診療報酬、またまたマイナス改訂(怒)。

数日前のニュースなんですが、
Excite エキサイト : 経済ニュースより
<診療報酬>08年度に引き下げ 財務省が方針固める [ 11月05日 20時43分 ]だそうです。

診療報酬というのは、一言で言えば国の決める医療行為に対する対価です。2年ごとに大きな改訂が行われるのですが、次回は来年の4月でして、今頃に財務省が総額でどのぐらいの医療費にしたいかと言うことを決めて、その後、厚労省がそれに合わせて、初診料、再診料、検査料、処置料、手術料など細かなところを増やしたり減らしたりして、総額が財務省のお達しの通りになるように調整していくと言う流れです。

そう、医療の質の維持のため、国民の健康を守るためにはいくら必要か、と言う議論ではなしに、医療費はこのぐらいしか国も企業も出したくないから、このぐらいに抑えようということで決められる仕組みになっています。前回も3%強の削減、今回もさらに3%以上の削減を国は目論んでいるようです。

医師側の意見をまとめる組織としては医師会があるわけですが、残念ながら一度国がマイナス改訂を決定してしまうと、それを覆すほどの力はないようで、医者の側からいえばもうなすがまま、というかまな板の上の鯉状態で、国の横暴に対しては何ら手だてがないというのが何とも悔しいところです。

また、診療報酬改定のニュースの度にいわれることとしては、医者が儲けすぎているというマスコミの論調です。今回の記事にも医療費の5割が医師などの人件費ということが書いてありますが、これも巧妙な情報操作ですよね。ほとんどの人は「医師など」の「など」はスルーして読むことを計算して書かれている表現です。医療の現場にいるのは医師のみならず、看護師、事務、検査技師等々の方が携わっているわけですので、「医療費に占める人件費」=「医者の取り分」ではないのです。

医療崩壊が現実となり様々な実害が表面化している現在、大分マスコミもこのままではまずい、ということに気づき始めているようですが、医療の質の維持の為にはお金が必要で、それは診療報酬から得るしかなく、もう少し社会基盤整備のコストとして診療報酬を増やしても良いんじゃないか、という議論にはなかなかなってこないところが残念です。

さて、来年以降はさらに厳しい医院経営になることが、自分の力の及ばないところで勝手に取り決められつつあるわけで、憤りと無力感を感じずにいられないわけですが、残念ながらこれが日本の現実です。これで医業はさらに職業として割に合わないものとなるわけですから、勤務医の退職や開業医の廃業はさらに加速するでしょう。医療崩壊が、今問題になっている産科以外にも波及していくのは必至の状態です。

一体、国の狙いは何なんでしょうかね?予算が限られているのであれば、医療よりももっともっと削るところはあるように思えるし、税収という面からは過去最大の収益といわれる大企業にももう少し負担していただいても良さそうなものですが、そのような動きはなさそうです。意図的な医者いじめ、患者いじめが国家単位で行われているとしか思えず、あえてさらなる医療崩壊、焦土化を狙っているとしか思えません。その結果、音を上げて廃業したり、保険診療でやっていけないからと、保険医を返上して自由診療に流れる医者も出てくるでしょう。国民は困りますが、「保険医」が減って医療費も減れば、財務省としてはそれはそれでまた、美味しいことなのでしょう。健康保険料を負担している企業側も、大喜びというところです。
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あまり楽しくない話題で恐縮ですが、少なくともこのブログの読者には巧みな情報操作に惑わされず、「医療費削れ!」なんてバカな意見に従わないようにしていただきたいと思い、記事にしてみました。

医療費削減に関する、以前の記事も読んでいただけるとうれしいです。

医師不足
医師不足?
診療報酬、過去最大の大安売り!理不尽な、診療報酬減らし。
情報操作に惑わされちゃいけません。
Commented by osha-p at 2007-11-09 09:24
ご無沙汰しています。
我が家も自営業です。バブル・続く不景気・・・いろいろありますね。
自分達の努力だけではどうしようもない社会の流れとか運とかに左右されていますね。なかなか思うようにいきません。(^^;;
病院経営は国の政策が大きく影響してくるようですね。
病気になれば貧富の差なく医療が平等に受けられると患者側はありがたいし、医療の質も向上してほしい・・・うまくバランスがとれるといいですね。
Commented by jibikai at 2007-11-09 10:51
>osha-pさん、コメントありがとうございます。
確かに医者ばかりでなく、世の中の人誰もが何かしら理不尽な目にあったり、いくら努力しても報われなかったりということはありますよね。
ただ医療費削減に関していえば、医者が儲からなくなるとかそんなレベルの話じゃなく、社会資本をいかに配分すべきかということに関わる問題だと思うのですが、何か問題がすり替えられている様な気がするのです。医者という職業を継続してやっていけるのかという心配もありますが、このまま何も手当てされないまま医療崩壊が進行すると、自分が今後なるであろう患者の立場から想像してみても、一体どうなっているんだろうと心配になります。
Commented by apricot at 2007-11-13 10:57 x
先生こんにちは。
ご無沙汰してました。

「医療費抑制」言葉の通り、医療にかかるお金を抑えることを国の政策としているんですね。ただ支出を抑えるだけなら、政治家や官僚でなくてもできますよね。

医療費がいくらかかるのが適正な状態なのかという議論はまったくされず、「医者」=「金持ち」だらか、診療報酬を減らすのが手っ取り早い。という構図ができているうえ、一方的過ぎて腹立たしいですね。お医者さんも、医療を受ける側の患者さんも、国からいい加減に扱われているように感じます。
Commented by jibikai at 2007-11-13 18:24
>apricotさん、こんにちは。
今回も3%台の削減を目標にしているらしいのですが、それでどれだけの影響が医療機関に出て、その結果どの程度の医療サービス低下が起こるかなどという議論もなさそうです。
霞ヶ関のお役人はよほど健康には自信のある方だけなのか、とにかく病人と医療機関には冷たいです。病気になるのも自己責任ということなのでしょうかね。
by jibikai | 2007-11-08 17:02 | Comments(4)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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