耳鳴について考える 〜苦痛の連鎖〜
2008年 07月 03日
引き続き、耳鳴の話です。またしても理屈っぽい話になってしまいそうなのですが、読んでいただければ幸いです。
さて、前回は音刺激によって引き起こされる脳の活動は、大脳皮質のみならず、大脳辺縁系や視床下部ー自律神経系の反応もあり、それぞれがまた関連しあっているということをお話ししました。耳鳴もまた、最初は内耳で起こるものが多いのですが、それによる神経の興奮もまた、脳幹を経て、大脳皮質へと伝達されます。大脳皮質では、耳鳴を気にしなくても良いものとして認識して処理してしまえば、大脳辺縁系や自律神経系はあまり影響を受けません。しかし、大脳皮質が耳鳴を特に警戒すべき音として判断した場合は、大脳辺縁系の海馬という部分には不快な経験としてメモリーされますし、扁桃体では不快感や恐怖として認識。扁桃体の反応はさらに、視床下部を通じて自律神経に「退避行動」を取るような命令を出させます。この自律神経によって命令される「退避行動」とは、心拍数の増加とか、血圧の上昇などなど、危険に対して身構えているようなものですから、リラックスとは正反対の、まさに緊張を強いられた状態となります。自律神経が内臓に対して退避行動を取るように命令することは、危険を回避しながら生きていくためには必要不可欠なことなのですが、それも過度になると、それ自体がストレスとなり弊害も多いわけです。さらに自律神経の緊張状態というのは、今度は大脳皮質を刺激しますから、ここからまた、大脳辺縁系へと不快なストレスを伴った信号が巡り巡っていくという悪循環を来してしまうわけです。(下のの図を参照して下さい。)
こうなってしまうと、内耳の病変が落ち着いて、耳鳴を起こす病的な信号を、もう脳の方へは送ってこなくなってしまっていても、脳が一人歩きして、耳鳴を感じ続けるというようなことが起こります。無難聴性耳鳴や突発性難聴が治った後も耳鳴のみ続くケース、機能性難聴や心因性難聴に伴った耳鳴などには、このような状態が多いと思われます。
急性期の耳鳴、すなわち突発性難聴やメニエール病、中耳炎などによるもので、比較的発症後 間もないものは、元々の疾患をしっかりと治療することが重要で、それによって内耳での耳鳴発生を抑えます。しかし、内耳の状態が落ち着いた後にも、耳鳴が慢性的に続く場合、しかも苦痛や自律神経症状も伴う場合は、脳の中で起こっている悪循環を断ち切るための治療が必要になってくると思います。
それを具体的にどうするかは、また次回にお話ししたいと思います。
というわけで、耳鳴の話はまだまだ続きます。
さて、前回は音刺激によって引き起こされる脳の活動は、大脳皮質のみならず、大脳辺縁系や視床下部ー自律神経系の反応もあり、それぞれがまた関連しあっているということをお話ししました。耳鳴もまた、最初は内耳で起こるものが多いのですが、それによる神経の興奮もまた、脳幹を経て、大脳皮質へと伝達されます。大脳皮質では、耳鳴を気にしなくても良いものとして認識して処理してしまえば、大脳辺縁系や自律神経系はあまり影響を受けません。しかし、大脳皮質が耳鳴を特に警戒すべき音として判断した場合は、大脳辺縁系の海馬という部分には不快な経験としてメモリーされますし、扁桃体では不快感や恐怖として認識。扁桃体の反応はさらに、視床下部を通じて自律神経に「退避行動」を取るような命令を出させます。この自律神経によって命令される「退避行動」とは、心拍数の増加とか、血圧の上昇などなど、危険に対して身構えているようなものですから、リラックスとは正反対の、まさに緊張を強いられた状態となります。自律神経が内臓に対して退避行動を取るように命令することは、危険を回避しながら生きていくためには必要不可欠なことなのですが、それも過度になると、それ自体がストレスとなり弊害も多いわけです。さらに自律神経の緊張状態というのは、今度は大脳皮質を刺激しますから、ここからまた、大脳辺縁系へと不快なストレスを伴った信号が巡り巡っていくという悪循環を来してしまうわけです。(下のの図を参照して下さい。)

こうなってしまうと、内耳の病変が落ち着いて、耳鳴を起こす病的な信号を、もう脳の方へは送ってこなくなってしまっていても、脳が一人歩きして、耳鳴を感じ続けるというようなことが起こります。無難聴性耳鳴や突発性難聴が治った後も耳鳴のみ続くケース、機能性難聴や心因性難聴に伴った耳鳴などには、このような状態が多いと思われます。
急性期の耳鳴、すなわち突発性難聴やメニエール病、中耳炎などによるもので、比較的発症後 間もないものは、元々の疾患をしっかりと治療することが重要で、それによって内耳での耳鳴発生を抑えます。しかし、内耳の状態が落ち着いた後にも、耳鳴が慢性的に続く場合、しかも苦痛や自律神経症状も伴う場合は、脳の中で起こっている悪循環を断ち切るための治療が必要になってくると思います。
それを具体的にどうするかは、また次回にお話ししたいと思います。
というわけで、耳鳴の話はまだまだ続きます。
こんばんは なるほど耳鳴りだけでもこれだけ複雑なんですね。
めまいについても病変が落ち着いても、海馬-視床下部-脳幹平衡中枢の経路の交感神経の活動を強めて平衡失調を誘発したり増大させたりするというのを本で読んだ事がありますのでメニエールの場合にはさらに複雑に関係していそうですね。
病変が固定してしまった場合、耳鳴り自体の絶対値が大きい場合には、ずっと一生大脳皮質に耳鳴りに無関心でいてもらわないといけませんね。
めまいについても病変が落ち着いても、海馬-視床下部-脳幹平衡中枢の経路の交感神経の活動を強めて平衡失調を誘発したり増大させたりするというのを本で読んだ事がありますのでメニエールの場合にはさらに複雑に関係していそうですね。
病変が固定してしまった場合、耳鳴り自体の絶対値が大きい場合には、ずっと一生大脳皮質に耳鳴りに無関心でいてもらわないといけませんね。
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osha-pさん、おはようございます。
そうそう、めまいでもたぶん同じことが起こっていると
考えられますね。
めまいにしても耳鳴にしても、悪循環を起こさないためには、
大脳皮質の働きが重要ですが、幸いそこのところは理性で
コントロールできますから、そのためのコツを掴んでいくのが
重要なんだと思います。
そうそう、めまいでもたぶん同じことが起こっていると
考えられますね。
めまいにしても耳鳴にしても、悪循環を起こさないためには、
大脳皮質の働きが重要ですが、幸いそこのところは理性で
コントロールできますから、そのためのコツを掴んでいくのが
重要なんだと思います。

私は昨日、耳掻きをしていて、不意に鼓膜に突き刺してしまいました。実家に遊びに来ていた時だったので、実家近くの耳鼻科へ駆け込みました。鼓膜が破けていて、さらに、耳の中の骨が脱臼していると言われました。鼓膜は2週間程度で治るとのことですが、脱臼は手術しないと治らないとのことです。とりあえず、様子見ということで、抗生物質トミロン錠100を処方してもらいました。
実家の近くの病院がちょっと遠いので、明日、家の近くの総合病院にも診察してもらいに行こうと思っています。
耳がジンジンするので心配です。
そして、手術、不安です。耳は局部麻酔とかあるのでしょうか??
実家の近くの病院がちょっと遠いので、明日、家の近くの総合病院にも診察してもらいに行こうと思っています。
耳がジンジンするので心配です。
そして、手術、不安です。耳は局部麻酔とかあるのでしょうか??
yamaさん、一般的な答えしかできませんが、それでよろしければ、ご参考まで。
耳かき外傷の場合、鼓膜だけの損傷なのか、耳小骨脱臼(離断)、外リンパ漏も伴うのかで治療法は異なってきます。
難聴の程度が中等度以上なら、後2者が疑われますが、その場合手術が必要となることもあります。耳小骨連鎖再建や外リンパ漏に対する手術となると、全身麻酔とそれに伴い入院も覚悟しなければなりません。
耳かき外傷の場合、鼓膜だけの損傷なのか、耳小骨脱臼(離断)、外リンパ漏も伴うのかで治療法は異なってきます。
難聴の程度が中等度以上なら、後2者が疑われますが、その場合手術が必要となることもあります。耳小骨連鎖再建や外リンパ漏に対する手術となると、全身麻酔とそれに伴い入院も覚悟しなければなりません。

ありがとうございます。
私は医療に無知なので、いろんな不安が渦巻いています。
今日は家の近くの総合病院へ行って来ました。預かり手が体調不良の為、子供を連れて病院へ行ったので、耳が聴こえているかの検査はしませんでした。検査と、他の先生にも診てもらう為にまた土曜日に総合病院へ行かなければなりません。そして、手術のことを聞いたら、ここでは手術できませんと言われました。
手術できる病院って限られているのでしょうか?総合病院で手術ができないと言われたのでビックリしました。
私は医療に無知なので、いろんな不安が渦巻いています。
今日は家の近くの総合病院へ行って来ました。預かり手が体調不良の為、子供を連れて病院へ行ったので、耳が聴こえているかの検査はしませんでした。検査と、他の先生にも診てもらう為にまた土曜日に総合病院へ行かなければなりません。そして、手術のことを聞いたら、ここでは手術できませんと言われました。
手術できる病院って限られているのでしょうか?総合病院で手術ができないと言われたのでビックリしました。
yama さん、とにかく聴力検査は必須かと思います。場合によっては中耳CTも。痛みや出血は感染予防さえしておけば、必ず収まりますが、一番の問題は聴こえです。あと、めまいがあるようであれば、外リンパ漏が疑われますから、要注意。
万一、耳小骨再建や外リンパ漏閉鎖術が必要となるなら、確かにできる耳鼻科医は限られてきますから、病院もそれなりに限定されると思います。
万一、耳小骨再建や外リンパ漏閉鎖術が必要となるなら、確かにできる耳鼻科医は限られてきますから、病院もそれなりに限定されると思います。

ありがとうございます。いろいろと参考になりました。
yamaさん、了解。少しでも参考になれば幸いです。

はじめまして。昨年より以前から持ってた耳鳴りがストレスによってひどくなり脳にインプットされたようで、上記に書かれている脳と耳鳴りの関係の悪循環を断ち切れずに2年を迎えます。ますますひどくなり脳の一人歩きが早まってほとほと困ってます。両耳中程度45dbの難聴があります。CTもとりました。地方の大学でも心療内科と相談してやってくださいとのこと、今は心療内科で治療してます。TRT療法もなかなか耳との折り合いが悪く進みません。耳鳴りの苦痛を人に伝えることがなかなか難しいなと実感しております。今は鉄工所の中にいるというかんじです。先生の色々な説明を読ませていただいて、長くなるかもしれないけれどなんとか脳とおりあいをつけていかなければと思いました。耳鳴りってすごく苦しいです。でもがんばらなきゃと思いました。なんとか脳をうまくコントロールしたいです。何種類も安定剤を飲んでます。早く慣れたいです。
めいさん、ようこそ!
耳鳴りについては良く理解されているようですから、あとはいろいろと
自分に合った対処法を見つけて実践していくことなのではないでしょうか。
耳鳴は脳の働きで増幅されますから、心理療法(カウンセリング)なども
受けられる環境にあれば受けた方がベストなわけです。
なかなか良くならないと不安になるのは分かりますが、
コメントから推測しますと、きちんとした治療を受けていらっしゃると思いますよ。
耳鳴りについては良く理解されているようですから、あとはいろいろと
自分に合った対処法を見つけて実践していくことなのではないでしょうか。
耳鳴は脳の働きで増幅されますから、心理療法(カウンセリング)なども
受けられる環境にあれば受けた方がベストなわけです。
なかなか良くならないと不安になるのは分かりますが、
コメントから推測しますと、きちんとした治療を受けていらっしゃると思いますよ。

先生おはようございます。お返事ありがとうございます。
朝起きてすぐ脳が目覚めると轟音で一日が始まります。
このメカニズムもさっぱりわかりません。
音がストレスになってるのが自分でもよくわかり、一日のはじめからそうなのでかなり脳がいやだいやだと反抗してるんだなと思います。
それに巻かれると本当に負の連鎖です。不思議です。心では今日もこの大きな音にまけないぞと思っていても、脳は少しのストレスをキャッチしてすごく増強させます。心療内科の先生はよくお話を聞いてくださり信頼して通ってます。耳鳴りって音楽みたいになったりするんですよ!飛行機に乗ってるみたいだったり。耳鳴りといわず脳なりという感じです。私は先生のお隣の県で日本海側。だんだん冬らしくなってきます。うつにならないように負けないで一日一日を過ごしていこうと思います。(負に巻かれるとうつになりやすいです~)耳鳴りの数値を測れればもっと治療に役立つのになあと思います。一回脳が覚えると大変なんだとつくづく思います。先生も季節柄患者さんが多く大変ですね。お体お大事に。ありがとうございました。
朝起きてすぐ脳が目覚めると轟音で一日が始まります。
このメカニズムもさっぱりわかりません。
音がストレスになってるのが自分でもよくわかり、一日のはじめからそうなのでかなり脳がいやだいやだと反抗してるんだなと思います。
それに巻かれると本当に負の連鎖です。不思議です。心では今日もこの大きな音にまけないぞと思っていても、脳は少しのストレスをキャッチしてすごく増強させます。心療内科の先生はよくお話を聞いてくださり信頼して通ってます。耳鳴りって音楽みたいになったりするんですよ!飛行機に乗ってるみたいだったり。耳鳴りといわず脳なりという感じです。私は先生のお隣の県で日本海側。だんだん冬らしくなってきます。うつにならないように負けないで一日一日を過ごしていこうと思います。(負に巻かれるとうつになりやすいです~)耳鳴りの数値を測れればもっと治療に役立つのになあと思います。一回脳が覚えると大変なんだとつくづく思います。先生も季節柄患者さんが多く大変ですね。お体お大事に。ありがとうございました。
めいさん、こんにちは。
これからの季節は、もともと元気な人もちょっと活動が滞りがち
になりますよね。
ところで、耳鳴りの数値化ということですが、耳鳴検査といって
聴力検査の器械で耳鳴りの大きさや音色を客観的に評価することは可能です。
ただ最近は余り重要視されない傾向にあって、むしろTHIっていう
(ご存じかも知れませんが)問診票で耳鳴が日常の生活にどの程度
支障になっているか点数化したものを、重症度や治療効果の判定に使うことが多いようです。
耳鳴りの治療は耳と脳と体調との関係を理解することからはじまりますが、めいさんはそのあたり良く理解されていると思います。
これからの季節は、もともと元気な人もちょっと活動が滞りがち
になりますよね。
ところで、耳鳴りの数値化ということですが、耳鳴検査といって
聴力検査の器械で耳鳴りの大きさや音色を客観的に評価することは可能です。
ただ最近は余り重要視されない傾向にあって、むしろTHIっていう
(ご存じかも知れませんが)問診票で耳鳴が日常の生活にどの程度
支障になっているか点数化したものを、重症度や治療効果の判定に使うことが多いようです。
耳鳴りの治療は耳と脳と体調との関係を理解することからはじまりますが、めいさんはそのあたり良く理解されていると思います。

先日おじゃましましためいです。
大学病院での聴力は中程度難聴ながら変化無しで、耳鳴りの苦痛度はかなり苦痛でしたが、通院は1年後診療は神経科での治療となりました。
はっきり言って脳に刻まれた耳鳴りはそれはつらいものです。
なかなか神経科でもあうお薬がなく、日々辛い思いでいます。
人にも言えない大きな音が頭の中をめぐってる様は、どうにもしようがなく
薬もきかないでどうしたらよいのか?
ありのままを受け止めて前向きに日常送りましょうというのはわかってはいても、ひどい頭の中の音にやはり負の連鎖を感じます。
ある程度軽い薬で日常を普通に生活するか?抗うつ剤や強い薬でだるくなるくらい飲んで耳鳴りが軽くなっても日常生活がおぼつかなくなるのを望むか?私はやはりなんとかこの工場の中の音の中でも普通に日常を生活するほうを選んでいます。でもこの選択が正しいのかどうかもわかりません。耳と脳の関係。ここまでひどくなった脳をコントロールできたらいいのにと思うこの頃です。すみません。理解はしてても体に対応できないつらいところでコメントさせていただきました。
大学病院での聴力は中程度難聴ながら変化無しで、耳鳴りの苦痛度はかなり苦痛でしたが、通院は1年後診療は神経科での治療となりました。
はっきり言って脳に刻まれた耳鳴りはそれはつらいものです。
なかなか神経科でもあうお薬がなく、日々辛い思いでいます。
人にも言えない大きな音が頭の中をめぐってる様は、どうにもしようがなく
薬もきかないでどうしたらよいのか?
ありのままを受け止めて前向きに日常送りましょうというのはわかってはいても、ひどい頭の中の音にやはり負の連鎖を感じます。
ある程度軽い薬で日常を普通に生活するか?抗うつ剤や強い薬でだるくなるくらい飲んで耳鳴りが軽くなっても日常生活がおぼつかなくなるのを望むか?私はやはりなんとかこの工場の中の音の中でも普通に日常を生活するほうを選んでいます。でもこの選択が正しいのかどうかもわかりません。耳と脳の関係。ここまでひどくなった脳をコントロールできたらいいのにと思うこの頃です。すみません。理解はしてても体に対応できないつらいところでコメントさせていただきました。
めいさん、おはようございます。
最近の耳鳴の治療は、カウンセリングや音響療法(静かな環境を避けることで耳鳴を相対的に小さくする)など、薬物以外の治療をより重視する傾向があります。ただし、薬が全く必要ないかというとそうではなくて、やはりうつが強い場合は抗うつ剤が必要です。やはり、その辺は状態をみながら加減する様な形になるかと思います。
まあ、具体的なアドバイスは何もできませんが、愚痴を書き込むのは結構ですからいつでもどうぞ。
最近の耳鳴の治療は、カウンセリングや音響療法(静かな環境を避けることで耳鳴を相対的に小さくする)など、薬物以外の治療をより重視する傾向があります。ただし、薬が全く必要ないかというとそうではなくて、やはりうつが強い場合は抗うつ剤が必要です。やはり、その辺は状態をみながら加減する様な形になるかと思います。
まあ、具体的なアドバイスは何もできませんが、愚痴を書き込むのは結構ですからいつでもどうぞ。
by jibikai
| 2008-07-03 18:22
| 耳のはなし
|
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