんな心配はありませんし、声にもまず影響することはありません。

さらにもう一つ、扁摘が勧められる疾患としては掌蹠嚢胞症などの病巣感染症というものがあります。これについては、以前の記事に書いた通りなので詳細は省略しますが、手術のやり方としては同じです。
さて、以上に書きましたとおり、扁摘は主には「習慣性扁桃炎」、「睡眠時無呼吸を起こすほどの扁桃肥大」、「病巣感染症」の時などに勧められるわけですが、自分に当てはまる様だと思った場合はどうすればよいでしょうか。まずは、耳鼻科の医院か病院の耳鼻科を受診して相談してみましょう。もちろん「すぐに手術しましょう。」とはなるわけではありませんからご安心を。手術におけるメリット、デメリットは必ず両方ありますから、それらを勘案して主治医と相談して決めるのが一番良いと思います。なおほとんどの開業医ではもちろん扁摘は行っていませんから、開業の耳鼻科医に相談した場合は、診察、必要に応じて検査、適応がありそうなら手術ができる病院を紹介という流れになります。