頸の腫れ〜部位別に考えられる疾患〜
2008年 09月 22日
頸というとさほど広くはない領域ですが、内部には色々な臓器がありますので、一言で頸の腫れ、あるいはしこりといっても、実に色々な疾患が想定されます。そこで今回は、腫れた部位別に、どんな疾患が考えられるかということを書いてみます。

頸の絵を描いてみました。あまり上手くはないのでわかりにくいかも知れませんが、やや顎を上げた感じで、正面から見た図です。
まず、Aの領域ですが、ここは耳たぶの付け根の周囲で耳下部(じかぶ)と呼ばれます。ここには、耳下腺といって唾液を作る腺組織やリンパ節などがあります。耳下腺が腫れる病気としては、耳下腺の炎症(おたふく風邪、細菌性耳下腺炎)や耳下腺の腫瘍などがあります。腫れているのがリンパ節であれば、リンパ節炎が一番多いのですが、癌の転移やリンパ節そのものの腫瘍(悪性リンパ腫)も少ないながらあり得ますので、要注意です。その他、粉瘤(アテローマともいう)といって皮下組織に袋ができて、内部に垢の成分が溜まって腫れることもあります。
Bの領域は顎下部(がくかぶ)といい、下顎の骨の直ぐ下です。ここには顎下腺という唾液腺がありますから、おたふく風邪でも腫れますし、唾石症といって唾液腺の導管に結石ができる病気で腫れことも多いです。顎下腺以外にはやはりリンパ節も多いですから、この部位もリンパ節炎やリンパ節の腫瘍でも腫れます。
Cの領域、オトガイ下というのは顎の先端の真下ということになりますが、ここが腫れるのは比較的少なくて、正中頸嚢胞というものと、リンパ節の腫れが考えられます。
Dは側頸部といい、特に頸を支える太い筋肉である胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)の前後にはリンパ節が沢山あります。ですから、この場所が腫れるのはリンパ節炎や、時に癌転移、悪性リンパ腫などをまずは考えます。その他、頸動脈が胸鎖乳突筋の裏側を走っていますから、稀には頸動脈から腫瘍ができてくることもあります。
Eは前頸部といいますが、ここにある主要な臓器は甲状腺です。甲状腺はしばしば炎症を起こしたり、腫瘍で腫れたりします。ごくごく稀には副甲状腺の腫瘍のこともあります。
このように、一言で頸が腫れたといっても、部位によって想定される疾患は随分と異なってきます。それは頸という部位は、ボリュームの割に構成しているパーツの数が多いからなのです。また、頸全体としてはリンパ節の腫れが最も多く、しかも炎症性のもの(例えば扁桃炎や咽喉頭炎、虫歯などに反応したもの)が、腫瘍性のものよりも多く見られます。しかし、ごく稀にリンパ節の腫れから、口腔や咽頭、喉頭などの癌が見つかることもありますので、頸が腫れたら、早めに耳鼻科を受診することをお勧めします。
近いうちに訪問させていただきます。