突発性内耳障害
2008年 01月 07日
今朝のネットやテレビで、この病気が話題になっていたのでちょっと取り上げてみます。
難聴は外耳、中耳、内耳いずれのトラブルでも起こりえますが、一番治りにくいのが内耳性難聴といえます。それは、まず耳の部位の中では一番奥まっている所にあり、しかも微細な構造が聞こえの機能を支えているので、一言で内耳障害といってもその原因が絞りきれないことが最大の理由です。
突然起こる急性の内耳障害のうち、誘因のはっきりしないものを突発性難聴といいますが、この突発性内耳障害もほぼ同じ疾患を指しています。突発性内耳障害にせよ、突発性難聴にせよ、色々な原因で内耳がトラブルを起こしたものが含まれると考えられています。色々な原因とは、ウイルスの感染や微小循環障害(内耳に栄養や酸素を送る血流が悪くなること)、メニエール病の原因である内リンパ水腫、自己免疫(自分の身体を攻撃してしまうような抗体が産生され内耳を障害する)等が考えられていますが、個々のケースにおいて、これら様々な原因のうち、いったい何が本当の原因か絞りきる方法は未だないため、決め手となる治療法もなかなかないのが現状です。
ステロイドが有効とはいわれてはいますが、たとえ入院して数日間ステロイド大量療法をやったとしても、効かない例も少なからずあります。少しでもそういった難治例を少なくしたいという事で、ステロイドに加えて抗ウイルス剤や、循環改善剤(プロスタグランジンE1等を含めて)も点滴したりすることもありますが、それでもステロイド単独と比べての成績は劇的に改善しているわけではないようです。
その他、薬物以外で突発性内耳障害に有効といわれている治療法に高圧酸素療法というのがあります。2気圧程度の純酸素で満たされたカプセルに一定時間入ってもらう治療法なのですが、これも残念ながら劇的に効果があるというほどのものではありません。
しかも装置は大がかりだし、マンパワーも必要な治療(医者が1時間付きっきり)なので、出来る施設も非常に限られています。
それならば、手術はどうかといいますと内耳性の難聴にアプローチできる術式は人工内耳しかなく、これも本来の内耳機能を復元するものではないので、特に一側性の内耳障害では適応となりません。
もちろん自然治癒もあり得ないことではないのですが、それも高度難聴の場合はかなり可能性が低いと言わざるをえません。治療した場合、しなかった場合、いずれにしても2ヶ月を経過すると聴力はおよそ固定してしまうと言われています。
(今回の浜崎あゆみさんのケースは発症後も、難聴の進行があったようで、進行性感音難聴とも言えるかも知れません。通常、突発性難聴では発作は一回、めまい発作も難聴の発症前後が一番強いはずなのに、その後しばらくしてから平衡失調によりステージから転落したと言うエピソードもあるようですから、典型的な突発性難聴とはちょっと違う印象も受けます。もしかしたらメニエール亜型、遅発性内リンパ水腫の可能性もあるかも知れません。)
とにかく内耳性難聴については、診断も治療も難しい事を分かっていただけたら幸いです。
難聴は外耳、中耳、内耳いずれのトラブルでも起こりえますが、一番治りにくいのが内耳性難聴といえます。それは、まず耳の部位の中では一番奥まっている所にあり、しかも微細な構造が聞こえの機能を支えているので、一言で内耳障害といってもその原因が絞りきれないことが最大の理由です。
突然起こる急性の内耳障害のうち、誘因のはっきりしないものを突発性難聴といいますが、この突発性内耳障害もほぼ同じ疾患を指しています。突発性内耳障害にせよ、突発性難聴にせよ、色々な原因で内耳がトラブルを起こしたものが含まれると考えられています。色々な原因とは、ウイルスの感染や微小循環障害(内耳に栄養や酸素を送る血流が悪くなること)、メニエール病の原因である内リンパ水腫、自己免疫(自分の身体を攻撃してしまうような抗体が産生され内耳を障害する)等が考えられていますが、個々のケースにおいて、これら様々な原因のうち、いったい何が本当の原因か絞りきる方法は未だないため、決め手となる治療法もなかなかないのが現状です。
ステロイドが有効とはいわれてはいますが、たとえ入院して数日間ステロイド大量療法をやったとしても、効かない例も少なからずあります。少しでもそういった難治例を少なくしたいという事で、ステロイドに加えて抗ウイルス剤や、循環改善剤(プロスタグランジンE1等を含めて)も点滴したりすることもありますが、それでもステロイド単独と比べての成績は劇的に改善しているわけではないようです。
その他、薬物以外で突発性内耳障害に有効といわれている治療法に高圧酸素療法というのがあります。2気圧程度の純酸素で満たされたカプセルに一定時間入ってもらう治療法なのですが、これも残念ながら劇的に効果があるというほどのものではありません。
しかも装置は大がかりだし、マンパワーも必要な治療(医者が1時間付きっきり)なので、出来る施設も非常に限られています。
それならば、手術はどうかといいますと内耳性の難聴にアプローチできる術式は人工内耳しかなく、これも本来の内耳機能を復元するものではないので、特に一側性の内耳障害では適応となりません。
もちろん自然治癒もあり得ないことではないのですが、それも高度難聴の場合はかなり可能性が低いと言わざるをえません。治療した場合、しなかった場合、いずれにしても2ヶ月を経過すると聴力はおよそ固定してしまうと言われています。
(今回の浜崎あゆみさんのケースは発症後も、難聴の進行があったようで、進行性感音難聴とも言えるかも知れません。通常、突発性難聴では発作は一回、めまい発作も難聴の発症前後が一番強いはずなのに、その後しばらくしてから平衡失調によりステージから転落したと言うエピソードもあるようですから、典型的な突発性難聴とはちょっと違う印象も受けます。もしかしたらメニエール亜型、遅発性内リンパ水腫の可能性もあるかも知れません。)
とにかく内耳性難聴については、診断も治療も難しい事を分かっていただけたら幸いです。
この話題は私も興味深く思い、いくつかのサイトの記事を読んでみたのですが、先生の記事が詳しく大変勉強になりました。
話題の内容から聴力も前庭機能もかなりの低下なのかな?と思いましたが、、、反対の耳がまったくの正常で正しい音が聞こえるといいですね。
メニエルならば、、、機能が低下であればあるほど代償が働きやすいらしく、安定してくる状態だというのは複雑なところですね。
話題の内容から聴力も前庭機能もかなりの低下なのかな?と思いましたが、、、反対の耳がまったくの正常で正しい音が聞こえるといいですね。
メニエルならば、、、機能が低下であればあるほど代償が働きやすいらしく、安定してくる状態だというのは複雑なところですね。
0
今回話題になっている彼女のケースのように、最初は突難(とつなん;突発性難聴)や低音障害型感音性難聴のような症状で発症して、数年後再び発作的に聴力が低下したり、徐々に聴力が低下するケースも時にあります。そのようなケースは単発的な発作で終わるケースとは病態が違うと思われるのですが、何しろ初回の発作時には繰り返すタイプなのか、単発で終わるタイプなのか区別できないのです。
また、やはりめまいや平衡失調を合併してくるタイプの内耳障害は、一体に難聴も高度のことが多いし治りにくいと言われています。
一側の前庭機能低下の後の代償作用については、めまいのリハビリということにも関連して、非常に興味深いテーマだと思います。
また、やはりめまいや平衡失調を合併してくるタイプの内耳障害は、一体に難聴も高度のことが多いし治りにくいと言われています。
一側の前庭機能低下の後の代償作用については、めまいのリハビリということにも関連して、非常に興味深いテーマだと思います。

はじめまして。たった今、初めてこのブログに辿り着いた真珠腫中耳炎の一患者です。
今回の報道を見ると、先進各国の研究者たちが予算と知能をつぎ込んで研究を重ねても、「原因不明」と言っているものを、素人が口々に「原因はストレス」と決め込んだり、
音響外傷・騒音性難聴と一緒クタにして、ストレスや音などの原因を取り除けば病気が回復する、という幼稚でオメデタい“所見”を述べているのには、呆れ返りました。
無論、「原因不明」というのは、今後、原因究明されるかも知れませんが、いかに科学的に正しくても、理解者の少ない知識や情報は、多くの人に正確に伝えるのは難しいと思いました。困ったものです・・・。
今回の報道を見ると、先進各国の研究者たちが予算と知能をつぎ込んで研究を重ねても、「原因不明」と言っているものを、素人が口々に「原因はストレス」と決め込んだり、
音響外傷・騒音性難聴と一緒クタにして、ストレスや音などの原因を取り除けば病気が回復する、という幼稚でオメデタい“所見”を述べているのには、呆れ返りました。
無論、「原因不明」というのは、今後、原因究明されるかも知れませんが、いかに科学的に正しくても、理解者の少ない知識や情報は、多くの人に正確に伝えるのは難しいと思いました。困ったものです・・・。
>A Song for XXさん、ようこそ。
まあ難聴で悩んだことのない人の認識は、その程度のものでしょう。ただし、今回のニュースによって(もちろん本人の苦労を思うと喜ぶべきことではありませんが)、今まであまり注目もされなかった聴力障害に関心が向くのは良いことと思います。おっしゃるとおり誤解もあるかも知れませんが、まずは難聴の問題も身近に感じてもらうことも重要なので、そういった意味からは彼女の告白は意義深いことと思っています。
まあ難聴で悩んだことのない人の認識は、その程度のものでしょう。ただし、今回のニュースによって(もちろん本人の苦労を思うと喜ぶべきことではありませんが)、今まであまり注目もされなかった聴力障害に関心が向くのは良いことと思います。おっしゃるとおり誤解もあるかも知れませんが、まずは難聴の問題も身近に感じてもらうことも重要なので、そういった意味からは彼女の告白は意義深いことと思っています。

遅ればせながら今年もよろしくお願い致します。
難聴の話題には敏感にならざるを得ませんが、有名人の病気によって
広く世間に認知されることってありますよね。
原因を安易に論ずるのは危険かと思いますが、同じ症状で苦しんでいる方のためにも、完全な機能回復まで行かなくとも何らかしらの
効果ある治療法がみつかるといいですね。
難聴の話題には敏感にならざるを得ませんが、有名人の病気によって
広く世間に認知されることってありますよね。
原因を安易に論ずるのは危険かと思いますが、同じ症状で苦しんでいる方のためにも、完全な機能回復まで行かなくとも何らかしらの
効果ある治療法がみつかるといいですね。
>ばななさん、こちらこそよろしく。
今回のような有名人がかかった病気の報道のされ方は、以前に比べてると大分まともになってきていると思います。さらに詳しく知りたい人は、今はネットを上手に利用するでしょうし、情報が正確に伝わる環境は良くなっているように思います。
いくら医学が進んでも、なかなか全ての聴覚障害を治せるところまではいかないでしょうから、まずは社会全体が聴覚障害というものを理解してくれて、その中からたとえばそれをアシストするような技術だの、社会制度だのが出来てくれると良いと思っております。
今回のような有名人がかかった病気の報道のされ方は、以前に比べてると大分まともになってきていると思います。さらに詳しく知りたい人は、今はネットを上手に利用するでしょうし、情報が正確に伝わる環境は良くなっているように思います。
いくら医学が進んでも、なかなか全ての聴覚障害を治せるところまではいかないでしょうから、まずは社会全体が聴覚障害というものを理解してくれて、その中からたとえばそれをアシストするような技術だの、社会制度だのが出来てくれると良いと思っております。

初めまして。現在めまい・難聴で悩んでいるものです。お盆すぎ頃から耳痛→激しい回転系のめまい→難聴と次々現れて、今はめまいと難聴が残っています。病院も3件訪ねて最後にたどり着いた大学病院でいろいろな検査をしていただきました。毎回受ける聴力検査のデータからすると、日常会話も怪しいほどの聴力らしいのですが医師とのやりとりができている・・・・めまいも回転系のものが減り、床が揺れる程度なので???メニエールでもなく体調の低下によるものだろうと最終診断がくだりました。イソバイドやアデホスなどをとりあえず飲んでいてくださいものことです。聴力検査では嘘をついているわけではないのに疑いの目を向けられる・・・正直治療を続けるのも苦痛です。
ぴこままさん、ようこそ!
あくまで、文面からの推測ということでコメントさせていただきます。
実際の聴こえと、聴力検査のデータが乖離しているということは、まれに経験することです。機能性難聴とか心因性難聴と呼ばれるケースに多いのですが、通常これらにはめまいは伴いません。発症初期の症状はむしろメニエール病ににていますから、途中で病状が変化したのかも知れませんね。
難聴が日常支障のないレベルなのであれば、聴力検査のデータには自分自身はあまりこだわらないというのも、一つの考え方としてあるんじゃないかと思います。
あくまで、文面からの推測ということでコメントさせていただきます。
実際の聴こえと、聴力検査のデータが乖離しているということは、まれに経験することです。機能性難聴とか心因性難聴と呼ばれるケースに多いのですが、通常これらにはめまいは伴いません。発症初期の症状はむしろメニエール病ににていますから、途中で病状が変化したのかも知れませんね。
難聴が日常支障のないレベルなのであれば、聴力検査のデータには自分自身はあまりこだわらないというのも、一つの考え方としてあるんじゃないかと思います。

先生、コメントありがとうございました。
毎日、日常生活の中で家族からの問いかけに気づけなかったり、一番は子供が寂しそうな顔をしているのを見ると、がんばらねば!と自分を奮い立たせてみたりしていました。しかし、めまいが起きてしまうとどうしようもできなくて、聞こえていない自分に気づくと情けなくて・・・あさって通院日になっているのですが、病院に向かう気力がでてきませんでした。
当たり前に使っていたものがこれほどまでに大切な機能を果たしていてくれたのかと、今更ながら思います。
この場はこのような内容を載せるものではなかったのかもしれないのに、丁寧に返答いただきまして感激しております。
先生、ありがとうございました。
毎日、日常生活の中で家族からの問いかけに気づけなかったり、一番は子供が寂しそうな顔をしているのを見ると、がんばらねば!と自分を奮い立たせてみたりしていました。しかし、めまいが起きてしまうとどうしようもできなくて、聞こえていない自分に気づくと情けなくて・・・あさって通院日になっているのですが、病院に向かう気力がでてきませんでした。
当たり前に使っていたものがこれほどまでに大切な機能を果たしていてくれたのかと、今更ながら思います。
この場はこのような内容を載せるものではなかったのかもしれないのに、丁寧に返答いただきまして感激しております。
先生、ありがとうございました。
ぴこままさん、まあネット上の医療相談は実際診ているわけではないので、限界があります。実際の診療の妨げにならなければ良かったのですが・・

低音障害を検索していたら先生のサイトにたどり着き書き込みさせていただきています。
昨年、左耳が突発難聴になり治療に専念したのですが98dbから60db位には回復しましたが
人の声は聞こえない状態です。やはり高度の難聴の場合は治癒は難しいと思いました。
実は先週、良いほうの耳が低音型難聴となり現在メチコバール&アデホスを服用して治療中です。
この1週間でまったく症状が出ない日もあれば、やっぱり二重に聞こえたりと症状に波があり不安です。
このような状態を繰り返すとメニエールになるのかな・・・
あまり考えるとストレスになるのでお医者さんを信じて治療して頂いてますが、ストレスに感じないようにするのも難しいですね^^;
昨年、左耳が突発難聴になり治療に専念したのですが98dbから60db位には回復しましたが
人の声は聞こえない状態です。やはり高度の難聴の場合は治癒は難しいと思いました。
実は先週、良いほうの耳が低音型難聴となり現在メチコバール&アデホスを服用して治療中です。
この1週間でまったく症状が出ない日もあれば、やっぱり二重に聞こえたりと症状に波があり不安です。
このような状態を繰り返すとメニエールになるのかな・・・
あまり考えるとストレスになるのでお医者さんを信じて治療して頂いてますが、ストレスに感じないようにするのも難しいですね^^;
mikaさん、ようこそ!
たしかに低音障害型感音難聴は、日ごとに聴力が変動することも
ありますね。一部はメニエール病に移行するといいますか、
メニエール病の初期症状であることもあります。
ただし、おっしゃる通り、メニエール病も低音障害型感音難聴も
ストレスによって聴力が低下することが多いですから、ストレスは
なるべく解消していくことが望ましいです。
難聴についての記事は、これからも時々書いていく予定ですので、
これからも宜しくです。
たしかに低音障害型感音難聴は、日ごとに聴力が変動することも
ありますね。一部はメニエール病に移行するといいますか、
メニエール病の初期症状であることもあります。
ただし、おっしゃる通り、メニエール病も低音障害型感音難聴も
ストレスによって聴力が低下することが多いですから、ストレスは
なるべく解消していくことが望ましいです。
難聴についての記事は、これからも時々書いていく予定ですので、
これからも宜しくです。

mikaさん、このブログが、少しでも参考になれば
幸いです。
幸いです。
by jibikai
| 2008-01-07 11:18
| 耳のはなし
|
Comments(14)