耳鼻科医の経済学(デフレスパイラル・その2)
2008年 02月 08日
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がんばって患者数を増やす。
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一人一人の患者さんにかけられる時間が短くなる。
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時間のかかる検査、処置は省略する。
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さらに一人あたりの診療報酬は安くなる。
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さらにがんばって患者さんを増やす。
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思考停止し、同じ処置、同じような処方に明け暮れる。
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診療に対するモチベーションが低下する。
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経営のためとは言え、キャパシティーを超えた人数を診ると、以上のようなパターンに陥り、結局は医療の質が低下して、やがてはきちんとした診療を望む患者さんは離れていってしまうように思います。
耳鼻科の診療報酬が安過ぎるために、医療の質が落ちる例えとして書いたみました。しかし考えてみれば、小泉総理時代の数年間には耳鼻科に限らず下げられ続けています。医者不足も深刻ですから、一医療機関の経営方針うんぬんという話ではなくて、安い報酬で過酷な労働という構図は医療界全体に広がってきているように思います。
医療の質の維持のために、国には、もう少し医者を増やして、診療報酬も仕事に見合った程度には上げていただきたいところなのですが、なかなかその動きは見えてこないようです。医学部の定員増という話もないですし、診療報酬も微増とのことですが、ここ数年間で下げられた分の10分の1も復活していない状況では、どうしようもない、というのが本音です。
ちょっと前には医者が金の話をすると「かつて、医は仁術といったが、最近の医者は算術ばかりだ。」何て悪口も言われたようですが、見方を変えれば、昔の医者は金に頓着せずとも暮らしに余裕が持てていた、ということなのではないでしょうか。
まあ最近は、医者もそう儲かってもいないことが知れ渡ってか、あまりそういう言葉も聞かなくなりましたけどね。

開き直って「なんにせよ医者は患者ほどには困らない」をり内心のキャッチフレーズとしてにしてます。医者が本当に困るころは、患者さんがもっと困ります。国民もそろそろ気づきだしてますよ。大半のマスコミは受けの取れる記事を書き流して自分が正義だと思っているだけのこと、後3年もすれば国民の論調も国民に受ける記事の中身もがらっと変わるでしょう。辛抱、辛抱。
今のところ、医療の現場で患者さんに不都合が生じた場合、
原因は常に医者が悪いように上手く情報操作されていますが、
救急や産科医不足の問題も、根っこは政策にあるんですよね。
方向転換はいつのことになるのか、(あるいはこのまま医療は
先細りなのか、)わかりませんが、とにかくしぶとく生き残って
いくしかないようですね。