吹雪の夜に

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今日は爆弾低気圧の影響で、こちら山形も吹雪いています。一冬のうちに何日かはこんな荒れ模様の日があって、そのたびに思い出すことがあります。

それは、大学病院に勤めていた時の話です。多くの若い医者がそうなのですが、大学から頂く給料だけでは暮らしていけないのと、医局の事情もあって、週のうち何日かはいわゆる「バイト」に行っておりました。

ちょうど今日のような大荒れの日に、新潟との県境の町の病院まで車でバイトに行かなければなりませんでした。そこは何しろ、日本有数の豪雪地帯。雪道の運転には慣れていたつもりでも、なかなかスリリングなドライブを強いられます。行きは何とかたどり着きましたが、その日は日中だけでも1メートル近く積もりましたから、診療を終えて帰る頃には、駐車上に停めた車は、かまくらの出来損ないのような雪の固まりと化していました。それを掘り起こして、吹雪の中を大学病院へと向かったわけです。そう、入院患者の処置や指示があるので、いくら遅くなっても直帰するわけにはいかないのです。

豪雪地帯とはいえ、町の中は風もさほど強くなくて、まだ良かったのですが、峠を一つ越えたら何と地吹雪で視界わずか数メートルの世界。進めない車が天候の回復を待ってか、路肩付近に列をなしていました。最初は私も後ろに並んでいましたが、停まっていると車は樹氷のようになっていくばかりだし、また大学病院での仕事も気になったので、少しずつ停まっている車を追い越しながら、進みました。真っ白な世界をわずかに見える停車している車の影を頼りに、帰ってきたわけですが、生きた心地がしませんでした。

後で分かったことなのですが、その停まっていた車列の中で、雪に閉ざされた車中で、逆流した排ガスにより亡くなった方が、2名ほどあったとのことで、あの時、無理にでも車を進めて良かったと思った次第。

「大学病院の医者は、自分の受け持ちの患者をほったらかして、バイトなんぞに出かけてけしからん。」などという話が、少し前に世間で言われていたことがありましたが、誰も好きこのんで行ってわけではなかったのです。
by jibikai | 2008-01-25 00:11 | Comments(0)

山形市の耳鼻咽喉科 あさひ町榊原耳鼻咽喉科  院長のブログ


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